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10月、広過ぎる"クラシック"の隅っこを、ウロウロする。 [overview]

秋の気配は日に日に深まり、しっとりと"クラシック"でも聴きたくなる10月...
なんて、悠長なことを言っていられる余裕無し。夏にリリース(場合によっては春... )されたアルバムを、ようやく聴くに至り。そして、ここに書くに至り。新譜を追って、追いきれなくて... という状況が、より鮮明に。先細りの"クラシック"レコード業界とはいえ、よくよく目を凝らせば、何かとリリースは盛りだくさん(?)、どれもこれもおもしろそうで。そうした、ひとつひとつを追い掛けている内に、なかなか先に進めず、夏のものを今頃... という有様。で、今年も、何気に押し迫りつつある中で、当分、こんな状態が続きそう。
ということはともかく、どれもこれもと、広過ぎる"クラシック"の隅っこを、ウロウロし過ぎたか?そんなラインナップ。10月に聴いた、11タイトルは...

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10月、振り返ってみれば、現代音楽三昧。いや、これまで、現代音楽を溜め込んできた... とも言えるのだけれど。しかし、"ゲンダイオンガク"の主流からは外れる?ラインナップで、その分、どれも個性的で、印象に残るものばかり。思いの外、楽しんでしまう。
まずは、気鋭のヴィオリスト、デジャルダンによるマヌリのパルティータIが強烈で。独奏ヴィオラとエレクトロニクスによるサウンドのせめぎ合いが、激しくスパークして、そのクールさに、しびれてしまう。で、フィリップ・マヌリはおもしろい!なんて、今頃、気になり出したり。本当は、もうひとつの収録作品、『肖像のための断章』を演奏する、現代音楽のスペシャリスト集団、マルッキ+アンサンブル・アンテルコンタンポランのスーパー・プレイを期待して手に取ったアルバムだったのだけれど...
ところで、『肖像のための断章』。20世紀イギリスを代表する画家、フランシス・ベーコンの『ベラスケスの、教皇、イノケンティウス10世の肖像による習作』(1953)にインスパイアされていること。で、この作品で思い出す現代音楽作品がもうひとつ... ターネイジの『3人の叫ぶ教皇』。絵画にインスパイアされた音楽作品というのは、いろいろあるが、現代美術からそう遠くないフランシス・ベーコンの作品が、マヌリ、ターネイジと、現代音楽の異才たちに影響を与えていることが興味深く。それだけのインパクトを持つフランシス・ベーコン作品に、改めて触れてみたくなる思いも。そろそろ、大規模な回顧展、日本でもあっていいような。
さて、音楽のみならず、作品の放つメッセージも含めて、ズシリと重みを感じさせられたのが、フィリップ・グラスによる『コヤニスカッツィ』のサウンド・トラック。とうとうリリースされたオリジナル完全版。1982年に公開された、ゴッドフリー・レッジョ監督による伝説のドキュメンタリー映画、この映像作品が観衆に突き付ける無言のメッセージ... 環境問題、それと表裏一体の近代社会への疑義は、四半世紀が過ぎた今なお、何ら古さを感じさせず。というより、我々は、21世紀になってもまだ、問題を改善することすらままならない状況であることを思い知らされる。ならば、今こそ、再公開されてもいいような。

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そして、10月、最も印象に残る1枚が、ヴィオラの異才、アルメニア系アメリカ人、キム・カシュカシアンの最新盤、『川よ』。現代音楽のフィールドから、アルメニア、ユダヤのデリケートな問題に音楽で寄り添い、現代音楽でありながら、現代性をぼかし、懐かしいトーンで綴る秀逸なアルバム。先日、トルコの大統領とアルメニアの大統領が並んでサッカーの試合を観戦したというニュースを目にしたが、深い傷跡を残すトルコとアルメニアの関係も、和解へと一歩を踏み出したのか... 離散、オスマン・トルコによるジェノサイドと、歴史に翻弄されたアルメニアの人々。その苦難を受け入れ、全てを達観してしまうような『川よ』に編まれた音楽は、21世紀に独特のやさしさを見せる。苦難を味わったからこその他者へのやさしい眼差しというのか、カシュカシアンのヴィオラは、ただならない癒しを聴く者に与えてくれるよう。
とはいえ、21世紀、中近東の問題は解決から程遠く... 音楽のみならず、政治の上でも、今こそ他者へのやさしい眼差し、悲しみへの想像力が求められているはず。なのだが。
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そして、これもまた印象に残る1枚... 日本人だからこそ、インパクトも増大したか?鬼才、ペーテル・エトヴェシュのサウンド・スケープ『夢の橋を渡って』。あの『更級日記』を、現代に、英語に、読み下した異色の作品。その、何とも言えない感触に、初めこそ戸惑ったが、壁を一枚突き破ると、その淡く独特の世界にただただ魅了されてしまう。不思議と日本の、平安の風景が広がり、独特の心地よさがたまらないのだ。エトヴェシュというと、ユンゲ・ドイチェ・フィルを指揮しての『春の祭典』が印象深く、作曲家よりも、指揮者としての仕事に興味があったり... だったが、この作品に触れて、作曲家、エトヴェシュを見直してみたり...
そして、サウンド・スケープの発展した形となるのか、エトヴェシュによるもうひとつの『更級日記』、オペラ『レディ・サラシナ』を、日本でも見てみたいなと。
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さて、もうひとつのサウンド・スケープ... パーヴォ・ヤルヴィ+ドイツ・カンマーフィルによる、ベートーヴェンの「田園」も、印象に残る1枚で。いや、広過ぎる"クラシック"の隅っこを、ウロウロし過ぎたからか、"クラシック"ど真ん中なあたりに、安堵感すらあって... けれど、やはりただならないパーヴォ。聴き知った「田園」も、なかなか興味深く聴かせてくれる。その風景の広がり方に、感動してしまう。"クラシック"であるとか、交響曲であるとか、さらには音楽であるとか、そういう枠組みに囚われず、ニュートラルに田園風景を捉えていくパーヴォの姿勢は、映像の時代、現代を生きる人間ならではの感性だったか?その感覚に共感を覚えずにいられない。また、6番、「田園」と、2番のコントラストが見事で。美しい映像的な風景の後で、スカッと、古典派の端正な「交響曲」を弾ませてくるセンスにも惹き込まれるばかり。

さて、話しを変えまして、近頃、気になるものをいくつか...
まずは、『オバマ・クラシック』(avex-CLASSICS/AVCL 25449)。オバマ大統領の演説に、BGMとしてクラシックを流し、演説の後にも流し、聴く者を高揚させる?みたいな、そんなアルバムとのこと。仕掛けたのはゲッベルス宣伝相?ではなくて、avex-CLASSICS。タワーレコードで目にして、びっくりする。いや、こういう商売もあるのねと、カンシンしてしまう。あまりに思い付き的なアイディアが、形になってしまうのだから、凄い。
そうそう、harmonia mundiのサイトがリニューアル。で、そのヴィジュアル、"クラシック"にしては実にクール!やはり、見た目も大切だよな... なんて呟いてしまう。
いや、中身も大切!
当blog、随分と前に書いた文章を読み直す機会があって、ゲっ!?と思う。我ながら、何を書いているのかよくわからん文章。そういうものを晒していることに軽めに恐怖感。そして、ため息。
で、それから、どれほど成長したのだろうか?




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