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"LAVA"、ナポリ楽派から流れ出す溶岩は、ただならない... [2009]

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カウンターテナーやコントラルトの活躍が、かつてのカストラートのレパートリーを掘り起こしてくれたことで、近頃、「ナポリ楽派」という存在がクローズアップされつつあるような... と言っても、メジャーには成り得ないのだろうけれど... 以前に比べれば、間違いなく、より多く、「ナポリ楽派」を見掛ける気がする。18世紀、ヨーロッパの音楽シーンを主導したナポリ楽派... 当然、18世紀の国際的なスター=カストラートとたちとは密接で。そのアクロバティックなアリアの数々は、21世紀の今を以ってしてもエキサイティング!
で、エキサイトするあまり、溶岩が噴出してしまった?というのが、"ピリオド"界切っての個性派ソプラノ、ジモーネ・ケルメスが歌う、ナポリ楽派のアリア集、"LAVA(溶岩)"(deutsche harmonia mundi/88697 54121 2)。ジャケットの、ケルメス姐さんがすでに溶岩?みたいな... この人ならではのヤリ過ぎ感、危うさ?も楽しみだったり。
そんな一枚を聴く。

きっちり「ナポリ楽派」を押さえたラインナップ...
『スターバト・マーテル』で有名なペルゴレージ(1710-36)に始まり、ヘンデルのライバルとしてスポットが当たるポルポラ(1686-1768)、ダ・ヴィンチではないレオナルド・ヴィンチ(1690-1730)、どういうわけかチェロ協奏曲で有名なレオ(1694-1744)、ドレスデンを牛耳って、かの大バッハすら寄せ付けなかったハッセ(1699-1783)。と、多少、教科書的ではあるが、ナポリ楽派の重要人物が居並ぶ。しかし、それは、そのまま、18世紀、人気オペラの大家たちだ。ならば、"LAVA"に収録されたアリアの数々は、どれも魅力的。
バロックの時代にありながら、すでに次の時代の軽やかさ、より色彩的なトーンを纏ったそのサウンドは、当時の音楽モードの発信地として、一歩先を行ったナポリを、しっかりと味合わせてくれる。それでいて、お馴染みの18世紀のアリア(どこか形式ばった印象を受けるのだが... )とは一味違う多彩さがあって、より「歌」を、「声」を、魅惑的に聴かせようという意図(時に仕掛け... )に溢れている。このあたりが、カストラートと結びついた芸術なのだろう。もちろん、スター主義、「歌」偏重として、当時から批判の対象であったわけだが、アリアそのものは、ケレン味も含んで、新鮮に楽しませてくれる。いや、酔わせてくれる。どのアリアも、どこか危うげで、陶酔的... 18世紀の聴衆を熱狂させたアリアの数々は、21世紀を生きる我々にも響いてくるものがあるようで、取り澄ました"クラシック"にはないジューシーさが、じわじわと広がってゆく。
そんな、ナポリ楽派を歌うジモーネ・ケルメス... めちゃくちゃ上手い!というわけでもなく、驚くべき美声!でもない... けれど、「歌」というものをしっかり心得た、聴かせ方の巧さに、してやられてしまう個性派ソプラノ。取り澄ました"クラシック"ではない、教科書的な冷たさがない、踏み込んだ表現が生み出す生々しさは、カストラートの伝説が重なるようでもあり。「ベルカント」という言葉が使われる以前の、自由闊達で、時に猥雑ですらあったオペラハウスの空気感を漂わせて、魅了されてしまう。1曲目、ペルゴレージのオペラ『オリンピアーデ』のアリアなどは、まさに溶岩!マッドなケルメス姐さんのカラーが炸裂し、エキセントリックなレッド・ヘアーのみならず、気合入ってます。が、より魅力的なのは、たっぷりと歌って聴かせるアリア。艶やかなあたりに、ちょっとゾクっとくるような表情を盛り込んで、聴く者を幻惑してくる。また、キャラクタリスティックなアリアでは、個性派だからこその自由闊達な表現で、活き活きと歌い、楽しませてくれる。
そんなケルメス姐さんをサポートする、クラウディオ・オゼーレ率いる、ピリオド・オーケストラ、レ・ムジケ・ノヴェがまた凄い!丁々発止のアグレッシヴな演奏を展開して、存在感を見せつけてくる。裏方に納まろうなんて気は、さらさらないような、まるでインプロヴィゼーションのように沸き上がるヴィルトゥオージティに、歌ばかりだけでなく魅了される。で、そんな演奏を誰が聴かせてくれているのだろうかと、メンバーのリストを見れば、驚かされつつ、納得。イタリア"ピリオド"界、期待の次世代ヴァイオリニスト、エンリコ・カザッツァに、第2ヴァイオリンには伊佐治道夫氏... アルモニー・ウニヴェルセルを主催するフロリアン・ドイターがヴィオラで参加し、フルートには、ロレンツォ・カヴァサンティ、オーボエには、気鋭の古楽アンサンブル、アンサンブル・ユニコーンの、ミヒャエル・ボッシュ。チェンバロには、近頃、その名をちらちら目にする、気になる鍵盤楽器奏者、セルジオ・チオメイと、気鋭の演奏家が結集。で、それぞれのアンサンブル、仕事で聴かせるサウンドよりも、スリリング?エキサイティング!なものを聴かせてくれていて... ハッセのオペラ『アンティゴノ』のアリア(track.8)などは、まるでジプシー・バンドのようなノリ!で、カッコ良過ぎる... もちろん、主役は「歌」なのだが、"LAVA"の魅力は、オゼーレ+レ・ムジケ・ノヴェによるものも大きい。
だからこそ、"LAVA"は、ナポリ楽派の魅力を存分に伝えてくれる。歌と演奏のスリリングなやり取りが、まさに溶岩のように、熱を持って流れ出す。

LAVA ・ Simone Kermes

ペルゴレージ : オペラ 『オリンピアーデ』 より "Tu me da me dividi"
ポルポラ : オペラ 『ルチオ・パピーリオ』 より "Morte amara"
ポルポラ : オペラ 『フラヴィオ・アニチオ・オリブリオ』 より "Se non dovesse il pie"
ヴィンチ : オペラ 『アルタセルセ』 より "Fra cento affanni e cento"
レオ : オペラ 『イル・デメトリオ』 より "Manca sollecita"
ハッセ : オペラ 『ヴィリアーテ』 より "Come nave in mezzo all'onde"
ペルゴレージ : オペラ 『シリアのハドリアヌス帝』 より "Lieto cosi talvolta"
ハッセ : オペラ 『アンティゴノ』 より "Perche, se tanti siete"
ヴィンチ : オペラ 『アルタセルセ』 より "No che non ha la sorte... Vo solcando un mar crudele"
ポルポラ : オペラ 『ルチオ・パピーリオ』 より "Tocco il porto"
ハッセ : オペラ 『捨てられたディドーネ』 より "Tu dici ch'io non speri... L'augelletto in lacci stretto"
ペルゴレージ : オペラ 『オリンピアーデ』 より "Mentre dormi amor fomenti"

ジモーネ・ケルメス(ソプラノ)
クラウディオ・オゼーレ/レ・ムジケ・ノヴェ

deutsche harmonia mundi/88697 54121 2




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