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20世紀、モードを外れて... [2009]

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昨年の、生誕90年で、じわじわっと注目を集め始めた?20世紀、ドイツの作曲家、ベルント・アロイス・ツィンマーマン(1918-70)。ECMからリリースされた、ヴァイオリン協奏曲(ECM NEW SERIES/476 6885)を聴いて、ビターなモダン・サウンドにシビレてしまったのだが...
そのツィンマーマンによる、オーボエのコンチェルトが聴ける!?ということで、手に取ったアルバム。バイエルン放送交響楽団の首席オーボエ奏者、シュテファン・シーリが、そのバイエルン放送響のサポートを受けて、マルティヌー、ツィンマーマン、リヒャルト・シュトラウスのオーボエのコンチェルトを取り上げる、何気に凝った、20世紀、オーボエと小管弦楽のための協奏曲集(OEHMS CLASSICS/OC 737)を聴く。

まずは、ツィンマーマン... のはずだったが、1曲目、マルティヌーのオーボエと小管弦楽のための協奏曲(track.1-3)に、ノック・アウト。ポップに、色彩豊かに、ポジティヴな気分が溢れる冒頭は、まるでアフリカン?この作曲家の、唯一無二とも言えるセンスには、十二分に魅了されているはずだったが、また新たなマルティヌーの魅力に出会ってしまったようで、予想外にワクワクさせられる。そのライトな感覚は、モダンの匂いも漂わせつつ、フュージョンの先駆け的な雰囲気すらあって、軽やかで、やわらかで、耳に心地よく、オーボエの明るい音色がさらに活きてくる音楽...
1955年の作品だが、その当時、すでに新(擬)古典主義は過去のものとなり、音列音楽がモードとなっていたことを考えれば、相当に浮いていた作品のはず。しかし、その浮き方が、突き抜けている!さらに、音列音楽というモードも、すでに過去となった21世紀から、その浮いていたであろう音楽を見つめれば、時代感覚を伴っていない分、驚くほど新鮮なサウンドとして今に響く。それは、まったく不思議な感覚で。今を以ってしても突き抜けている。間違いなく"クラシック"でありながら、そうとばかりも言えない、カテゴライズに戸惑うサウンド。いつの時代のものなのか?どこの国のものなのか?ただならず、幻惑させられる。
そして、お目当てのツィンマーマン、オーボエと小管弦楽のための協奏曲(track.4-6)。こちらは、まさにモダン。20世紀の臭いがしっかりとしてくる。のだけれど、1952年の作品。となれば、「前衛」ではなく「モダン」というセンスに、多少の時代遅れ感があったかもしれない。が、マルティヌー同様に、返って、時代に流されなかったツィンマーマンの個性を、しっかり感じることができ、その魅力に改めて感じ入る。さらに、この作品、ストラヴィンスキーを引用していて、なかなか興味深く...
その1楽章は、「オマージュ・ア・ストラヴィンスキー」というタイトルが付され、ストラヴィンスキーのハ調の交響曲、1楽章が引用される。ドライなストラヴィンスキーの音楽を巧みに引き入れて、ツィンマーマンならではのビターさではなく、飄々とした「モダン」を展開。終楽章は、どうもストラヴィンスキーの、管弦楽のための4つの練習曲の1曲目、「踊り」(そのスットボケっぷりがいい味出しまくりの小品!)に似ている?で、ユーモラス!オーボエの明るい音色が、調子外れの道化を思わせるような、おもしろさ。けれど、ダークな色合いはツィンマーマンならでは。ポジティヴなマルティヌーの後で、このシニカルな感覚がたまらない。
そこから、一転、美しい情景が開けてゆく... そのクラシカルな美しさに、息を呑む。
それまでが、それまでなだけに?
1945年、第2次世界大戦が終わり、その惨禍を目の当たりにしたリヒャルト・シュトラウスが、現実逃避をするかのように作曲した、オーボエと小管弦楽のための協奏曲(track.7-10)。とても20世紀とは思えない音楽... 夢見心地で、18世紀を、モーツァルトをリヴァイヴァルするかのような... が、その美しさは抗し難く。また、シュテファン・シーリの伸びやかなオーボエが、リヒャルト・シュトラウスならではのセンチメンタルを、やわらかなメロディを、どこか天国的な、浮世離れした感覚を、やさしげに捉え、印象深く。2楽章などは、心に染み入るよう。また、ヤンソンス+バイエルン放送響の演奏も見事!シーリのオーボエにそっと寄り添い、時に話し掛けるような木管セクションが印象的で。シーリは間違いなくソリストだが、バイエルン放送響という家族にそっと抱かれているような、親密な気分に充ちていて、温かいアンサンブルも魅力的。どうも、マルティヌー、ツィンマーマンと、音楽のインパクトについつい耳がいきがちだったが、アルバムの締め、リヒャルト・シュトラウスでは、美しい音楽とともに、その美しい演奏が、耳に残る。
それにしても、おもしろいアルバム!第2次世界大戦の終結から10年間、モードからは外れるオーボエのコンチェルト、3曲。「前衛」が支配的になる中で、それぞれに際立った個性を聴かせる3作品は、それぞれ全く違うトーンの3作品であり。が、ひとつにまとめて、その多彩さ、コントラストで、フルに楽しませてくれる。こういうアルバムを編んでくるセンスも見事。

Stefan Schilli Oboe Concertos

マルティヌー : オーボエと小管弦楽のための協奏曲 H.353
ツィンマーマン : オーボエと小管弦楽のための協奏曲
リヒャルト・シュトラウス : オーボエと小管弦楽のための協奏曲 ニ長調 AV 144

シュテファン・シーリ(オーボエ)
マリス・ヤンソンス/バイエルン放送交響楽団

OEHMS CLASSICS/OC 737




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