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近代音楽、夏休み風に。 [2010]

暑い... 暑くて体調崩しそう... いや、半分、崩れているか... 一方で、夏らしい夏というのも、魅力的。からりと晴れ上がった空の青さに、グングンと成長する入道雲のダイナミックさ。空だけ見つめて、若干、リゾート気分。なんて、かなり安上がりなヤツ... でもって、この夏、特に予定があるわけでもなく... となると、かなり寂しいヤツだったり。そんな中、聴いてみる、2つのアルバムに、思いがけなく夏休み気分を見出してみたり...
「第三世界」からクラシックに殴り込みを掛ける、ベネズエラの恐るべきこどもたち... グスターボ・ドゥダメル率いる、シモン・ボリバル・ユース・オーケストラによる、ストラヴィンスキーの『春の祭典』と、レブエルタスの「マヤの夜」を収録した興味深い1枚(Deutsche Grammophon/4778775)に、ジュン・メルクル率いる、リヨン国立管弦楽団によるドビュッシーの管弦楽作品集のシリーズ、vol.3(NAXOS/8.572296)を聴く。


21世紀、恐るべきこどもたちによる"RITE"。

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ストラヴィンスキーの『春の祭典』というと、どうも力んでしまう。難曲だけに演奏する側もそうだろうが、聴く側もその演奏にいろいろ期待してしまって、力んでしまう?ということで、時代の寵児、ドゥダメル+シモン・ボリバル・ユース管による『春の祭典』。思いっきり、力んで、聴き出してしまったのかもしれない... 「第三世界」からクラシックに殴り込みを掛けて来た恐るべきこどもたちによる『春の祭典』は、ただならないはず。が、肩透かしを喰らう。あれ?こんなもん?で、そのまま、後半、レブエルタスの「マヤの夜」(track.15-18)を聴くことに。ロシアの"RITE(儀式)"と、マヤの"RITE(儀式)"を並べるという構成の妙も、このアルバムの聴かせ所。
で、初めて聴いた「マヤの夜」。レブエルタスというと、すぐに思い浮かぶのが、近代音楽のイディオムに則って、見事、プリミティヴを炸裂させたセンセマヤなのだけれど... そのセンセマヤに比べると、ヴァラエティに富む音楽が展開される「マヤの夜」。もちろんプリミティヴではあるのだけれど、ラテン・アメリカの風景を素直に描くようなところもありつつ、リズミカルに壮大に盛り上がる第4部、魔法の夜(track.18)などは、ジャングルを冒険するような、映画音楽的センス?センセマヤの剥き出しのプリミティヴとは対照的に、エンターテイメントな仕上がり?それは、どこか、観光気分でマヤの夜を巡るようでもあり。あるいは、ディズニーランドのアドベンチャー・ランドにでも来たような感覚?また、ドゥダメル+シモン・ボリバル・ユース管の演奏が、彼らの縄張り(ラテン・アメリカ)の内にある作品だけに、手慣れたもので、さらりと形にし... あっけらかんとアドベンチャー・ランドなあたりを楽しませるものだったり。で、ふと気が付けば、『春の祭典』を聴き出したころの力みは、すっかり消えていて...
そこから振り返る、ドゥダメル+シモン・ボリバル・ユース管の『春の祭典』。20世紀の生々しい記憶が残る世代には、『春の祭典』という作品はあまりに象徴的で、その作品と向き合う時に、つい力んでしまうのかもしれない。が、21世紀のユース・オーケストラのこどもたちにとっては、完全に「古典」の扱い?ある意味、それは、達観した演奏なのかもしれない。でもって、シンプルにスコアと向き合い、「若い」というままに奏でてみれば、『春の祭典』もエンターテイメントに... という、21世紀的、現代っ子感覚に、少し慄いてみる。

STRAVINSKY | REVUELTAS
SIMÓN BOLÍVAR YOUTH ORCHESTRA | GUSTAVO DUDAMEL


ストラヴィンスキー : バレエ 『春の祭典』
レブエルタス : マヤの夜

グスターボ・ドゥダメル/シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ

Deutsche Grammophon/4778775




フレンチ・ポップ?としてのドビュッシー。

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ドビュッシーに始まり、ラヴェルメシアンと、すっかりNAXOSのフランス近代音楽部門担当といった感じのメルクル+リヨン国立管... なものだから、ドビュッシーの管弦楽作品集のシリーズも、すでに、かなり進んでいるように思っていたのだけれど、振り返ってみれば、今回が2度目のリリース(vol.1と2は、同時にリリース... )。で、vol.3。オーケストラによる作品が少ないドビュッシーだけに、その主要作品はvol.1(NAXOS/8.570759)、vol.2(NAXOS/8.570993)で、ほぼ網羅されているのだけれど、このシリーズの魅力は、ドビュッシーに留まらず、様々な作曲家によるドビュッシー作品のオーケストラ・アレンジが収録されているあたり。
ドビュッシー作品のアレンジには欠かせない(てか、専属アレンジャー?)、アンドレ・カプレ(1878-1925)から、ミシェル・ジャレル(b.1958)など、バリバリの現代の作曲家まで... ドビュッシーと、その特異な個性からの広がりを網羅しているあたりが、これまでになく斬新。ということで、vol.3では、ピアノの小品からのドビュッシーによるセルフ・アレンジと、ラヴェルによるアレンジを、2曲ずつ収録。で、オリジナルのオーケストラ作品にはない、洒落た気分が、なんとも魅惑的。
ダンディーで遊び心のあるドビュッシーのピアノ作品の魅力を、オーケストラのために膨らませてみると?程好くチープで、ポップなテイストに... まさにフレンチ・ポップ?レントよりも遅く(track.9)なんて、かなりメロドラマちっく。で、これってクラシック?なんて思ってしまうほどのライト感というか、微妙さが、たまらない。また、「ドビュッシー」という安易な雰囲気に流されない、明朗なサウンドを繰り出すメルクメ+リヨン国立管の演奏もあって、フレンチ・ポップとしてのドビュッシーは、ますます活きてくるよう。そうした感覚は、このアルバムのメインとなる、オリジナルのオーケストラ作品、管弦楽のための映像(track.1-5)にもあって。第2曲、イベリア(track.2-4)の、パリっと乾いた空気の中に広がるスペイン情緒は、下手に詩情に訴えるのではないドライなあたりが魅力的。で、やっぱりポップ。屈託の無い楽しさがこぼれて、vol.1、2とはまた違うテイストを響かせるメルクル+リヨン国立管。次は、どんなドビュッシーを聴かせてくれるのか、今から楽しみ。なのだけれど、メルクル離任問題で、このシリーズはどうなってしまうのか、かなり心配...

DEBUSSY: Orchestral Works ・ 3

ドビュッシー : 管弦楽のための映像
ドビュッシー : ピアノのために 第2番 「サラバンド」 〔オーケストレーション : ラヴェル〕
ドビュッシー : ダンス (スティリー風タランテラ) 〔オーケストレーション : ラヴェル〕
ドビュッシー : スコットランド行進曲 〔オーケストラ版〕
ドビュッシー : レントよりも遅く 〔オーケストラ版〕

ジュン・メルクル/リヨン国立管弦楽団

NAXOS/8.572296




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