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メンデルスゾーン、メモリアルのディスカヴァリー。 [2009]

ヘンデル、生誕250年。ハイドン、没後200年。そして、メンデルスゾーン、生誕200年。
と、何度、書いてきただろうか?なんても振りかえってしまうのだけれど、たっぷり楽しんできた2009年のメモリアル。11月に入り、2009年も押し迫ってくれば、何気に寂しさもあったり。そんな2009年、最も聴いた(ここで記事になった)のはハイドン、次がヘンデル... どういうわけか、メンデルスゾーンに触れる機会が少なかった。が、個人的には、メンデルスゾーンが、一番、好きかもしれない。
音楽史きっての優等生、作曲家としては珍しく「おぼっちゃま」というあたりが、曲者揃いの"クラシック"において、若干、インパクトに欠ける帰来はあるが、瑞々しさ未だ失わないロマンティシズムと、しっかりとした構造、洗練された感性が紡ぎ出す端正な音楽には、いつも魅了されるばかり。そんなメンデルスゾーンを再発見するアルバムを2枚。かつて、メンデルスゾーンが率いたオーケストラ、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団が、21世紀、シャイーに率いられ、メンデルスゾーンをディスカヴァリーするアルバム(DECCA/478 1525)と、弦楽のための交響曲も含めた、全ての交響曲を網羅するメンデルスゾーンのシリーズに取り組む、ファイ+ハイデルベルク響による第4弾(hänssler/98.547)を聴く。


シャイー+ゲヴァントハウス管、新たなメンデルスゾーンの世界へ...

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リッカルド・シャイーが、ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ響と取り組んだ注目のシリーズ、"DISCOVERIES"。ロッシーニ(DECCA/470 298-2)、ヴェルディ(DECCA/473 767-2)、プッチーニ(DECCA/475 320-2)と、新発見、世界初録音で、イタリア・オペラの巨星たちの、これまで知られてこなかった興味深い一面を取り上げて、興味深かった... そして、今年、メンデルスゾーン・メモリアル。かつてメンデルスゾーンが率いたライプツィヒ・ゲヴァントハウス管のカペルマイスターとなったシャイーが、メンデルスゾーンの家元(?)とも言えるオーケストラで、再びディスカヴァリーする。
いつもの3番の交響曲、「スコットランド」ではなくて、ヴィクトリア女王に献呈するにあたり、1842年(作品が完成された年)に改訂されたロンドン版(track.1-4)。さらに、その冒頭のスケッチ(track.5)も。2006年、ブファリーニによって完成された3番のピアノ協奏曲(track.6-8)。ホグウッドが進めてきたメンデルスゾーンの序曲の校訂による、1830年、ローマ版(一般的に演奏されるのは1832年に完成、初演された版... )での序曲「フィンガルの洞窟」(track.9)。と、興味深いディスカヴァリーが並ぶ。のだが、おおっ!?と、驚くほどのディスカヴァリーはないのかもしれない。例えば、「スコットランド」で、「フィンガル... 」で、大きな違いを見つけようと思っても、難しい... よくよく聴けば、ん?違うぞ... ともなるのだけれど、そのディスカヴァリーに、大いに刺激を受けたかと言えば、なんとなく肩透かし喰らう。が、1曲目、響き出すシャイー+ゲヴァントハウス管の演奏には、おおっ!?となる。そこに響く「スコットランド」は、ちょっと、独特。
透明感を増せば増すほど、その音楽の凄さに思い知らされるのがメンデルスゾーン作品... だが、ざっくりとまとめて、スコットランドの荒々しさを吹き込んで、アグレッシヴに仕上げてきたのがシャイー+ゲヴァントハウス管の「スコットランド」。作品のよりロマンティックなあたりを、予想外(?)に力強く、豊かに響かせつつ、瑞々しさは失わない。それは、ターナーの風景画を思わせるようで... きっちりと描き込まれた美しい風景画とは違う、スコットランドの荒ぶる気質に色と動きを与えたような、ダイナミックさが魅力的。すると、「スコットランド」からは、これまでとは違う雄弁さが溢れ出し、その先にあるブラームスの交響曲のような重厚感(ブラームスのようなくどさはないが... )も味わうようで、興味深く。ディスカヴァリー、最大の発見は、雄弁な「スコットランド」の新鮮な様か?いや、これこそが"ロンドン版"の魅力?
一方、「フィンガルの洞窟」は、いつもの(1832年版)が交響詩的ならば、より序曲的な印象を受ける1830年、ローマ版。聴き慣れた... ということもあるかもしれないが、より練られた「いつもの」の方が、据わりが良いように感じてしまう。けれど、そこから外れてゆくところに少しハラハラさせられて、ちょっぴり刺激的。

MENDELSSOHN Symphony No.3/Piano Cto No.3/Hebrides Overture
PROSSEDA/GEWANDHAUSORCHESTER/CHAILLY

メンデルスゾーン : 交響曲 第3番 イ短調 Op.56 「スコットランド」 〔1842年改訂、ロンドン版〕
メンデルスゾーン : 交響曲 第3番 冒頭のスケッチ
メンデルスゾーン : ピアノ協奏曲 第3番 ホ短調 〔マルチェロ・ブファリーニ補完版〕 *
メンデルスゾーン : 序曲 「ヘブリディーズ諸島(フィンガルの洞窟)」 Op.26 〔1830年、ローマ版〕

ロベルト・プロッセダ(ピアノ) *
リッカルド・シャイー/ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

DECCA/478 1525




ファイ+ハイデルベルク響、メンデルスゾーンの時代へと振り返れば...

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今年になってスパートが掛かった、ファイ+ハイデルベルク響のメンデルスゾーンの交響曲のシリーズ... 春に弦楽のための交響曲集、第3弾(hänssler/98.536)が。そして、ここで取り上げる第4弾。「スコットランド」をメインに、すでに第5弾(hänssler/98.552)もリリースされていて、まもなく、大作、「賛歌」を取り上げる完結編(hänssler/98.577)もリリース予定。メンデルスゾーン・メモリアル、2009年内に、なんとか間に合う様子。シリーズ完遂が楽しみ!なのだが、その前に、第4弾。5番の交響曲、「宗教改革」(track.1-4)に、弦楽のための交響曲、5番(track.5-7)、6番(track.8-10)、10番(track.11)というラインナップ。
それにしても、シャイー+ゲヴァントハウス管の演奏の後で聴くと、その"ピリオド"色はより際立ち... いや、その個性が突き刺さってくるようでもあり、相変わらず刺激的だ。一応、モダンとピリオドによるハイブリット編成ではあるはずだが、より"ピリオド"へと向かいつつあるような、そんな感触もある。そうして生み出される「宗教改革」のサウンドは、タイトでアグレッシヴ!そして、ファイ+ハイデルベルク響ならではの「やんちゃ」があって、クリアさよりも、大胆さ(?)が重視され、メンデルスゾーンの音楽にとてつもない推進力を与え、ハイテンションな「宗教改革」に仕上がる。
どうも、「スコットランド」、「イタリア」に比べると、「宗教改革」には地味なイメージが付きまとう。が、大好きな交響曲のひとつ... 引用されるルターのコラールが大好きでして、この真っ直ぐで、かつキャッチーなメロディが、交響曲の中で、終楽章(track.4)で、象徴的に鳴り響く様は、印象深く... しかし、ファイ+ハイデルベルク響は、それすらハイテンションで、スカっと決めてくる。1830年の、宗教改革300年に向けて準備された交響曲だが、そうした背景の重々しさとは切り離して、音楽そのものと格闘し、より刺激的な音楽を追求しようとする、ファイの攻撃的な姿勢が凄い。またハイテンションだからといって、単に快足なだけでなく、十分にドラマティックで、シャイー+ゲヴァントハウス管に負けず、ダイナミックでもある。地味なんて言わせない、一皮剥けた「宗教改革」が展開される。
ファイのアンファン・テリヴルぶりと、メンデルスゾーンの端正であり、そればかりでない音楽が、いい具合に共鳴し、この作曲家のレッテルとも言える「優等生」、「おぼっちゃま」なあたりは完全に払拭され、スリリングにして圧巻!一方で、より"ピリオド"色を強めた(?)、ファイの指向が、この作曲家の古典的な性質をこれまで以上に詳らかとし、さらには、バッハを復活させた作曲家の、並々ならぬ音楽史へのリスペクトを垣間見せるようなところもあり、興味深い。で、前々作の「イタリア」よりも、充実した音楽があって、改めてファイ+ハイデルベルク響のメンデルスゾーンに魅了されてしまう。
ところで、忘れてならないのが、弦楽のための交響曲。ハイデルベルク響の、キレ過ぎるほど鋭い弦楽セクションには、いつもながら息を呑む... そうして紡がれるメンデルスゾーンの習作は、この作曲家のスリリングさを、剥き出しにするようで... メンデルスゾーンは、間違いなく、クールだ!

F. Mendelssohn-Bartholdy Symphony No. 5 ・ String Symphonies Nos. 5, 6, 10

メンデルスゾーン : 交響曲 第5番 ニ長調 Op.107 「宗教改革」
メンデルスゾーン : 弦楽のための交響曲 第5番 変ロ長調
メンデルスゾーン : 弦楽のための交響曲 第6番 変ホ長調
メンデルスゾーン : 弦楽のための交響曲 第10番 ロ短調

トーマス・ファイ/ハイデルベルク交響楽団

hänssler/98.547




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