SSブログ

1838... 1839... 無邪気な情景。 [2010]

FUG562.jpg
1010.gif
2010年、シューマンの生誕200年のメモリアル... ふと、振り返ると、シューマンって苦手かも?なんて感じる時がある。どうも躁鬱の気がその音楽にも出ているようで、ちょっと中てられてしまうシューマン・サウンド。もちろん、そんな安易なイメージで括れない作曲家でもあるのだけれど... 自身の中では、他のドイツ・ロマン主義の作曲家に比べると、どこか掴み切れないでいる微妙な存在だったり。好き、だけれど、好きとは言い切れないかも。嫌いじゃないけれど、嫌いな部分は間違いなくあるよなぁ。
そんなスタンスから聴く、ちょっと気になるシューマン...
ピリオド界切っての名門、クイケン一族から、新たに注目したい鍵盤楽器奏者、ピート・クイケンのソロ・デビュー盤(で、いいのだよね?)。1850年製、ヨハン・バプティスト・シュトライヒャーのピアノで奏でる2枚組、"Robert Schumann ― 1838 - 1839"(FUGA LIBELA/FUG 562)を聴く。

ピート・クイケンのピアノを初めて聴いたのは、クイケン一族によるピリオド・アプローチ(!)でのドビュッシーのアルバム(ARCANA/A 303)。ピリオドの世界を切り拓いて来た父(ヴィーラント)や、叔父たちの、渋くも美麗な演奏を、瑞々しいタッチで好サポート... 父親世代に引けを取らない存在感に、ピアノ・ソロで聴いてみたいなぁ。と、思い続けてのシューマンは、期待を裏切らない。
ピリオドのピアノでのシューマンというのは、意外と少ないように思う。やはり、19世紀も半ばのピアノとなれば、モダンのピアノと大きな差はないような印象を受ける。ピートの演奏の第一印象も、やはりそんな感じなのだが... 改めてモダンのピアノによるシューマンの演奏を聴いて、ピートの演奏に戻れば、ピリオドならではのサウンドに、はっとさせられる。どこか過剰にも感じられたシューマンの響き(そのあたりに、中てられた?)が、良い意味でスケール・ダウンしていて、何気ない落ち着きを漂わせる。1曲、1曲を丁寧に、力むことなく、19世紀仕様の楽器に身を任せ、無理をせずに紡がれるピートのシューマン。そのサウンドは、どこか密やかで、アンティークの小箱を開き、覗き込むような感覚?しかし、開いて見えてくる色彩は鮮やかで、シューマンならではの魅力も十分に響かせて。引いて見つめた時と、近付いて目の前にした時の感覚にズレがあるような、ピートによる不思議なバランスが、これまでのシューマンのイメージと、そうではない新鮮なシューマンのイメージを重ねて、より多層的なシューマンが響き出す?いや、3Dのように飛び出してくる?心地良く、親密な音楽を楽しませてくれながらも、知らず知らずに、一筋縄ではいかないシューマン像を見せてくるよう。
そして、このアルバムの興味深いところ... 1枚目のディスクが1838年の作品をまとめたもので、2枚目のディスクが1839年の作品をまとめているあたり。シューマンにとってのこの2年は、クララとの結婚に向けて苦しい時期(クララの父、シューマンの師、ヴィークに結婚を反対されて... やがて裁判にまで至る... )だったわけだが、改めて、この2年をシューマンの人生から取り出して聴いてみれば、どこか浮世離れした、リアリティの無い音楽(愛をたぎらせるでもなく、暗く落ち込むでもなく... )のようにも思え。その、夢の中を自由に羽ばたくような無邪気な音楽を楽しみながらも、ヴィークが結婚に反対したのもわかるような... そして、クララの後々の苦労が読めるような... 素直に楽器に向かい、作品に向かいながら、ピートが奏でるシューマンというのは、ドキっとさせられる作曲家への視線を感じる。のかも。

Robert Schumann ― 1838 – 1839
Piet Kuijken, pianoforte


シューマン : ノヴェレッテン Op.21
シューマン : こどもの情景 Op.15

シューマン : フモレスケ Op.20
シューマン : アラベスケ Op.18
シューマン : 花の曲 Op.19
シューマン : ロマンツェン Op.28
シューマン : ナハトシュトゥッケ Op.23

ピート・クイケン(ピアノ : 1850年製、ヨハン・バプティスト・シュトライヒャー)

FUGA LIBERA/FUG 562




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。