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時間を超越する最古の女性作曲家、カッシア。 [2010]

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クラシック=西洋音楽史の流れは、どこまで遡ることができるのだろう?
当blogで取り上げた、最も古い時代のものは、古代ギリシアの音楽を再現したアルバムなのだけれど、さすがに「紀元前」は飛躍し過ぎているか... やはり、クラシックの最上流は中世?で、最も古い作曲家を探るならば、ヒルデガルト・フォン・ビンゲン(1098-1179)あたりだろうか?なんて、思っていたところに、さらに3世紀も遡る作曲家の存在を知る。9世紀、ビザンツ帝国の修道女、カッシア(ca.810-bef.865)。
ドイツの個性派(?)、古楽アンサンブル、エスタンピーの主要メンバー、ミヒャエル・ポップが新たに創設した、女声ヴォーカル・アンサンブル、VocaMeが歌う、ビザンツ聖歌、カッシアのアルバム(CHRISTOPHORUS/CHR 77308)を聴く。

中世ならではのピュアな音楽... 透明感に溢れるア・カペラの歌声... たっぷりと残響を響かせて、浮世離れしたサウンドが、心地良く広がってゆく。その、たゆたうような柔らかなサウンドがたまらない。また、その柔らかさには、ところどころ、初期ルネサンスのような感覚があって、驚かされる(ルネサンス期は、カッシアが生きた時代より500年以上後になるわけで... )。そんなカッシアによるビザンツ聖歌... ヒルデガルト・フォン・ビンゲンの歌に、多少、薄味なものを感じていたならば、絶妙な色彩感を楽しめて、より豊かな響きを味わうことができるはず。それは、中世の響きに違いはないのだけれど、東方正教会の「東方」であることが、端々でほのかに香り、中世のピュアな表情に、西方のストイックさにはない「色」を添えて、ヴィヴィットですらある。
ところで、ビザンツ聖歌というと、マリー・キーロウズ修道女が歌うアルバム(harmonia mundi/HMG 501315)のイメージが強くある。「東方」に求めるエキゾティシズムへの期待に違わないオリエンタル・テイスト... こそが、レバノン出身、シスター・キーロウズの真骨頂なわけだが、VocaMeの歌うカッシアは、ビザンツ帝国の消滅まで500年もある9世紀のビザンツ聖歌。その姿は、まだまだ煮詰まる前のビザンツ聖歌のようで、時代は古くとも、かえって新鮮な印象を受ける(もちろん、今につながる東方正教会のスタイルも表れている... )。そんな新鮮さを生み出すVocaMeの歌声は、とにかくクリア。が、時折、ほんのわずか東方の風合いを見せ、美しい瞑想に愉悦が浮かぶ。すると、中世のシンプルな響きに、ニューエイジ的な感性を見出すようで、時間はもちろん、ジャンルすら超越した感覚が漂い始める。
そこに、絶妙のスパイスとなるのが、各種古楽器(詳細が表記されてなくて、戸惑うのだけれど... )。基本的にア・カペラで歌われる中、初めて伴奏として楽器が登場する4曲目、"O Phariseos"(track.4)での、サントゥール(オリエント版、ツィター?)。だと思うのだけれど... ちょっと、これまでに体験したことのないような響きが印象深く。それまでの美しいア・カペラとのコントラストもあって、女声で綴られる中世の柔らかな音楽世界を、ぐっと引き締める。で、驚かされるのが、8曲目、"Igapisas theophore"(track.8)の伴奏で奏でられる楽器。まるでベース・ギターのようで、本当に古楽器?なんても思ってしまう斬新さ。何なのだろう?この楽器。ビザンツの復元楽器なのだろうけど、エキゾティックでありながら、メローなロックのトーンまでが滲んでしまいそうな不思議サウンド。美しい女声と見事に響き合い、カッシアの超越した雰囲気を際立たせている。
さて、多くの年代記が伝えるところによると、音楽のみならず、カッシア自身も美しく、皇后を選ぶコンテスト(930)に出るほどだったとか... しかし、修道生活に入ってからは、ビザンツ帝国の聖像破壊運動(聖像のみならず修道会も弾圧の対象だったよう... )の影響で、厳しい状況下、信仰に生きたとのこと。美しいビザンツ聖歌の作曲の背景に、山あり谷ありのドラマもあったようだ。

VocaMe ・ KASSIA Byzantine hymns

カッシア : Doxazomen sou Christe
カッシア : Ek rizis Agathis
カッシア : O synapostatis tyrannos
カッシア : O Phariseos
カッシア : O tis vasilevs DOXiS Christos
カッシア : I, Edessa
カッシア : Tin pentachordon lyran
カッシア : Igapisas theophore
カッシア : Yper ton Ellinon
カッシア : I en polls armati
カッシア : Pelagia
カッシア : Stavrou tou sou i dynamis
カッシア : Olvon lipousa patrikon
カッシア : Petron ke Pavlon
カッシア : Isaiou tou nyn prophitou
カッシア : I ton lipsanon sou thiki
カッシア : Avgoustou monarchisantos
カッシア : Christina Marty

ミヒャエル・ポップ/ヴォーカメ

CHRISTOPHORUS/CHR 77308




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