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温かく、光で充たしてくれるような... 21世紀の祈りの歌。 [2009]

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第九の季節... となると、クリスマスの季節でもあるわけで...
今週末、そのクリスマスがやって来る。街中のイルミネーションは、今、最も輝きを増しているところか。で、何を聴こう?特別、クリスマス気分を盛り上げたい!というわけでもないのだけれど、何となしにそんな音楽を求めてしまったり。流され易い体質... で、シルヴェストロフの教会音楽集(ECM NEW SERIES/4763316)を手に取ってみる。
ミコラ・ゴブディッチ率いる、キエフ室内合唱団、美しい無伴奏コーラスで歌われる現代の聖歌は、シルヴェストロフならではの癒しに充ちて、しばし浮世の煩わしさを忘れさせてくれるよう。それにしても、その浮世離れした美しさ... こんな浮世だからこそ、ただならず聴き入ってしまう?

ウクライナを代表する現代の作曲家、ヴァレンティン・シルヴェストロフ(b.1937)。
現代音楽にして、"ゲンダイオンガク"離れした美しい音楽を紡ぎ出す作曲家... そんなシルヴェストロフのスタンスを見つめると、本当の意味での現代にフィットした音楽とは何であろう?と、いつも考えさせられる。一見、懐古趣味のようでもあり、その「懐古」にこそ現代性を見出すような、不思議ワールド。リアルな現代とは結びつかないようなヘブンリーさ。だからこそ現代に語りかけてくる響きでもあって。新しいアルバムが出ると聞けば、スルーできない。で、ゴブディッチ+キエフ室内合唱団による教会音楽集は...
まさに、ア・カペラ。教会にて... の、穏やかな祈りのイメージそのものなのだが、やはり不思議ワールド、全開。キリスト教の音楽というのは、良かれ悪しかれイエスの受難に縛られたイメージ(なんて言ったら怒られる?)があるが、シルヴェストロフの教会音楽集には、そうした呪縛から解き放たれ、ふわっと宙に浮かぶような、そんな感覚があって、なんともアンビエント。現代音楽云々以前に、"クラシック"とも毛色を違えるような、ニュートラルなサウンドが印象的。また、残響の多い大聖堂での録音を最大限に活かし、独特の音楽世界を創り出す。それは、光に充ち溢れて、たまらなく心地のよい、温かなサウンドで... 天国的。
ア・カペラ、人の声だけで、こんなにも浮世離れした音楽世界が生み出されてしまうのか?驚かされる。そして、どうしようもなく癒されてしまう。現代的なシャープさを追求する「室内合唱」とは一味違う、オールド・ファッション(?)なキエフ室内合唱団。そのヴィブラートと、それを美しくぼかす残響... 妙なる揺れが、現代人の耳には、まるでゆりかごのよう。遠い記憶をくすぐられるような、シルヴェストロフの真骨頂がそこにある。それにしても、このおぼろげな感覚はいったい...
例えば、典礼聖歌集(track.1-12)の最後、アヴェ・マリア(track.12)。深夜、点けっぱなしだったテレビから流れてくる、放送終了を告げる音楽のような... 柔らかなメロディを、半分眠りながら、半分夢の中で聴くような。凝った録音もあって、残響に溶ける温かなハミングに、耳元で囁く「アヴェ・マリア... 」など、全てがドリーミン。そして、2つの霊的な歌のアレルヤ(track.13)などは、壊れ気味なラジオが、思わず天国の周波数を捉えてしまったような、不思議なハーモニーを響かせて。"Two Spiritual Songs(2つの霊的な歌)"というだけに、本当にスピリチュアルな気分にさせてくれる。
穏やかに、空気のように存在する響き。とでも言うのか、音楽として、強い存在感を示すわけではなく、殺伐とした現代生活の隙間を、そこはかとなしに、温かく、光で充たしてくれるような音楽。サティは、「家具の音楽」を提唱したわけだが、シルヴェストロフのは、「空気の音楽」?そんな感触がある。どこか、懐かしい響き、どこか、懐かしいメロディで、聴く者をふんわりと包み、安らぎへと導いて。電飾で飾り立てられたクリスマスでもなく、妙に厳かになるクリスマスでもなく、シンプルに、温かさと、穏やかさを紡ぎ出し、じんわりと存在感を示すシルヴェストロフの教会音楽集。他にはない感覚で、今の時代、今の季節に、フィットしてみせる。

VALENTIN SILVESTROV SACRED WORKS
KIEV CHAMBER CHOIR / MYKOLA HOBDYCH


シルヴェストロフ : 典礼聖歌集
シルヴェストロフ : 2つの霊的な歌
シルヴェストロフ : 2つの霊的な聖歌
シルヴェストロフ : 2つのダヴィデ詩篇
シルヴェストロフ : ディプティック
シルヴェストロフ : アレルヤ

ミコラ・ゴブディッチ/キエフ室内合唱団

ECM NEW SERIES/4763316




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