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万博記念、 [miscellany]

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何かと話題を振りまいてくれる上海万博... 行ってみたいような、行ってみたくないような...
そんなあたりが、いかにも中国らしい。おもしろそうな分、若干ダーティーで、スラップスティック。ならば、恐いもの見たさか?腕白万博。いや、万博の歴史を振り返れば、いつだってそんなものかもしれない。
ところで、「万博」とクラシックというのは、意外と関係が深い。何しろ、その昔、音楽部門があったり、作曲コンクールをやったり... 万博の時代、「19世紀」は、クラシックの黄金期、「19世紀」でもあって。クラシックのお馴染みの作曲家たちが、その時々の万博に関わっていたりする。そうしたあたり、フランス音楽史の専門家、井上さつき先生の著書がおもしろく... 『パリ万博音楽案内』(音楽之友社)、『音楽を展示する』(法政大学出版局)など、「万博」とクラシックの悲喜交々を伝えて、興味深い。そして、「万博」とクラシック、もちろん19世紀ばかりではない。1970年、大阪万博を忘れるわけにはいかない。

鋼鉄館、スペース・シアター!
このパビリオンのために作曲された、武満徹のクロッシング、高橋悠治のエゲン、クセナキスのヒビキ、ハナ、マ。光のショーとともに、当時、先鋭的な音楽が、設置された無数のスピーカーから流されていたらしい。で、タワーレコードによる復刻、スペース・シアター PROGRAM OF STEEL PAVILION AT EXPO'70(RCA - タワーレコード/TWCL-1026)を聴いて、そんな話しを知った口... 何しろ、生まれていなかったから... いや、体験してみたかった!現代音楽を光のショーで体験。今だって、そうあることじゃない。
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「前衛」という言葉が、生々しくギラギラと輝いていた頃。スペース・シアターで流れていたサウンドというのは、まさにその「前衛」であって、尖がっている。そして、そんなサウンドに、万博に詰めかけた一般大衆が接触していたという事実に驚かされる(今、そうした場所が、あるだろうか?そういう場所を実現し得るだろうか?)。かつ、その「前衛」に包まれながら、光の乱舞を体験するわけで... まさにサイケデリックな時代。
万博の頃の日本ってのは、つくづくチャレンジングだったなと... 冒険を恐れなかったことに、驚かされる。例えば、N響定期でNHKホールまで歩く時に、必ず目に入ってくる代々木第一体育館(丹下健三)。大阪万博より遡って、東京オリンピック(1964)のために作られた建物だが... すでに半世紀近くが経つというのに、未だ刺激的なフォルムを見せ、モダンだけれど、何やらプリミティヴ... その、ただならない存在感... かつての、日本の創造力って、どんだけ凄いのよ?!と、いつも、リスペクトせずにいられない。
オリンピックから万博へ、日本がパワフルだった時代、成功しようが、失敗しようが、挑戦を受け入れる度量があったのかなと、羨ましく思う(もちろん、功罪もあったろうが... )。何もそれは、文化、芸術に限らず、あらゆる面で言えたことなのかもしれない(生まれていなかった分、余計に感じてしまうのかもしれないけれど... )。ならば、今の世の中って、日本って、何なのだろう?
近代社会、因習から解放されて、自由になったはず。の一方で、現代社会、実は、より高度にコントロールされるようになったのかもしれない。ふと、我々の周囲を見渡すと、妖しげなモラルが跋扈し、知らず知らずに存在する規制ばかりが目に入り、おかげでより画一的となり、クリエイティヴィティが求められつつも、新たな創造の余地など無くなりつつあるように感じる。そうした中での創作とは、どんなものなのか?下手すると、ソヴィエトの全体主義の中を生き、社会主義リアリズムという検閲下、苦悶しながら作曲を続けたショスタコーヴィチよりも、現代の作曲家の置かれた環境は、悪化しているのではないだろうか?
武満が逝き(1996)、クセナキスが逝き(2001)、高橋悠治は隠者の雰囲気を漂わせる21世紀。一概に言い切ることはできないが、現代音楽は、元気を失った気がする。そして、「前衛」という言葉が、生々しくギラギラと輝いていた頃のように、ラディカルでいられない社会の空気感。どんなにラディカルであっても、どこか暖簾に腕押し... 様に成り得ず、ラディカルであることはイケてなく、コントロールされた社会は、人々に、イケてることを求めてくる。そんな空気感を打破し、次の時代を拓くには、何が必要なのだろうか?何とも、悩ましい。

さて、鋼鉄館が、EXPO'70パビリオンとしてリニューアルされたとのこと。
スペース・シアターの伝説を求めて、足を運んでみようかなぁ。




タグ:20世紀
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