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回帰する... ブルックナー。 [2009]

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シモーネ・ヤングと、彼女が率いるハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団によるブルックナーの8番の交響曲(OEHMS CLASSICS/OC 638)。机の片隅に放置されて、かなり経ってしまったアルバム。いつのリリースだった?と振り返れば、夏。で、なぜそういうことになったかと言うと、前半(1楽章、2楽章で、30分と45秒... )、後半(3楽章、4楽章で、51分と56秒... )と、2枚に分けて収録されているあたりに、どうも躊躇してしまう。第九分のの長さだったCDの収録時間も徐々に伸びて、長大なブルックナーの8番の交響曲も、近頃は1枚にまとまっているものがほとんど... そういう状況に慣れてしまうと、一気に聴くことができないもどかしさから、ブルックナーを2曲分、聴くような、そんなイメージを持ってしまって... 1枚でもヘヴィーなのに、2枚か... なんて、いつの間にやら、机の片隅に追いやってしまっていた。が、いいかげんに聴かねばと、手を伸ばしてみれば...

歌うブラームスの後に聴く、音の塊(?)、ブルックナーは、格別!その無骨な交響楽に、クラクラきてしまう。一方で、ブラームスが交響曲に取り組んでいた頃から間もないはずのブルックナーの8番の交響曲に、よりモダンな感覚を見出し、時にアヴンギャルドな空気すら漂うあたり、興味深く。ブラームスの後に聴くブルックナーというのは、ただブルックナーを聴くのとはまた違った感覚で聴くことができるようで、とても新鮮に感じてしまう。いや、そればかりではない?というところで、思い出す... ヤング+ハンブルク・フィルによるブルックナーのツィクルスは、全て初稿による。ということを...
1878年、初稿によるブルックナーの8番の交響曲。ハース版に馴染んできて、かつ、現代的というのか、クリアな演奏で聴くのが好き... そうした自分の中の定番、洗練されたブルックナー像に慣れてしまってからの、ヤング+ハンブルク・フィルによる初稿は、ギョっとするようなところ、多々あり... 8番に限らず、これまでの2番(OEHMS CLASSICS/OC 614)、3番(OEHMS CLASSICS/OC 624)、4番(OEHMS CLASSICS/OC 629)でもそうだったのだが。しかし、一度、彼らの世界に巻き込まれてしまうと、抗し難い、不思議な魅力に取り憑かれてしまう。まず、「初稿」という、これまでとは違う感覚で向き合うことになるブルックナー像に驚き、新鮮さを覚える。のも束の間、不思議な魅力... どこか呪術的な様相をも見せるヤング+ハンブルク・フィルのサウンドに、呑み込まれてしまう。ツィクルス、第4弾となる8番は、よりそうした感覚が、強くなっているような気がする。
ブルックナーのオリジナルに立ち返ることで浮き彫りにされる、改訂を重ねて「洗練」という名の下に削ぎ落とされてしまったアヴァンギャルドさ... 一筋縄ではいかない、オリジナルの姿。初稿の、まだまだ整えられていないところにこそ、ブルックナーのクリエイティヴィティを感じる。また、その一筋縄ではいかないあたりに、20世紀へのプロフェシーが浮き上がるようで... ブルックナーのすぐ先にあるであろう、マーラーの濃厚なテイスト。さらに先のロシア・アヴァンギャルドが放つフォーヴさ。ヴァレーズの咆哮と謎めくトーン。さらにさらに先になる、フィリップ・グラスを思わせてしまうミニマルなセンス。一括りにできないようなあらゆる要素(あるいは萌芽?)が、8番、初稿には渦巻いていて、ただならないサウンドを生み出し、スリリング!19世紀後半の交響曲、他では味わえない感覚を孕んで、そのインパクトはただならず。ブルックナーの凄さ、予想外のおもしろさを、再認識させられる。
そこに、シモーネ・ヤング、独特の、サウンド自体に体温を感じてしまうような音楽作りがあって... 交響曲という、構造偏重にも思えるスタイルに、有機的な存在感を与えてしまう。すると、超然とし、屹立する交響楽とは違う、うねり、蠢く、巨大な音の塊を出現させる。他の指揮者では生み出し得ない世界だろう。女性指揮者の新奇さなどではけして生まれない、近代的な男性視点の「フェミニン」さとはまったく次元の違う、女性にしか到達し得ない境地... なのか... 太古へと帰るような、大地母神的、ブルックナー。なんて、言ってみたくなる?"クラシック"の中でも、特にマッシヴであるはずのブルックナーの交響曲が、ジェンダーを超越したスケール感と、ミステリアスさを漂わすとは... 衝撃的。恐るべき、シモーネ。

Anton Bruckner: Symphony No.8
Simone Young ・ Philharmoniker Hamburg


ブルックナー : 交響曲 第8番 ハ短調 〔1887年、初稿〕

シモーネ・ヤング/ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団

OEHMS CLASSICS/OC 638




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