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反体制デカダン主義の誘惑。 [2010]

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Googleのホリデーロゴ、何気に、いつも目が行く。検索を掛けるはずが、ロゴに描かれたものが気になってしまったりで。また、音楽関連のものも、結構あったり... そうした中、先日、5月7日は、チャイコフスキーの170歳の誕生日。『白鳥の湖』をあしらったホリデーロゴで、今年、チャイコフスキーの生誕170年のメモリアルだということを知る(ま、170年というのは、微妙な数字のようにも思うのだけれど... )。
ところで、このblog、チャイコフスキーはどれくらい取り上げただろう?なんて、振り返ってみたところ、たった1タイトルだったことに衝撃を受ける!けして、嫌いな作曲家ではないのに... いや、それだけ、変わったものばかりを聴いているということか... と、つくづく感じる。のだけれど、懲りずに、やっぱり聴いてしまう変わったもの。今年、生誕90年のソヴィエトの作曲家、アレクサンドル・ロクシーン(1920-87)のアルバム(BIS/BIS-CD-1556)を聴く。

まず、目に飛び込んでくるは、インパクトのあるジャケット!鮮やかな赤い芥子の花に囲まれた、悪魔のような表情をみせる少女。まるで、ホラー映画のポスターのよう。だが、シュヴァーベによる『悪の華』の挿絵。で、ボードレールの『悪の華』による歌付き交響詩と聞けば、興味津々の1枚。
で、ロクシーンについてちらりと調べてみれば(例の如くwikiにて... )、ソヴィエトの作曲家ならでは... というのか、過酷な作曲家人生だったよう。体制に盾突いて、楽壇から締め出しを喰らい、結局、忘れ去られることに。ならば、ロシア・アヴァンギャルドを受け継ぐ、反体制的なサウンドが炸裂するのか?!ちょうど、グバイドゥーリナ(b.1931)、シュニトケ(1934-98)の、一世代前の作曲家になるわけで、いろいろ期待が膨らんでしまう。
しかし、流れてくる音楽は、至極真っ当。というのか、まさにチャイコフスキー、リムスキー・コルサコフ、グラズノフといった、ロシアのDNAを受け継ぐサウンド... ソヴィエトの音楽は、社会主義リアリズムという検閲下、激動の20世紀音楽史にあって取り残されることになるわけだが、それとはまた別次元で19世紀の伝統から大きく踏み出すことはないロクシーンの音楽世界。特に、卒業制作だったという歌付き交響詩『悪の華』(track.1-3)は、ツェムリンスキーのオペラのような風合いを聴かせ、ロシア・アヴァンギャルドなどからはかなり遠い(最後、交響的組曲『ジャングルにて』で、そうした部分もあるのだが... )。じゃあつまらないのかというと、けしてそうではない。ツェムリンスキー的なあたりが、かえってボードレールにはまり、何とも魅惑的!卒業制作として提出するが、審査団より「デカダン」な傾向を忌避されて受理されなかった(wiki参照)とのことだが、納得のサウンドだ。ドビュッシーやシマノフスキ、そうしたあたりのダンディズムにつながるような雰囲気すらあって、まさに「デカダン」。
2曲目、ハンガリー幻想曲(track.4)では、しっかりとハンガリーで彩られているのだけれど、そこはかとなしに滲むフォークロワなものとは違う気だるさがたまらなく、時折、タンゴ風なトーンも垂らし込んで、クール!ソヴィエトは、何かを否定する時に、「ブルジョワ的」という言葉を使ったわけだが、ロクシーンの響きには、本当の意味でブルジョワ的なものがあるのかもしれない。リッチで、そこに怪しげな匂いを漂わせて、俯いて見せて。社会主義リアリズムのプロバガンダ、バカっ調子良さも、やたら健康的なサウンドも、ショスタコーヴィチ的、分裂症的な側面もない。もし、ソヴィエトではなく、19世紀末のパリを生きたならば、ロクシーンは、大成功したのではないだろうか?そんなことを思い、そんなテイストに、ただただ魅了される。
そして、ミシェル・スヴィエルシェヴスキ指揮による、グラーツ大管弦楽団も、好演していて... 数少ないロクシーンのアルバムの内、ほとんどが彼らによるものだけに、まさにロクシーンのスペシャリスト。これまでBISからリリースされた2つのアルバムも、聴きたくなってしまう。
それにしても、もったいない!こういう作曲家が忘れ去られているとは...
ロシアのDNAに、西欧の「世紀末」の薫りを纏わせたロクシーンの音楽。いつだったか、新日本フィルがロクシーンを取り上げて、その存在は知っていたのだけれど、その音楽が、こんなにも馨しく、妖しく酔わせてくれるとは... いや、クラシック、まだまだ知らない部分、多々あります!

Lokshin ・ Les fleurs du mal – Orchestral Works

ロクシーン : 歌付き交響詩 『悪の華』 〔ソプラノと管弦楽のための〕 *
ロクシーン : ハンガリー幻想曲 〔ヴァイオリンと管弦楽のための〕 *
ロクシーン : 詩の芸術 〔ソプラノと管弦楽のための〕 *
ロクシーン : シンフォニエッタ 第2番 〔ソプラノと管弦楽のための〕 *
ロクシーン : 交響的組曲 『ジャングルにて』

ヴァンダ・タベリー(ソプラノ) *
ヴォルフガング・レディク(ヴァイオリン) *
ミシェル・スヴィエルシェヴスキ/グラーツ大管弦楽団 「レクリエーション」

BIS/BIS-CD-1556




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