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フーガの迷宮。 [2010]

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それぞれに、あちこちのピリオド・アンサンブルで活躍する腕利き揃いが結集したピリオド弦楽四重奏団、リンコントロ。Alphaから、モーツァルトによるバッハの編曲を含む、実に凝ったリヒターの弦楽四重奏曲集(Alpha/Alpha 089)でデビュー。そのすばらしい演奏に、次も楽しみにしていたのだけれど、アマンディーヌ・ベイエ(ヴァイオリン)が抜けてしまい... が、ダヴィド・プランティエ(ヴァイオリン)が加わり、今度はZig-Zag Territoiresから、さらにさらに凝ったアルバムをリリース。フーガをテーマに、18世紀、オーストリアの興味深い作曲家たちの弦楽四重奏作品を集めた"QUARTETTI FUGATI"(Zig-Zag Territoires/ZZT 091003)。やはり、モーツァルトによるバッハの編曲も含む、興味深い1枚を聴く。

とにかく凝っている!リンコントロの"QUARTETTI FUGATI"。フーガのラビリンスに誘われるような、そんな構成でして... また、その入り組んだあたりが魅力的... ま、その入り組んだあたりをどれほど理解できているかはさておき、ハイドンばかりでなく、モーツァルトばかりでない、18世紀の音楽が好き!という「マニアック」であることを否定できない自分にとっては、玉手箱のようなアルバムかもしれない。また、古典派の時代、ハイドンにより発展した「弦楽四重奏」というスタイルで、古典派の時代にはすでにオールド・ファッションとなっていただろう「フーガ」を取り上げるというあたりが、18世紀、その当時ですら、実はマニアックな内容なのかもしれない。
で、その内容なのだが... 18世紀後半の流麗な音楽を響かせるハイドンの35番の弦楽四重奏曲(track.1-4)に始まり、ハイドンに比べれば、多少、古風な... いや、よりフーガの表情が際立つ、アルブレヒツベルガーのアダージョとフーガ(track.5, 6)。さらにスタイルを遡って、ヴェルナーのフーガ(track.7)。そして、モーツァルトの編曲によるバッハのフーガ(track.8, 9)に至る。のだが、この、徐々にバッハへと還ってゆく感覚と、バッハによるバロックのフーガの質実剛健な様、その渋さがたまらない。まるで、音楽の深奥へと下りてゆくよう。
で、このアルバムのおもしろいところ... バッハを折り返し地点に、再び、ヴェルナー、アルブレヒツベルガー、ハイドンと、古典派の流麗な世界へと戻ってゆくところ。渋いバッハが幻だったかのように、ハイドンの32番の弦楽四重奏曲(track.13-16)が、軽やかに明朗に響き、アルバムを締め括る。
それは、18世紀音楽の蜃気楼か、ロールシャッハか... シンメトリックに展開される構成に、何を見出すのだろう?ある意味、その謎めくシンメトリーこそ、フーガのようでもあり。当時のオーストリアの支配者、神聖ローマ皇帝、ヨーゼフ2世が、フーガを好んだ... という背景が、このアルバムにはあるようなのだけれど、ハイドンやモーツァルトの弦楽四重奏曲を単に並べただけのアルバムでは味わえない、ミステリアスさが、何とも魅力的。さらに、モーツァルト(1756-91)と親交があり、その死の場面で名前を目にする、ヨハン・ゲオルク・アルブレヒツベルガー(1736-1806)。エステルハージ侯爵家の楽長、ハイドン(1732-1809)の前任者だったことで、その名前を目にする、グレゴール・ヨーゼフ・ヴェルナー(1693-1766)。この2人のオーストリアの作曲家の作品を実際に聴くことができたのも、興味深く... 聴きどころは盛りだくさん。もちろん、リンコントロの演奏もすばらしく。その実直なサウンドが、それぞれの「フーガ」をしっかりと捉えて、バロックから古典派へとうつろう18世紀の諸相を、ナチュラルに描く。また、あまりにナチュラルだからこそ、「バロック」、「古典派」という枠組みや境界がぼやけるところもあり、アルバムのミステリアスさをより印象的なものにしている。

QUARTETTI FUGATI QUATUOR RINCONTRO

ハイドン : 弦楽四重奏曲 第35番 ヘ短調 Op.20-5
アルブレヒツベルガー : アダージョ と フーガ Op.24-4
グレゴール・ヨゼフ・ヴェルナー : フーガ ト短調
モーツァルト : フーガ K.405 〔バッハ : 『平均律クラヴィーア曲集』 第2巻 より BWV 871, 876〕
グレゴール・ヨゼフ・ヴェルナー : フーガ ニ短調
アルブレヒツベルガー : アダージョ と フーガ Op.21-4
ハイドン : 弦楽四重奏曲 第32番 ハ長調 Op.20-2

リンコントロ
パブロ・バレッティ(ヴァイオリン)
ダヴィド・プランティエ(ヴァイオリン)
パトリシア・ガニョン(ヴィオラ)
ペトル・スカルカ(チェロ)

Zig-Zag Territoires/ZZT 091003




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