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モーツァルト、80年代、リヴァイヴァル? [2009]

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内田光子が再びモーツァルトを録音する。
と、聞いて、驚き、そして、今、改めて聴かせてくれる彼女のモーツァルトとはどんな音がするのだろう?と、ワクワクしてしまう。いや、それは、かなりセンセーショナル!
80年代、モーツァルトと言えば、内田光子。だったけれど、時代は、"ピリオド"へ大きくシフトし。モダンのピアノでのモーツァルト演奏も、"ピリオド"の影響を感じさせるものも現れて... "クラシック"におけるビッグ・ネーム、「モーツァルト」にとって、この20年を振り返れば、実は、激動の20年だったように感じる。しかし、そうした様々な動きも、一巡した気配もあり...
そうした中での、内田光子による再びのモーツァルトは、どこか象徴的でもあるような。そんな、内田光子、2度目となる、モーツァルトの23番、24番のピアノ協奏曲(DECCA/478 1524)を聴いてみる。

お気に入りのクリーヴランド管弦楽団で、それも弾き振りで... まさに、今の内田光子が、やってみたいモーツァルトを隅々まで繰り広げての、2つのコンチェルトなのだろう。シューマンを弾き、シューベルトのピアノ作品とじっくり向き合い、ベートーヴェンの後期のソナタに挑み、そして新ウィーン楽派へも至った内田光子というピアニストの20年。あれもこれも、レーベルに言われるがまま、華やかな名曲=売れるものばかり... という路線とは一線を画す、彼女の取り組みは、音楽史の髄の部分をストイックに追及するようで。そのストイックさで、モーツァルト以後、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、そして新ウィーン楽派と、煮詰めるように音楽史を歩んだ道程は、この人ならではの、独特の音楽世界を育み、今となっては、その超越した存在感に、ただならないものを感じてしまう。
例えば、ベートーヴェンの最後の3つのソナタ(PHILIPS/475 6935)や、シェーンベルクのピアノ協奏曲(PHILIPS/468 033-2)、ベルクの室内協奏曲(DECCA/478 0316)での、作曲家や作品ではなく、音楽そのものへの真摯さを感じさせる響き。そうして紡がれる他では味わえないナチュラルさは、12音だろうがなんだろうが、関係なく、見事な音楽の流れを生み、息を呑むばかり... となれば、再びのモーツァルト、ただならないものを聴かせてくれるのでは?と、期待せずにはいられない。のだが...
たっぷりとロマン主義の作品と向き合い、そしてロマン主義の崩壊した先、新ウィーン楽派までもロマンティックに薫らせた内田光子の再びのモーツァルトは、当然ながらロマンティック。まさに、これまでの経験があるからこそ響くモーツァルト。すると、モーツァルトの中に、すでに織り込まれていた、その後の独墺系の音楽のDNAを探り出すようで、興味深く。ベートーヴェン?シューベルト?シューマン?場合によってはマーラー?すら遠くに感じられそうな、そんな感覚も。何より、滑らかで、落ち着いたピアノが印象深く。天真爛漫な内田光子の感性と、モーツァルトの無邪気な音楽が共鳴し、たまらない輝きを発した旧録音とは、大きく異なり、マエストラ・ミツコの風格が音楽に広がる。
が、そのロマンティックさを核とした「風格」が、どこか、堅さや、必要以上の重さを感じさせるところがあって... 悲劇性が濃密に漂う24番の両端の楽章(track.1, 3)や、憂いに満ちた23番の2楽章(track.5)などでは、滅法、そうしたあたりが活きて、魅力的なのだけれど、モードに左右されない、超越したミツコイズムを、これまで堪能して来て、改めて触れる彼女のモーツァルトは、どこかで、何かを意識しているような、そんな感覚も。作曲家や作品からすら自由になれるのが彼女のピアノ... 音楽そのものに真摯に向き合うのがミツコイズム... ならば、20年を経て、モーツァルトへと帰って行くことに、力みがあったのか?80年代、フレッシュで、輝きに満ちた「内田光子」のリヴァイヴァルではなく、80年代の渋めなオールド・スタイルのリヴァイヴァルのようなイメージが強くなる、新録音。
モーツァルトを取り巻く状況が一巡したからこそ、今、ロマンティックな、オールド・スタイルなモーツァルトは、大いにありのように思うが、一巡する前に、圧倒的な輝きを放っていた内田光子であるならば、もっと自由になったモーツァルトを聴かせてくれても良かったように感じてしまう。
のだけれど... 演奏自体はすばらしく、それは、わがままな欲求かもしれないのだが...

Mozart: Piano Concertos 23, K488 & 24, K491
MITSUKO UCHIDA / the cleveland orchestra


モーツァルト : ピアノ協奏曲 第24番 ハ短調 K.491
モーツァルト : ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488

内田光子(ピアノ)/クリーヴランド管弦楽団

DECCA/478 1524




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