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13日の金曜日で、音楽... [selection]

うろ覚えなのだけれど... 西村朗氏が、NHK-FM、『現代の音楽』のパーソナリティを務めていた頃、ハープの篠崎史子氏がゲストとしてやって来た回。佐藤聰明氏(だったと思うのだけれど... )によるハープのためのナントカという曲を演奏すると、必ず怪異が起こる。みたいな話しを、ちらりとしていて。怖いもの見たさ... というか、怖いもの聴きたさ?で、ちょっと、そんな作品、体験してみたいなと思ったので、覚えているのだけれど。それにしても、幽霊を引き寄せる音楽(?)というのも、あるもんなんですねぇ(稲川順二師風に... )。
ということで、シーズン・オフだし、夏休みだし。クラシックをいつもと違う視点から見つめてみれば、どんな感じになるだろうか?と、「怪奇」視点でクラシックを見つめてみる。
てか、また無謀な...

例えば、『ドン・ジョヴァンニ』の石の騎士長や、『さまよえるオランダ人』の幽霊船... 『魔弾の射手』には、おどろおどろしい悪魔、『マクベス』には、おどろおどろしい魔女たち... ファウスト博士とメフィストのコンビは、定番で... オペラにとって「怪奇」は、最高のスパイス。けれど、スパイスでは物足りないなぁ... なんて、ぼんやりと思う。そもそもクラシックというものは、神様を讃えるところ(グレゴリオ聖歌などなど... )から始まっているわけで、その対極にある世界に目を向けるなど、まさに異端。しかし、そこに目を向ける音楽は、少なからずあった。
産業革命以後、「近代」が神という存在を薄くし。また、「近代」の反動として、古い神々やら、怪しげなる世界が息を吹き返し始める19世紀。芸術のあらゆるジャンルにおいて、それまでのヨーロッパ文化の枠組みから踏み出すムーヴメントが登場し、19世紀末から20世紀初頭にかけて、神秘主義やオカルティズムは、ただならず芸術を揺さぶり、刺激したわけだ。
サブ・カルチャー的なものが、ハイ・カルチャーに影響を与える。という構図、21世紀においては、トリッキーに感じるのだけれど、そういう柔軟性が、「世紀末」なんていう言葉を伴う、独特のモードを生み出し、かつ、芸術を大きく前進させた事実があるわけだ。そういうあたりから、21世紀を見つめれば、どうなのだろう?この、ぼんやりとした閉塞感、前進しているかどうかもわからない、先行き不透明感を振り返れば、柔軟性を失ってしまった我々の時代こそ、トリッキーなのかもしれない。ということで、柔軟性を取り戻すための「怪奇」?音のタイル張り舗道。的、13日の金曜日の怪奇セレクション... どうでしょう?

神秘主義、オカルティズムといえば、まずスクリャービンの名前が思い浮かぶわけだけれど、そういう世界に耽溺していった作曲家は、まだまだいる。ホルストの『惑星』や、ヴァレーズのアルカナなども、実は神秘主義や、オカルティズムと切り離せない作品だったり... が、真打となると、ジョージ・クラム(b.1929)の『ブラック・エンジェルス』を忘れるわけにはいかない。
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"13"のパートからなり、挙句、演奏しながら、様々な言語で"13"を数える(ちなみに日本語でも数えてる!)という、「不吉」の集合体のような作品... グレゴリオ聖歌の「怒りの日」も引用されて、おどろおどろしさは、抜群。そんな作品、クロノス・クァルテットのアルバムで有名になったわけだが、ここでは、ラテン・アメリカ四重奏団によるアルバム(mode/mode 170)をセレクション。あらゆる要素が取り込まれて、一筋縄ではいかない作品を、ある意味、しなやかに捉えて... 灰汁の強さや、トリッキーさよりも、そこはかとなく漂わせる恐怖が見せる美しさがクール... それは、スタイリッシュなホラー映画を1本みたような感覚か... 『ブラック・エンジェルス』の前に収録されたミクロコスモスIIIから、ホラー・テイスト?いい味、醸します。
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さて、グレゴリオ聖歌の「怒りの日」といえば、おどろおどろしさを醸す絶好のモチーフとして扱われるわけだが... その最たる例が、ベルリオーズの幻想交響曲。淡い恋心がワルツに乗って膨らんでゆく前半から一転、恋人を失うかもしれないという絶望の先に、夢現(ユメウツツ)の怪奇なヴィジョンが立ち現われて... ディエス・イレが鳴り響く中、魔女たちがおどろおどろしい饗宴を繰り広げる。で、この名曲、そのおどろおどろしさで印象に残る演奏が、インマゼール+アニマ・エテルナによるアルバム(Zig-Zag Territoires/ZZT 100101)。ピリオド楽器のそれぞれに個性的な音が軋み、最後の鐘の音は、薄気味悪いピアノを用いて、インパクト大。モダンのオーケストラでは醸せない雰囲気が、この交響曲のホラー性を際立たせるよう。
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ということで、実際にホラー映画... ヒッチコックの映画『サイコ』の有名なシーンで流れる効果的な音楽は、ホラー音楽の代名詞なわけだが。その音楽を作曲したバーナード・ハーマンの映画音楽を集めた、サロネン+L.A.フィルによるアルバム"THE FILM SCORES"(SONY CLASSICAL/SK 62700)は、そんな、効果的... な音楽を組曲にまとめて、改めて音楽作品として見つめ直す。で、『サイコ』の名場面、あのシャワーシーンで流れる"ヒャッヒャッヒャッヒャッ... "という弦による恐怖の響きが、音楽としてまとめられると、実に魅力的な近代作品として聴けてしまうおもしろさ!サロネンが映画音楽... というあたりは意外だけれど、サロネンが目を向けるだけの魅力がハーマン作品には間違いなくあるようでして。普通に、コンサートホールで取り上げられてもいいように思うのだけれど。
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ところで、地獄巡り... というモチーフは、洋の東西を問わず、あちらこちらに存在する。日本にも、多くの絵巻などが残り、さらにはそれを擬似体験するような霊場まであったりするわけだが。ここでは、時代をぐっと遡って、中世... アイルランドで書かれたという騎士トンダルの地獄巡りの物語を、女声ヴォーカル・グループ、ディアロゴスが歌ったアルバム"LA VISION DE TONDAL"(ARCANA/A 329)をセレクション。ディアロゴスの美しいハーモニーが、不思議な浮遊感を見せて、何だかあの世にでも連れて行かれそうな、そんな心地にさせられる薄気味悪さもあったり。そんなディアロゴスの声は、ある種の口寄せ(イタコ)のような雰囲気があって、そんな声に誘われての地獄巡りは、音楽「恐山」?かもしれない。夜中に独り聴いていると、それこそ怪異が起こりそう。




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