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突っ走って... 第九。 [2009]

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鬼才、トマス・ダウスゴーと、彼が率いる気鋭のオーケストラ、スウェーデン室内管弦楽団による、"the complete orchestral works of ludwig van beethoven"のシリーズ。とうとう、第九が登場!
交響曲、協奏曲、管弦楽曲と、丁寧にベートーヴェン作品を網羅してのvol.10。9年掛けて、9つの交響曲が完結したわけだが、まだ、ヴァイオリン協奏曲、5番のピアノ協奏曲あたりが残っていて、"complete"というあたりの行方が、ちょっと気になる。のも、次第にリリースの間隔は伸びてゆき、前作、vol.9から、一年置いてのvol.10のリリースだっただけに、今後、どうなるのだろうか?
という、先の話しは置いといて、とうとう、ダウスゴー+スウェーデン室内管による第九(SIMAX/PSC 1283)を聴くことに。待ってました!が、はてさて、困ってしまって。この第九、どう、聴くべきなのか...

"the complete orchestral works of ludwig van beethoven"... このシリーズも、スタート当初は、「ベーレンライター版」を高らかに謳い、また、モダン楽器とピリオド楽器のハイブリットによる演奏ということで、話題を集めたが、時代の流れはあまりに激しく、改まって「ベーレンライター版」を強調することもなくなり、モダン+ピリオドのハイブリットによる演奏も、珍しくはなく... 斬新極まりなかったシリーズも、今では、シーンの中で埋没気味?それより、ダウスゴー+スウェーデン室内管は、ベートーヴェンよりも時代を下った、ロマン主義の時代の作曲家を取り上げて、気を吐いた"Opening Doors"のシリーズが強い印象として残り... 果たして、彼らのベートーヴェンは、どうなってしまうのだろうか?というところに、9曲目の交響曲として、第九をリリース。それは、ちょっと、自棄?とも思えるような、突っ走りようで、面食らう。
いや、ピリオド指向、オリジナル主義による第九は、これまでもそうした演奏は多いし、それらと同じような収録時間でもあるのだけれど、どこか、より、息せき走っている印象を受ける。それは、第九の後に、祝賀メヌエット(track.5)と、『献堂式』序曲(track.6)までもが収録されているという、詰め込み感もあるようにも思うのだけれど... とにかく、聴き始めるとあっという間に1楽章が終わって、2楽章が始まって、淡々と進められる3楽章から、暴走が止まらなくなるような終楽章へ。で、この暴走ぶりに、面食らう。DRヴォーカル・アンサンブル&合唱団による、その「合唱」の、テンションの高いアバウトっぷり... 時として、歌うというより叫び?で、訳が分からぬ内に、ヒステリック... いや、バーバリスティックなフィナーレを迎えて。茫然とすることに。
が、振り返れば、その暴走こそ、ダウスゴー+スウェーデン室内管によるベートーヴェンの集大成なのかもしれいない。フリーハンドで、走れるところまで突っ走る第九。すると、丁寧に音楽と向き合うのではなく、一気呵成に走り抜けて「歓び」を味わう作品?とも思えてくる第九。となれば、「第九」であるということで、一切、勿体ぶる瞬間が無い第九。一方で、それを実現させるための、ダウスゴーのこだわりはあちらこちらで見受けられ、荒ぶりつつも、丁寧にひとつの音楽世界を編み上げてもいる。そうして面食らうほどの音楽を出現させて来る鬼才。合唱王国、スウェーデンにありながら、ダウスゴーの本拠地、コペンハーゲンから、DRヴォーカル・アンサンブル&合唱団(ダウスゴーが首席指揮者を務めるデンマーク国立響のコーラス)をわざわざ招いたのも、暴走を狙ってこそのものか?一気呵成が生み出す異様さもまた、鬼才の計算。なのかもしれない。例え、聴く側が面食らったとしても...
という、異様な第九の後での、祝賀メヌエット(track.5)というのは、何とも気が抜ける選曲... けど、その作品のユルさゆえに一呼吸置けて。また、そんな作品にも気を抜かないダウスゴー+スウェーデン室内管があって。だからこそ、このオーケストラのキレ過ぎるくらいのエッジの鋭さに惚れ直してみたり。そして、『献堂式』序曲(track.6)... 「献堂式」なんていうタイトルを思えば、十分に思わせぶりに演奏してもいいように思うが、やはり高速。息せき走って行く。軽妙極まるサウンドで、快足なリズムで。そうすれば、元来、この作品が持つ、ポップさは際立ち、テンションはもちろん高く、たまらなく魅力的!

SWEDISH CHAMBER ORCHESTRA ÖREBRO SYMPHONY No. 9 DIE WEIHE DES HAUSES OUVERTÜRE
GRATULATIONS-MENUETT THOMAS DAUSGAARD BEETHOVEN: COMPLETE ORCHESTRAL MUSIC ― VOL. 10


ベートーヴェン : 交響曲 第9番 ニ短調 Op.125 「合唱」 *
ベートーヴェン : 祝賀メヌエット 変ホ長調 WoO.3
ベートーヴェン : 序曲 『献堂式』 Op.124

インゲル・ダム・ジェンセン(ソプラノ) *
リリ・パーシキヴィ(メッゾ・ソプラノ) *
ラルス・クレーヴェマン(テノール) *
カール・マグヌス・フレドリクソン(バリトン) *
DR ヴォーカル・アンサンブル & 合唱団 *
トマス・ダウスゴー/スウェーデン室内管弦楽団

SIMAX/PSC 1283




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