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アイ・ガット・リ... アル... ガーシュウィン。 [2010]

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先日、『坂本龍一 スコラ 音楽の学校』の集中再放送をNHKのBSハイヴィジョンでやっていて、ぼんやりと見る。バッハ、ジャズ、ドラムス&ベースと、幅広く音楽を網羅してくるあたりが21世紀的、音楽の学校。そういうフレキシブルな環境の下で音楽に触れることのできる今のこどもたちは、幸せだなぁ~ なんて、少し、羨ましく思う。が、実際の学校教育における「音楽」って、どーなのだろ?やっぱり、未だにゆる~く、アカデミックなのだろうか?
それはさておき、『坂本龍一 スコラ 音楽の学校』、おもしろかったのは「ジャズ編」だったかな。講師陣がそのままセッションしてるような感覚で話しを進めつつ、実際、セッションして... その自由な空気感がそのまま楽しい。一方で、音楽の学校として、さらりとジャズ史を振り返るのだけれど、これが、勉強になってしまう。我々が認識する「ジャズ」とは、意外と新しいイメージであるということ... ぼんやりと知りながらも、「ジャズ」が、明確なイメージを確立する前の姿を、映像など見せられると、リアルにジャズ史を把握できた気分。

ということで、そんな、明確なイメージを確立する前の姿を聴く。ハーモニー・アンサンブル・ニューヨークによる、リアルなガーシュウィンのアルバム"GERSHWIN BY GROFÉ"(harmonia mundi/HMU 907492)。ラプソディー・イン・ブルーはもちろん、その当時の録音も含む!興味深い1枚。

ジャズとクラシックの橋渡しをしたのが、ガーシュウィンのラプソディー・イン・ブルー。という認識が、漠然とあるわけだけれど、その作曲過程を振り返ると、必ずしもそういう意図は薄かったような... それよりも、随分と急ごしらえの作品で。オーケストレーションは作曲者ではなく、グローフェによるもので。それも、「オーケストレーション」とはいえ、ジャズ・バンドのためのアレンジで。ジャズが今のように明確に確立される黎明期の、スウィング・ジャズの楽団、ポール・ホワイトマン楽団によって、1924年に初演されたわけだ(現在、オーケストラで聴く、オーケストラ版のラプソディー・イン・ブルーというのは、グローフェが後にオーケストレーションし直した版になる... )。
今とは違うジャズが時代を席巻していた、ジャズ・エイジ、1920年代... その後のジャズのイメージ越しにラプソディー・イン・ブルーを捉えてしまうと、作品のリアルな姿は見えてこない?というあたりを踏まえて、ジャズ・エイジ、スウィング・ジャズという地点に返って、ガーシュウィンを響かせる"GERSHWIN BY GROFÉ"。ポール・ホワイトマン楽団の座付きアレンジャー、グローフェによるガーシュウィンを、明確に打ち出しているところが、おもしろい。ピリオドに強いharmonia mundiだけに、これは、ある種のピリオドか?オーケストラによる聴き慣れた、洗練されたガーシュウィンではなく、ジャジーな洒落た気分とも違う、ダンス・ホールのサウンド?今の「ジャズ」のイメージからすると、多少ブッキラボウな印象を受けるが、ブッキラボウながらノリはよく、程好くチープなあたりが、ジャズ・エイジの喧騒を、21世紀に蘇らせるよう。何より、ポジティヴ!
ハーモニー・アンサンブル・ニューヨークの、華やかなブラスと力強く刻まれるドラムスが、輝かしき近代、憂いのないハッピー感を醸して... 近代のなれの果て、今の時代にはカンフル剤?また、古き良き時代、ビッグバンドの黄金期を知る世代となるのか、リンカーン・マヨーガのピアノ、アル・ガロドロのサックス、クラリネットが絶妙。クラシック畑ではない大御所たちだからこその豊潤なトーンが、アカデミックなコンサートホールにはない"粋"を捉えて、リアルなガーシュウィンの姿を浮かび上がらせるよう。それは、壊れていたラジオから、突然、古き良き時代のサウンドが瑞々しく蘇るような、不思議な感覚も。ヤンキー・ドゥードゥル・ブルースの、その当時の録音(track.3)もあったり、ラプソディー・イン・ブルー(track.11)の冒頭にも仕掛けがあって、ジャズ黎明期のキラキラとした賑わいの中へ、タイムスリップするような、そんな心地にさせてくれる。

GERSHWIN BY GROFÉ HARMONIE ENSEMBLE / NEW YORK

ガーシュウィン : アイ・ガット・リズム変奏曲 〔ガーシュウィンによるオリジナル・スコア〕 *
ガーシュウィン : ヤンキー・ドゥードゥル・ブルース
ガーシュウィン : ヤンキー・ドゥードゥル・ブルース 〔1909年製、エジソン・フィアサイドによる録音復刻〕
ガーシュウィン : すてきな気持ち
ガーシュウィン : 誰かが私を愛している
ガーシュウィン : スウィート・アンド・ロウ・ダウン
ガーシュウィン : 天国への階段
ガーシュウィン : The Man I Love
ガーシュウィン : 魅惑のリズム *
ガーシュウィン : サマータイム **
ガーシュウィン : ラプソディ・イン・ブルー 〔グローフェによるオリジナル・ジャズバンド版〕 **

リンカーン・マヨーガ(ピアノ) *
アル・ガロドロ(アルト・サックス/クラリネット/バス・クラリネット) *
スティーヴン・リッチマン/ハーモニー・アンサンブル・ニューヨーク

harmonia mundi/HMU 907492




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