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ラテンを旅し、アマゾンの奥深くへ... [2009]

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ジャケットを飾るヤノマミの少女... そのインパクトに、ついつい引き寄せられてしまい... きっと、ただならずプリミティヴなサウンドが展開されるはず... そんな期待が裏目に出て、ガッカリしてしまったアルバム。で、しばらく、机の片隅にあったわけただが、期待も薄まって、改めて聴いてみれば...
イベリア半島とラテン・アメリカの作品を主なレパートリーとするという、イギリスの異色の合唱団、コロ・セルバンテスと、ブラジルのギタリスト、ファビオ・ザノンによる、合唱とギターのための作品集"YANOMAMI(ヤノマミ)"(signum CLASSICS/SIGCD 166)。ギタリストには欠かせないカステルヌウォーヴォ・テデスコから、スペイン、ブラジル、アルゼンチンの20世紀の作品が並び、渋めのギター・サウンドと、いい具合にカクテルされたラテン・テイストが、味わい深い世界を聴かせてくれる。ということは、おもしろかった?のかも。

春に見た、NHKスペシャル、『ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生きる』での、ヤノマミの人々の鮮烈な姿が印象に残る。我々の社会とはまったく違う、彼らの世界... 真の意味でのオーガニックな営み、時に哲学的ですらあるスピリチュアルな感覚に、深く感じ入るものがあった。そんなイメージがあっての、ジャケットとタイトル... 何か、ただならないものを期待してしまう。のだが、そこにあるサウンドというのは、わかり易い「ラテン」のイメージ。何だか、肩透かしを食らったような、そんな気分に。しかし、その「ラテン」... ギター伴奏のコーラスという、馴染のないスタイルから紡がれるあたりは、かなり新鮮。
スペイン情緒、豊かに、ロルカの詩を歌う、カステヌウォーヴォ・テデスコのロマンセロ・ヒターノ(track.1-7)に始まって、カタルーニャの作曲家、カルロス・スリニャク(1915-97)の、スパニッシュ、エキゾティックなギター作品、ソナティナ(track.8-11)を挿み、アンダルシア地方で歌われる聖歌、サエタをモチーフにした、十字架の道(track.11-25)。アルゼンチンの作曲家、フェルナンド・モルハ(1960-2004)による、ピエザス・サクラス(track.26-30)では、一転、ラテン語で、無伴奏で、ルネサンスのポリフォニーのような、美しく瑞々しいトーンが印象的。それまで貫かれた「ラテン」のトーンを、さらりとかわしたサウンドが、また、新鮮。そして、このアルバムのタイトルにもなった、ブラジルの作曲家、マルロス・ノブレ(b.1939)によるヤノマミ(track.31)... と、個性的な作品が並び、「ラテン」の故地、イベリア半島から、大西洋を渡り、やがてアマゾンの奥地へと至る、旅するような感覚がおもしろい。
そうした中で、特に強い印象を残すのが、スリニャクの十字架の道(track.11-25)と、ノブレのヤノマミ(track.31)。まったく違う方向を向きながらも、どちらもプリミティヴ。アンダルシアの強い陽射し、乾いた空気、大地が放つ、素朴さと、鮮烈さが、突き刺さってくるようなスリニャク作品。アマゾンの深い森に包まれ、精霊たちと対話するような、恍惚とした、儀式めいた歌(掛け声?)が続くノブレ作品。ワールド・ミュージック的な要素と、20世紀の近代的、現代的な感覚を巧みに結び付けて、それぞれに独特の表情を生み出す。それは、安易なエキゾティシズムに留まることなく、興味深いミクスチュアを聴かせ。そんなサウンドを聴き入れば、イマジネーションは膨らむばかり。
そうした個性的な作品の数々を歌うコロ・セルバンテスだが... 1曲目、カステルヌウォーヴォ・テデスコのロマンセロ・ヒターノでは、やや荒さが見受けられるものの、より現代的な機能性を求められるスリニャク、モルハ、ノブレの作品では、冴えた歌を聴かせてくれる。現代的な室内合唱のスタイルが生み出す透明感と、「ラテン」のパッションを器用に両立させ、巧みに情緒を演出。また、無伴奏で歌われるモルハのピエザス・サクラスでは、確かなハーモニーを響かせて、その実力もきっちりと示す。が、ノブレのヤノマミでは、多少、ヤリキリ感に欠ける?"クラシック"からはみ出す勇気、大胆さが、あと少しあったならば、もっとスリリングなものになったのではないだろうか。
一方、ザノンのギターは、「ラテン」のプリミティヴさを渋く、アマゾンのプリミティヴさを力強く弾き分けて、印象的。コーラスという大きな規模を相手に、ギターひとつで、見事に伴奏してのけて。かつ、いい具合に地味なあたりが、プリミティヴなあたりを際立たせて、魅力的。

YANOMAMI - CORO CERVANTES / ARANSAY / ZANON

カステルヌウォーヴォ・テデスコ : ロマンセロ・ヒターノ **
カルロス・スリニャク : ソナチナ *
カルロス・スリニャク : 十字架の道 **
フェルナンド・モルハ : ピエザス・サクラス *
マルロス・ノブレ : ヤノマミ Op.47 **

カルロス・フェルナンデス・アランセイ/コロ・セルバンテス *
ファビオ・ザノン(ギター) *

signum CLASSICS/SIGCD 166




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