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20世紀の断片を拾い集めて... マルティヌー。 [2009]

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ヘンデル、ハイドン、メンデルスゾーンに隠れてはいるものの、何気に?静かに?盛り上がりを見せている、マルティヌー、没後50年のメモリアル。なかなかメジャーには成り得ない存在だけれども、2009年、ちょこちょこ新譜を見掛ける気がする。先日も、オーボエと小管弦楽のための協奏曲(OEHMS CLASSICS/OC 737)を聴いたばかり。そうした、マルティヌー・メモリアルで、存在感を示すのが、チェコを代表するレーベル、SUPRAPHON。マルティヌーは、20世紀、チェコを代表する作曲家のひとりだけに、復刻も含めて、かなりのアルバムをリリース。さすが、力、入ってます。
そうした中から、マルティヌーのオペラ『ジュリエッタ』の、幻のフラグメンツを世界初録音したというアルバム(SUPRAPHON/SU 3994-2)を聴いてみる。何気にチェコ・オペラのエキスパートでもあるマッケラスの指揮で、チェコを代表するオーケストラ、チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で... さらに、チェコが生んだオペラ界のスター、マグダレーナ・コジェナー(メッゾ・ソプラノ)がジュリエッタを歌う、まさに「メモリアル」なゴージャスさ!

なのだが... この幻のフラグメンツに至る経緯が複雑でして... フランスの、ジョルジュ・ヌヴーの戯曲『ジュリエット、あるいは夢の鍵』(1930)を、チェコ語でオペラ化したのがマルティヌーのオペラ『ジュリエッタ』(1938)。だが、より幅広く上演されることを狙って、マルティヌーはフランス語版も準備。その宣伝のため、ラジオ放送用に3つのシーンを編んだ(1939)のが、このアルバムに収録されたフラグメンツ(track.4-6)。しかし、放送されることはなく、幻に...
そんな幻のフラグメンツを、昨年末、プラハでとうとう初演、そのライヴの模様を世界初録音。マルティヌー・イヤーにリリース。とのこと。よって、全曲盤とは違い、捉えどころがないような、何となく中途半端なイメージもなくもないのだけれど、予告編としては間違いなく魅力的。
夢現に、SFちっくで、ミステリアスな『ジュリエッタ』のストーリーは、マルセル・カルネによって映画化(1950)されているのだとか... 近頃の映画で言うならば、ミシェル・ゴンドリー、チャーリー・カウフマンといったテイストだろうか?夢や記憶を巡る物語は、『エターナル・サンシャイン』、『恋愛睡眠のすすめ』のようだけれど、『ロスト・ハイウェイ』や、『インランド・エンパイア』のような、デイヴィッド・リンチ的、不可解さもあり... となると、オペラにしては「現代的」というのか、実は、おもしろい物語なのかもしれない。で、マルティヌーの音楽だが、少し印象主義的なトーンを強めて、謎めく物語の情景を、繊細に描きつつ、夢現のコントラストを、いつもながらのポップさ、ライトさで彩り、瑞々しく。どこかで、映画音楽のよう。それは、20世紀前半のどのオペラとも違い、古さと新しさ、重さと軽さ、マルティヌーにしかできない配分で、絶妙なバランスを聴かせてくる。
そんなオペラを、見事に演奏したマッケラス+チェコ・フィル。そのサウンドにはキレがあり、マルティヌーのヴィヴィットさをきっちり描いて、フレッシュ。作品に、古さを感じさせない。そして、コジェナー(メッゾ・ソプラノ)をはじめとする歌手陣もすばらしく。予告編としてのフラグメンツではなく、全曲盤で聴きたくなってしまう。ということは、マルティヌーの狙いは当たったか?

さて、フラグメンツの前に、ズビニェク・ヴォストジャークによって編曲(1969)された、大オーケストラのための組曲(track.1-3)が収録されているのだけれど。こちらは、ノスタルジックな気分に包まれた「近代音楽」を、じっくり味わうようなところがあって、興味深く... その始まりは、何となくバルトーク調?ストラヴィンスキー調?ドビュッシーやラヴェルも臭わせて... どこかで聴いたことがあるような響きが、夢現に次から次へと立ち現われてゆくような、不思議な感覚。まるで、マルティヌーが生きた時代の、音楽アーカイヴのような仕上がり。もちろん、『ジュリエッタ』の組曲であることは間違いないのだけれど、そこから、じわじわっと20世紀、「近代音楽」が、広がるのがおもしろい。

MARTINŮ THREE FRAGMENTS FROM THE OPERA JULIETTE mackerras

マルティヌー : オペラ 『ジュリエッタ』 組曲 H. 253B 〔大オーケストラのための/編曲 : ズビニェク・ヴォストジャーク〕
マルティヌー : オペラ 『ジュリエッタ』から 3つの断章 H.253A
   森の場面/記憶の場面/第3幕のフィナーレ *

ジュリエッタ : マグダレーナ・コジェナー(メッゾ・ソプラノ) *
ミシェル : スティーヴ・ダヴィスリム(テノール) *
フレデリク・ゴンサルヴェス(バス・バリトン) *
ニコラ・テスト(バス) *
ミシェル・ラグランジュ(メッゾ・ソプラノ) *
チャールズ・マッケラス/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団

SUPRAPHON/SU 3994-2




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