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ブラームス。かつてのように... [2009]

さて、11月も半ばへ... 秋は深まり、クリスマスのイルミネーションの話題なんかが、ニュースで伝えられ始めると、気分的に焦り出す。毎年恒例の症状。の一方で、グラモフォン・アウォードが発表されて、レコード・アカデミー賞もまもなく発表されて、録音の世界では、すでに2009年回顧モードは始まりつつある。そんな中、新譜を追いきれない状況が続く、当ブログ。巻いてゆかねば... と、多少、焦りつつ、メンデルスゾーンに続き、2つのアルバムを取り上げる。
凝った構成で、なかなか興味深い音楽を聴かせてくれるブラームスの交響曲のアルバムを2つ。まずは、イヴァン・フィッシャー率いる、ブダペスト祝祭管弦楽団による1番(CHANNEL CLASSICS/CCS SA 28309)。そして、ガーディナー率いる、オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティクによる3番(Soli Deo Gloria/SDG 704)を聴く。


イヴァン+ブダペスト祝祭管、ブラームスを歌う。

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かつては、ご当地、ハンガリーにはじまり、中東欧の作品を、躊躇することなく、たっぷりのローカル(時として、フォークロワ?)性でもって響かせて、そのポジティヴに泥臭い、迷いの無いオーガニックさに、たまらなく魅了されたものだが... 今は、マーラーのツィクルスが評判のイヴァン・フィッシャー+ブダペスト祝祭管。マーラーのみならず、ベートーヴェンの7番の交響曲を、同時代の作品と並べたアルバム(CHANNEL CLASSICS/CCS SA 25207)や、ロッシーニの珍しいアンサンブル作品を集めたアルバム(CHANNEL CLASSICS/CCS SA 27708)など、かつてとはまた一味違うサウンドで、興味深い音楽を聴かせてくれている。のだが、「かつて」が、またちらりと覗く?彼らの最新盤... イヴァン・フィッシャー編曲による、14番のハンガリー舞曲に始まり、ハイドンの主題による変奏曲(track.2-11)、そして、ブラームスの1番の交響曲(track.12-15)を取り上げる。
1曲目、メローな14番のハンガリー舞曲は、フォークロワなトーンも滲み(イヴァン・フィッシャー編曲で、あえて滲ませた?)、ポルタメントを粋に掛けて、弦楽セクションがしっとりと歌う。それは、ブラームスが生きた時代、ブダペストの洒落たカフェで、地元のバンドの演奏を聴いているような、そんな感覚か。そうしたハンガリー舞曲の後に響くハイドンの素朴な主題(track.2)は、どこか山にこだまする民謡のようにも聴こえて... 変奏(track.3-11)も、朗らかに歌い、軽やかで、舞曲的な気分すら漂う。"変奏曲"というジャンルは、作曲家の技術的なあたりが際立ち、気難しく感じることもあるが、イヴァン+ブダペスト祝祭管の手に掛かると、多彩な表情で、ひとつひとつの変奏を、情景として見せてしまうよう。そして、1番の交響曲。1楽章(track.12)、冒頭の、あの啓示的な出だしは、印象的なポルタメントで、今まで感じたことの無いような、切なげな、メロドラマチックな感覚に染まり... そんなキャッチーさが新鮮で、ゾクっとすらくる。
1番の交響曲というと、厳めしいイメージが先行するのだが、イヴァン+ブダペスト祝祭管のアプローチは、そういう厳めしさをさらりとかわしてみせて、やはり歌ってしまう。ブラームスが長い時間を掛けて織り上げた、重厚な交響曲に散らばる、歌謡的なセンスを目ざとく見つけ出し、取り出して、歌でつないで、これまで味わったことのないメロドラマチックな世界を展開していく... いや、この交響曲に、こういうテイストが成り立ち得るのかと、驚かされ... それは、懐かしいようでもあり、かつ、間違いなく新鮮で...
イヴァンならではのセンスに導かれ、ブダペスト祝祭管の器用さ、巧さが紡ぎ出すサウンドというのは、たとえ泥臭くとも、多少チープに歌ったとしても、そこに響くものは、昇華された姿だった。最新盤、ブラームスでも、そうした感覚があって、メローなハンガリー舞曲から、見事にハイドンの主題の変奏曲、1番の交響曲とつなぎ、ブラームスの「歌」を掬い上げる。厳めしいブラームスのポートレートに隠れていた「歌」を、確かなテクニックと、研ぎ澄まされた感性で探り当て、独特なブラームスを展開してみせた演奏は、実に興味深く、印象深く、何より魅惑的だ。

Brahms Symphony no. 1 Variations on a theme by Haydn
Budapest Festival Orchestra Iván Fischer


ブラームス : ハンガリー舞曲 第14番 ニ短調 〔イヴァン・フィッシャー編〕
ブラームス : ハイドンの主題による変奏曲 Op.56a
ブラームス : 交響曲 第1番 ハ短調 Op.68

イヴァン・フィッシャー/ブダペスト祝祭管弦楽団

CHANNEL CLASSICS/CCS SA 28309




ガーディナー+ORR、だからこその"ピリオド"ブラームス...

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ジョン・エリオット・ガーディナーが、19世紀仕様のピリオド・オーケストラ、オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティク(以後、ORR)を久々に起用して挑む、ブラームスの交響曲のシリーズ。ノン・ヴィブラートでポタメント?!に驚かされた1番(Soli Deo Gloria/SDG 702)に始まり、多少、新鮮味に欠けたか?2番(Soli Deo Gloria/SDG 703)があっての最新盤、3番。ここに来て、やっと、ガーディナーらしさを見出せたか?そんな感覚がある。
1楽章(track.6)の冒頭から、キレ味、鋭い、"ピリオド"ならではの、ORRならではの、弦楽セクションのスタイリッシュな響きに魅了されずにいられない。そう、これがガーディナー!この感覚を求めていたんだ!と、嬉しくなってしまう。エキセントリックでおもしろかったが、戸惑いを覚えた1番... エキセントリックさが後退し、消化不良な思いをした2番... の印象を断ち切って、かつての、ガーディナー+ORRがもたらしてくれたエキサイティングな音楽体験を、再び呼び起こす。
ストイックなほどの透明感... その透明感から、徹底的に音楽を読み解いて、ステレオ・タイプをばっさり斬り捨てるガーディナーの明晰さと大胆な感性。どんな名曲でも、ガーディナー+ORRの手に掛かれば、一皮剥けて、初々しい姿を曝すことに。もちろん、ブラームスの3番の交響曲(track.6-9)も、そんな憂き目にあう。いや、なんと瑞々しいこと!ブラームスの他の交響曲に比べると、明快で、キャッチー(特に、3楽章... )だが、ややチープにも感じていた3番だが、そこに、何とも言えない若々しさ(と言っても、ブラームスはすでに若くはなかったのだが... )を見出すようで、特に、3楽章(track.8)のメランコリックでメローなあたりのナイーヴさは、ポジティヴにチープなテイストを受け入れて、これまでにないピュアな輝きを放つよう。3楽章ばかりでなく、終楽章(track.9)の猛々しいあたりも、ただならずフレッシュで、驚かされる。
長い時間、愛され続けたことで、より多くの人の思いを、知らず知らずの内に抱え込んでしまった作品を、もう一度、作曲された当時の、ピュアな姿に戻そうとしたのがピリオド・アプローチ... すっかり"ピリオド"に慣れてしまって、そんな原点を、どこかで忘れていたのか?ガーディナー+ORRの演奏を聴いて、もう一度、ピリオド・アプローチというものを再確認する思い。そんな、ブレないガーディナーの"ピリオド"は、クール!それでいて、ブームなんてものを超えて、すでに普遍的なオーラを放つかのよう。いや、こういうガーディナーを、もっともっと聴きたい!
さて、ガーディナー+ORRのブラームスのシリーズ、これまで同様、交響曲とともに、ブラームス(のみならず、ブラームスが影響を受けたシューベルト、メンデルスゾーン... )の合唱曲も収録され、このシリーズの欠かせない魅力になっていたのだが。その合唱曲を歌う、ガーディナーのコーラス部隊、モンテヴェルディ合唱団もまた、これまでと違って、かつてのクリアな感覚を取り戻しているようで。モンテヴェルディ合唱団ならではの透明感で、無伴奏の合唱曲などを歌われると、やっぱり凄い!
となれば、シリーズ完結編、次が、たまらなく楽しみに!

Brahms Symphony 3 Gardiner

ブラームス : 私は角笛を苦しみの谷で鳴らす 『5つのリート』 Op.41 より 第1曲 *
ブラームス : ハープは鳴り響く 『2つのホルンとハープの伴奏による女声合唱のための4つの歌』 Op.17 より 第1曲 *
ブラームス : 夜警 「静かな胸の音」 『5つの歌』 Op.104 より 第1曲 *
ブラームス : もの憂い恋のうらみ 『13のカノン』 Op.113 より 第13曲 *
ブラームス : 運命の女神の歌 Op.89 **
ブラームス : 交響曲 第3番 ヘ長調 Op.90 *
ブラームス : 悲歌 Op.82 **

モンテヴェルディ合唱団 *
ジョン・エリオット・ガーディナー/オルケストル・レヴォリューショネル・エ・ロマンティク *

Soli Deo Gloria/SDG 704




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