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アンダンテ・スピアナートと、華麗なる... ショパン・メモリアルへのプレリュード。 [2009]

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生誕、200年... 来年のショパン(1810-49)のメモリアルに向けて、着々と準備が進められているクラシック・シーンだが、その中でも特に気合が入っているのが、ショパンの家元(?)、ポーランド、国立ショパン協会。ショパンが生きた時代のピアノを用いて、ショパンの全作品を録音するというプロジェクトを進行中。さすがはメモリアルならではのプロジェクト!なのだが、"ピリオド"というフィールドで、ショパンの家元、自らが仕掛けてくる、その大胆さに驚かされる。完成されたならば、音楽史に残る快挙だろうが、相当の英断があったことだろう。果たして、ショパン・ファン(保守的傾向が強い?)が求めるものに、適うのだろうか?
という心配はさておき、その第9弾、2つのピアノ協奏曲以外の、ピアノと管弦楽のための作品集(Narodwy Instytut Fryderyka Chopina/NIFCCD 009)。ダン・タイ・ソンが弾いた、2つのピアノ協奏曲(Narodwy Instytut Fryderyka Chopina/NIFCCD 004)同様、フランス・ブリュッヘン率いる18世紀オーケストラの演奏で。このプロジェクト、2度目の登場となるアルゼンチンのピアニスト、ネルソン・ゲルネルのピアノ。エラール、1849年製で聴く。

正直言うと、ショパンの2つのピアノ協奏曲は苦手である。なんかこう、演歌っぽいテイスト?それと、薄いオーケストレーション。というのか... もちろん、すばらしい演奏に出会えれば、また違う印象も受けるのだけれど、自ら進んで聴きたいとは思わないコンチェルト。だったが、国立ショパン協会による全曲録音、最初のリリースに登場した、ダン・タイ・ソンが弾く2つのピアノ協奏曲(Narodwy Instytut Fryderyka Chopina/NIFCCD 004)は、ショパンのステレオ・タイプを覆して、その雄弁なサウンドに、衝撃を受ける。"ピリオド"の繊細さを打ち破るような、ブリュッヘン+18世紀オーケストラの見事な演奏が、ショパンの音楽を違う次元へと導くかのようだった。となれば、その続編となる、ピアノと管弦楽のための作品集も、期待は募る!のだが... また違う世界を見せて、魅了されずにいられない、ピアノと管弦楽のための作品集。それは、ピアニスト、ショパンが活躍した、華麗なる19世紀を垣間見るよう。
まず、ネルソン・ゲルネルのピアノが、思いの外、すばらしく、その美しい響きに、ただただ惹き込まれる。けして"ピリオド"系のピアニストというわけではないはずだが、1849年製、エラールのピアノに真摯に向き合い、無理をせずにひとつひとつの音を丁寧につないでゆく。やはり、"ピリオド"系のピアニストとは一味違うタッチなのか?"ピリオド"に踏み込むからの慎重さも滲ませつつ、ショパンの時代のピアノを通じて、ショパンへと戻ろうとするゲルネルなりのオリジナル主義は、何とも言えない初々しさがこぼれ出す。ゲルネル本人も、ショパンと繋がる感覚に、ドキドキするものがあったのではないだろうか?多少の不安もありつつ、相手にときめくような、甘酸っぱい心地?ナイーヴな心模様?そんなことをつい想像してしまう、ゲルネルのピアノは、出足から、たまらなく美しいのです。
"ピリオド"のピアノの特性が出て、響き過ぎない控え目な中でのショパンは、小さな宝石の粒が、キラキラ輝きながら、散らばってゆくよう。1曲目、ポーランド民謡による大幻想曲、ブリュッヘン+18世紀オーケストラの演奏に導かれて、ゲルネルがなぞるショパンの紡ぎ出す音符の連なりは、木漏れ日を受け、キラキラと輝く小川の流れのよう。その情景に息を呑む。そして、たまらなく心地良い。音楽は、やがて「ポーランド民謡」の力強さ、軽やかでキャッチーなあたりも聴かせ、楽しませてくれる。
そして、ゲルネルのピアノが、さらに魅力を増すのが、2曲目、「奥様、お手をどうぞ」の主題による変奏曲(track.2-9)。芸術音楽としてよりも、ヴィルトゥオージティがきらめく"変奏曲"は、ショパンの生きた時代、多くの聴衆を賑わしたであろう音楽シーンを垣間見るようで。その、まさに19世紀な感覚に、魅了されずにいられない。ゲルネルのピアノは変わることなく初々しく、瑞々しい一方で、技巧派としての側面を如何なく発揮し、見事!次から次へと、目まぐるしく変奏されてゆくモーツァルトのテーマを、軽々と弾きこなし、スリリングでもあり、ヴィルトゥオーゾに熱狂した時代の記憶を追体験する。また、最後、アラ・ポラッカ(track.9)として、モーツァルトを自分のフィールドに引き入れて、自慢気なショパンの姿も、何ともラヴリーで...
それにしても、なんと華麗な!それでいて、何とも言えない初々しさがあって、ナイーヴで、ゲルネルの確かなテクニックがあって。ブリュッヘン+18世紀オーケストラの演奏も、もちろんすばらしいのだが、2つのピアノ協奏曲の時とは違って、ピアノのすばらしさがまず耳に入ってくる。ショパンの作品ならば、当たり前のことなのだが、ゲルネルのピアノで聴けば、よりピアノという楽器が印象深く、心に届くよう。それでいて、ピアノという楽器そのものの魅力を再確認していくような、そんな感覚すらある。
で、もっと、ゲルネルのショパンが聴きたい!

Chopin For piano and orchestra Nelson Goerner/Frans Brüggen

ショパン : ポーランド民謡による大幻想曲 イ長調 Op.13
ショパン : オペラ 『ドン・ジョヴァンニ』 より 「奥様、お手をどうぞ」の主題による変奏曲 変ロ長調 Op.2
ショパン : 演奏会用ロンド 「クラコヴィアク」 ヘ長調 Op.14
ショパン : アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22
ヴィビツキ : ポーランド国歌

ネルソン・ゲルネル(ピアノ : 1849年製、エラール)
フランス・ブリュッヘン/18世紀オーケストラ

Narodwy Instytut Fryderyka Chopina/NIFCCD 009




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