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ヤーコプスによる未来へのクリエイション! [2009]

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2010年、最初に取り上げるのは、ハイドンのオラトリオ『天地創造』。
ハイドンのメモリアルは終わってしまったけれど、世界の始まりを描くオラトリオは、新しい年に相応しいかと... ということで、"ピリオド"界切っての鬼才にして、巨匠、ヤーコプスの最新盤(とはいえ、例の如く、リリースからは随分と経ってしまったが... )。鮮烈な記憶として残るオラトリオ『四季』(harmonia mundi/HMC 901829)の名演に続く、ヤーコプスの『天地創造』は、フライブルク・バロック管弦楽団、RIAS室内合唱団と、鬼才の名演の数々を支えてきた面々が揃い、期待せずにはいられない。ということで、2010年、最初に取り上げるアルバム、ヤーコプスによる『天地創造』(harmonia mundi/HMC 992039)を聴く。

世界は七日でできた... とは、さすがに思わない。ひも理論だの、5次元宇宙だの、加速器でブラックホールを作るだの、今や話しは、もっともっとスケールの大きなものとなっていて、とてもじゃないけれど「七日」では納まりきらない(頑なに「七日」を信じている人もいるわけだけれど... )。しかし、旧約聖書の描く七日間を、きっちり7つのパートで描き上げてゆくのが、ハイドンのオラトリオ『天地創造』。21世紀からこのオラトリオ見つめると、どこか、ほのぼのとした天地創造であり、かわいらしくすらある。創造の経緯も、描写的に捉えれば捉えるほど、何かテーマパークで楽しむような、そんな感覚すらあって... また、そんな感覚を際立たせるのが、ヤーコプスであって...
使い慣れたドイツのピリオド・オーケストラ、フライブルク・バロック管を駆使し、ハイドンによる天地創造の七日間に、活き活きとした動きを与える。壮大な絵巻をただ見せるだけでない、描かれたひとつひとつの事柄を、動かしてしまうような... そんな魔法を掛けてしまうあたりが、ヤーコプスならでは。神が最初の生命を生み出す前(ちなみに、最初の生命は第1部、3日目、草の誕生... )から、音符のひとつひとつが呼吸を始めてしまう、独特の躍動感というのか、生々しさというのか、ヤーコプス・ワールドの醍醐味がそこにある。すると、天地創造は、気難しい、古色蒼然としたものではなく、鮮やかな色彩に彩られ、豊かな表情に満ち、わくわくさせてくれるミラクルに溢れ、最初から魅了されるばかり。
そこに、3人の若いソリストたち(全員、20代?)の歌が花を添える。18世紀、古典派の、愛らしさとクラッシーなトーンにぴったりな、クライターのソプラノ。18世紀、古典派の、誠実さとピュアなトーンにぴったりな、シュミットのテノール。彼らのフレッシュさが、天地創造を軽やかに語れば、ヤーコプス・ワールドはより色を増し、華やぐ。そして、伊達男、ヴァイサーのバス(ラファエル/アダム)だ。またしても艶っぽい。が、濃くならない... だからこそ、魅力的!大天使ラファエルは、こんなにも甘い声で歌うのか?アダムの声は、りんご以上に甘美なのか?このスウィートさが、天地創造に、どことなくポップな気分を漂わせて、ヤーコプスの狙いに納得させられる。旧約聖書の厳めしさとは一線を画す、ファンタジーとして『天地創造』... そうした音楽に触れていると、おとぎ話に遊ぶような、そんな心地にすらなる。
で、忘れてならないのが、RIAS室内合唱団。ドイツのコーラスならではのクリアさは、今さらのことだが、この『天地創造』では、クリアな魅力はそのままに、「室内」という規模を完全に忘れさせてくれるパワフルさがあって、圧巻。ヤーコプスに絶妙にドライヴされての、アグレッシヴなコーラスは、18世紀、古典派のポジティヴ感を弾けさせ、何ともハッピー!活き活きと創造の喜びを歌い上げ、いつの間にか聴く者を元気にしてくれるよう。21世紀においては、あまりに楽観的かもしれないが、彼らが歌い上げる迷いの無い喜びに触れていると、未来もきっと、光はある... そんな気分になれそうだ。
2012年、世界は終わる... 終わる?!なんて気分を吹き飛ばす、ヤーコプスによる未来へのクリエイション!できることなら、こんな世の中、創り直したい... そんな思いに駆られるご時世だからこそ、ファンタジックでファンタスティックな『天地創造』は、想像以上に息づいて、魅惑的にすら展開され、輝くばかり。何より、「今」という地点から見つめるハッピーな天地創造は、無邪気に、独特のインパクトを放っている。ヤーコプスは、そうしたあたりも狙っていたのだろうか?

Joseph Haydn
The Creation
René Jacobs


ハイドン : オラトリオ 『天地創造』 Hob.XXI-2

ガブリエル/エヴァ : ユリア・クライター(ソプラノ)
ウリエル : マキシミリアン・シュミット(テノール)
ラファエル/アダム : ヨハネス・ヴァイサー(バリトン)
RIAS室内合唱団
ルネ・ヤーコプス/フライブルク・バロック管弦楽団

harmonia mundi/HMC 992039




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