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あと一ヵ月となった、ヘンデル・メモリアルを噛み締めながら... [2009]

12月になりました。では、今年を振り返りますか... なんて余裕はない、当blog。まずは、目の前にある、2009年を片付けねば... と、追われる日々。なのだが、ちらりと振り返る2009年。昨年より、盛りだくさんだった気がするのは、気のせい?
録音の世界、全体が、ますます萎んでいくような中で、"クラシック"は、さらにさらに厳しい状況があるわけだが、昨年と比べると持ち直した観が、なんとなくある。やはり、ヘンデル、ハイドン、メンデルスゾーンというメモリアルは大きかったか?また、それを支えるように、じわりじわりと、ショパン、マーラーのプレ・メモリアルが盛り上がりつつあって... 2008年よりも充実した1年であったような。"クラシック"における「メモリアル景気」というのは、何だかんだで大きいなと、改めて思う。
ということで、あと一ヵ月となった、没後250年、ヘンデルのメモリアルを噛み締めながらの2タイトル。エマニュエル・アイム率いるコンセール・ダストレ、オラトリオ『復活』(Virgin CLASSICS/694567 0)と、サンドリーヌ・ピオー(ソプラノ)が歌うアリア集、『天と地の間に』(naïve/OP 30484)を聴く。


程好いアバウトさで、ふんわりと、『復活』。

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ヘンデルのオラトリオというと、まず『メサイア』があって... イギリスに渡ってからの、英語によるオラトリオのイメージが強い。が、彼のイタリア時代(1706-10)のオラトリオを忘れるわけにはいかない。ドイツからやって来た若い作曲家が、瞬く間にイタリアを席巻。そのヴィヴィットなサウンド、艶やかなメロディのひとつひとつを聴けば、20代前半にして、当時の音楽モードの発信地、イタリアを虜としてしまった力量に、大きく頷くしかない。そして、そのイタリア時代の代表作のひとつが、オラトリオ『復活』。若きヘンデルの才気が漲る音楽は、1曲、1曲の力の入り様が、晩年の名作オラトリオとは一味違って、凄い。
そんなオラトリオを取り上げる、アイム+ル・コンセール・ダストレ... カンタータ『アチス、ガラテアとポリフェーモ』(Virgin CLASSICS/545557 2)に始まり、デセイが歌うイタリア語のカンタータ集(Virgin CLASSICS/343842 2)、オラトリオ『時と悟りの勝利』(Virgin CLASSICS/363428 2)、ディキシト・ドミヌス(Virgin CLASSICS/395241 2)と、振り返れば、ヘンデルのイタリア時代を丁寧に追っていて、実はスペシャリスト?色彩豊かなル・コンセール・ダストレのサウンドに、ぴたりとはまるレパートリー。当然、『復活』でも、ナチュラルで活き活きとした音楽を聴かせてくれる。
が、『復活』は、とにかく「歌」のオラトリオ。コーラス(と言っても、ソリストたちによるのだけれど... )は2曲だけで、アリアが続く... となれば、歌手の力量が問われる作品。やたら派手なキャスティングをする傾向もあるアイムの録音。時折、"ピリオド"向きなのだろうか?というような「スター」が参加(オペラのEMI=Virgin CLASSICSの大人の事情?)して、ギョっさせられることもあるが、"ピリオド"のストイックさとは少し距離を取って、多少ロマンティックに、より艶やかな歌を繰り広げるのがアイムの指向か。『復活』でも、たっぷりと歌わせてくる(もちろん、"ピリオド"の枠の内で... )。
天使にしては、艶っぽいカミラ・ティリング(ソプラノ)。ヨハネを歌うトビー・スペンス(テノール)もまた、「福音史家」というよりは「洗礼者」のような、魅惑的な声を響かせ印象的。そして、この『復活』におけるスターとなるのか、ケイト・ロイヤル(ソプラノ)の歌うマグダラのマリア... どうも、その歌よりも、派手な売り出し方が印象に残るのだけれど、彼女の声は「マグダラ」っぽい濃さにしっくりくるようで、いいのかもしれない。で、忘れてならないのが、ソニア・プリーナ(コントラルト)のクレオパの妻、マリア。相変わらずの深い声を響かせて、インパクトがある... と、のびのびと歌う歌手陣、ひとりひとりを活かす、程好いアバウトさで、ふんわりまとめるアイムのヘンデル。なかなか素敵。

HANDEL: LA RESURREZIONE
LE CONCERT D'ASTRÉE / EMMANUELLE HAÏM


ヘンデル : オラトリオ 『復活』 HWV 47

天使 : カミラ・ティリング(ソプラノ)
マグダラのマリア : ケイト・ロイヤル(ソプラノ)
クレオパの妻、マリア : ソニア・プリーナ(コントラルト)
ヨハネ : トビー・スペンス(テノール)
悪魔 : ルカ・ピサローニ(バス・バリトン)

エマニュエル・アイム/ル・コンセール・ダストレ

Virgin CLASSICS/694567 0




バロックが匂い立つ、『天と地の間に』。

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いやぁー、もぅ、なんと!なんと喜(悦)びに充ちたサウンドだろう...
1曲目、『復活』の天使のアリアの輝かしさ、花々しさに、ただただ魅了されるばかり。これほど輝かしい音楽を聴くのは久々かも... なんて思ってしまうくらいに、その輝きに圧倒される。かと思えば、続く『テオドーラ』からのアリア(track.2, 3)では、ただならず深く沈んだ表情が広がり。このコントラストが、タイトルにある『天と地の間に』なのか?ヘンデルのメモリアルにサンドリーヌ・ピオーが送るアリア集は、さすがの一言であり。いや、「さすが」すら越えてみせて、驚かされる。
フランスが誇る実力派"ピリオド"系ソプラノ、サンドリーヌ・ピオー。この人の魅力は、そのクラッシーな声と、軽々と超絶のアリアを歌いこなしてしまう確かなテクニック。そして、知性的で、クールな印象が強いのだけれど、彼女の最新盤、『天と地の間に』で聴かせるヘンデルでは、そのクラッシーさ、クールさからさらに踏み込んで、より感情的なあたりも響かせるよう。悲しみを歌えば、たっぷりと間を取って、ゾクっとするような艶っぽさすら漂わせる。いつになく挑戦的なピオーの姿こそが、クール!
それを巧みに促すのが、ステファノ・モンタナリ(ヴァイオリン)の指揮によるアカデミア・ビザンティナの演奏。で、音楽監督のダントーネではなく、コンサート・マスターのモンタナリの指揮が、このピリオド・オーケストラのサウンドを、一皮剥かせたような、そんな印象を与えて、実に興味深く。普段は、イタリアの"ピリオド"界にあって大人しい... 端正な演奏を聴かせてくれるわけだが、このアルバムでは、メンバーひとりひとりの魅力を大切にアンサンブルが編まれ、そのひとりひとりの息遣いが聴こえてきそうな生々しさが、そこかしこからこぼれ出す。ピオーの歌を絶妙にサポートしながらも、さり気なく名人芸が散りばめられ粋でもあり、魅惑的な存在感を見せる。一方で、1曲目の最初の音のキレは衝撃的で... これぞイタリアの"ピリオド"!といったインパクト。『ソロモン』の有名な「シバの女王の入場」(track.14)も、そんなキレで鳴らしてくれば、アグレッシヴなサウンドで、ポジティブな音楽を、フルに楽しませてくれる。
さて、歌に話しを戻しまして... 近頃、どうも、歌わない方がいい人まで歌ってしまうバロックものだが、やはり歌うべき人が歌い、バシっ!と決めてくると、凄い音楽が出現してしまう。超絶も、メローなものも、バロックならではの独特の感性が匂い立ち、時を越えて、現代を生きる我々をも幻惑してくる。ピオーの『天と地の間に』で聴かせてくれるヘンデルがまさにそうだ。また、バロックから次の時代へと踏み出しつつあるヘンデルの姿がこのアルバムにはあって... 『ヨセフとその兄弟』からのアリア(track.12)などは、18世紀後半の艶やかさをすでに聴かせて、それをピオーが歌えば、どうしようもなく美しく... 眩暈を起こしそう。ジェラール・コルビオ監督の映画『イル・カストラート・ファリネッリ』ではないが、聴いていて、うっかり気が遠くなる歌というのは、やはり存在するように思う。

HAENDEL Between Heaven and Earth Sandrine Piau Accademia Bizantina Stefano Montanari

ヘンデル : オラトリオ 『復活』 HWV 47 より アリア 「開くことだ、地獄の門よ」
ヘンデル : オラトリオ 『テオドーラ』 HWV 67 より レチタティーヴォ と アリア
   「汝輝かしき太陽!... 私の苦悩と同じくらい深い暗闇」
ヘンデル : 聖チェチーリアの祝日のための頌歌 HWV 76 より
   アリア 「いかなる苦難も音楽を高めることも鎮めることもできない」
ヘンデル : オラトリオ 『メサイア』 より アリア 「シオンの娘よ、大いに喜べ」
ヘンデル : オラトリオ 『テオドーラ』 HWV 67 より ラルゴ
ヘンデル : 『アレクサンダーの饗宴』 HWV 65 より
   アリア 「おお、この憎むべき光から私を」
   レチタティーヴォ、アッコンパニャート と アリア 「私の魂を慰めてください... 私を平和なる海岸へと連れて行ってください」
ヘンデル : オラトリオ 『ヨセフとその兄弟』 HWV 59 より
   レチタティーヴォ と アリア 「汝はツァフェナトではないか?... 預言者の言葉が私の胸を狂喜させる」
ヘンデル : オラトリオ 『陽気な人、憂鬱な人、中庸な人』 HWV 55 より 二重唱 「暁が夜に忍び込み」 *
ヘンデル : オラトリオ 『サムソン』 HWV 57 より シバの女王の入城
ヘンデル : オラトリオ 『陽気な人、憂鬱な人、中庸な人』 HWV 55 より
   アッコンパニャート と アリア 「金色の翼に乗って... スウィート・バード」
ヘンデル : ラルゴ 〔合奏協奏曲 変ロ長調 Op.3-2 HWV 313 より〕
ヘンデル : オラトリオ 『サムソン』 HWV 57 より 「輝けるセラフィムを」
ヘンデル : オラトリオ 『時と真理の勝利』 HWV 46a より
   アッコンパニャート と アリア "Pure del cielo... Tu del Ciel ministro eletto"

サンドリーヌ・ピオー(ソプラノ)
トピ・レーティプー(テノール) *
ステファノ・モンタナリ/アカデミア・ビザンティナ

naïve/OP 30484




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