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ラフマニノフのニュー・エイジ感覚... [2010]

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さて、またラフマニノフ... とはいえ、オペラからは一転、ア・カペラによる教会音楽。って、オペラにしろ、教会音楽にしろ、「ラフマニノフ」というイメージからは大きく逸脱しているのだよね... マニアック。けれど、これもまたラフマニノフでありまして、いや、コンポーザー・ピアニストとしての側面ばかりにスポットが当てられることで、実は、多彩な作曲家であるラフマニノフの全体像は見え難いものになってしまっている。そして、見え難い部分にも、魅力的な音楽を響かせているラフマニノフ... その教会音楽は、ピアノで奏でられるロマンティックで華麗なラフマニノフのイメージとは一線を画し、驚くほど清冽!また、ロシア正教会の伝統に則り、西方の教会音楽とは異なる、東方ならではのトーンがミステリアスで、ア・カペラの清冽さから放たれる東方のトーンは、何とも、不思議。てか、クラシックの枠組みを越えて行くようなセンスを生み出していて、驚かされ、惹き込まれる!
ということで、合唱王国、北欧から、シグヴァルス・クャーヴァ率いる、ラトヴィア放送合唱団による、ラフマニノフの聖ヨハネ・クリュソストモスの聖体礼儀(ONDINE/ODE 1151)。それにしても、涼やか!その澄んだハーモニーに包まれる、ひと時、猛暑も忘れる...

ラフマニノフのア・カペラの作品というと、まず晩祷がすぐに思い浮かぶ。西とは違う、東の教会の、プリミティヴにすら感じられる鮮烈なハーモニー、そしてエモーショナルさに圧倒されるのだけれど、聖ヨハネス・クリュソストムスの典礼は、また一味違う。ロシア正教会ならではの独特なトーンはもちろんあるものの、そこから西へ... なのか、時代の先へ... なのか、一歩、踏み出した美しさを感じる。で、こんなにも美しかった?!と、驚かされる。ステレオタイプなラフマニノフなど、跡形もなく、美しいアンビエントなトーン... 北欧の静かな森から響き出すような澄んだハーモニーは、ある意味、とても現代的?ふと思い浮かぶのは、アルヴォ・ペルト。いや、あのペルト独特の美しいトーンは、ラフマニノフが源流だったか?なんても思えてしまうほど...
ラフマニノフにとって、"鐘"のモチーフは重要なテーマとなっているわけだが。例えば、そうしたピアノ作品などを聴いていると、時折、フィリップ・グラスを思い起こさせることがある。ような。ステレオタイプなラフマニノフからは想像できない、ミニマル・ミュージック的感覚に、幻惑させられ、またそんなラフマニノフが大好きだったりする。そして、"鐘"の感覚がア・カペラに持ち込まれると、ペルトのティンティナブリ(鈴鳴らし)様式とつながってゆくのか。聖ヨハネス・クリュソストムスの典礼を聴けば、ラフマニノフの隠された先進性に、またも魅了されてしまう。西とは違う、東の教会のトーンが、西洋音楽史とは距離を置くサウンドを生みつつ、北欧的な透明感に洗われて、「クラシック」であることすら囚われない、ニュー・エイジ的な雰囲気すら漂わせる。
で、そんなラフマニノフを際立たせるのが、クャーヴァ+ラトヴィア放送合唱団の美しいハーモニー... バルトの合唱団ならではの透明感は、ただただ美しく。またクリアでありながら、得も言えぬやわらかな表情も見せ、残響に美しく溶けてゆくその歌声は、大なり小なりあるであろう、人間の放つ生臭さのようなものがあまりに無い... この世のものとは思えない。そんなハーモニーに包まれていると、身体感覚すら失い、無の境地に至るような... 何とも言えない心地に。それは、安易な形容を受け付けない、至高の美しさというのか。で、なかなか他では味わえない、「美しさ」そのものに圧倒感を感じてしまう。
それにしても、ステレオタイプなラフマニノフ... ではないラフマニノフの底知れなさというのか、オペラ『アレコ』を聴いて、聖ヨハネス・クリュソストムスの典礼を聴けば、この作曲家の幅の広さに思い知らされる。

RACHMANINOV: LITURGY OF ST JOHN CHRYSOSTOM
LATVIAN RADIO CHOIR ・ SIGVARDS KLAVA


ラフマニノフ : 聖ヨハネス・クュソストムスの典礼 Op.31

シグヴァルス・クャーヴァ/ラトヴィア放送合唱団
カールリス・ルーテンタールス(テノール)
グンドラルス・ジュリュムス(バス)

ONDINE/ODE 1151




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