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timeless... [2010]

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ピリオドの人々は、フットワークが軽いというか、大胆だよなぁ。
と、思うことが時々あるのだけれど... ドイツのピリオド・アンサンブル、ラウテン・カンパニーが、ドイツのダンス・カンパニー、Heike Hennig & Coとコラヴォレーションした"TIMELESS"もまた、かなり大胆。その音楽、なんと、フィリップ・グラス(b.1937)と、タルクィニオ・メールラ(1595-1665)の作品で構成しているというから驚かされる... まさに"timeless(時間を超越した... )"な取り合わせ。で、何より、メールラというチョイスがマニアック?いや、絶妙!というより、メールラをこういう形で取り上げてくれることに、うれしくなってしまう。
そんな、現代と初期バロックの意外な出会い、ラウテン・カンパニーのアルバム、"TIMELESS"(deutsche harmonia mundi/88697526982)を聴く。

初期バロックも、ポスト・モンテヴェルディ世代となると、今一よく見えてこない部分がある。というより目立たないのか... 地味?なんて思ってしまうこともある。しかし、そうした中にあって、タルクィニオ・メールラは、おもしろい!何となく、そんなイメージがずっとあった。初期バロック、革命であった「モノディ」のストイックさも弱まって、よりメローに... それでいて、バッハらが活躍する爛熟期のバロックにはない、より自由で軽やかな気分が何ともポップ。メールラの作品には、21世紀にも通じるセンスを感じる。
で、ミニマル・ミュージックのポップさと、メールラのポップさ... まったく遠いところにあるようで、組み合わせてしまったハイケ・ヘニング、ラウテン・カンパニーのセンスに、してやられた感あり。メールラの音楽は、オスティナートに、ミニマル的な性格を見出すこともできるわけで... ならば、グラスとの相性はいいはず。で、まさに... そんな1枚に仕上がっている。
アルバムはグラスの"The Windcatcher Part I"で始まる。その透明感のある瑞々しいサウンドから、そのままメールラのカンツォン"La Lusignola"(track.2)へ。そのあまりの違和感の無さに、戸惑うほど... どこまでがグラスで、どこからがメールラなのか?ナイチンゲールの声を捉えたリズミカルな作品は、初期バロックどころか、ルネサンスの舞曲のようなアルカイックさすら漂うところもあるのだけれど、無理なくグラスと並んでしまうからおもしろい。さらにおもしろいのが、その後に演奏されるグラスの"Melody for Saxophone No. 10"(track.3)。現代というより、中世のような素朴さ... サックスもまるでコルネット(角笛)のような表情を見せ、グラスの中にも、アルカイックさが漂う。が、グラスの"Melody for Saxophone No. 12"(track.6)は、キャッチーで、ハードなサウンドに、ぐんと現代へと引き戻されて。さらに、アルバムの後半、メールラお馴染みのオスティナートが繰り広げられるカンツォネッタ(track.17)や、チャコーナのアリア(track.18)では、メールラのミニマル性が際立って、時代感覚は薄れてゆき、まさに"timeless"。そればかりか、ジャンルの壁すら揺らいでしまうようで、クラシック?でもなく、現代音楽?でもない、他の何か... 何だろう?
相性はいいはず... でも、まったく遠いところにある2人。その異なる性格を綱引きさせて、そうしている内に、現代と初期バロックは共振を始め、やがて本当に時間を超越してしまうような不思議な感覚が広がる。ダンスのために用意された音楽ではあったけれど、音楽だけでも十分に魅力的で、他にはない世界を見せてくれる。

TIMELESS LAUTTEN COMPAGNEY TARQUINIO MERULA ・ PHILIP GLASS

グラス : The Windcatcher Part I
メールラ : カンツォン "La Lusignola"
グラス : Melody for Saxophone No. 10
メールラ : Alemana
メールラ : Ballo detto Polliccio
グラス : Melody for Saxophone No. 12
グラス : Facades 『グラスワークス』 より
メールラ : マドリガル "La mia Filli e fugace"
グラス : Melody for Saxophone No. 5
メールラ : マドリガル "Che nove arti son queste"
メールラ : カンツォン "La Loda"
グラス : Opening 『グラスワークス』 より
グラス : Video Dream 『ポワカッツィ』 より
メールラ : Sonata cromatica 〔アレンジ : ウルリケ・ベッカー〕
メールラ : Capriccio
メールラ : アリア "Folle è ben"
メールラ : カンツォネッタ "Sentirete"
メールラ : チャコーナのアリア "Su la cetra amorosa"
グラス : The Windcatcher Part III

ヴォルフガング・カチュナー/ラウテン・カンパニー

deutsche harmonia mundi/88697526982




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