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20世紀、アウトローの、21世紀における、クール。 [2009]

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ハイドン、マーラーと来て、ハルトマンを聴く。
なんとなく、独墺系の音楽史の流れを下るようで、いいかなと... ということもあるのだけれど、実は、輸入元の案内にあった、宣伝文句(?)にうっかり乗せられてしまい...
「ドロドロ官能系+軍靴の音ガチガチ+社会派系、ハルトマン節炸裂」って、いったい... どういうこと!?聴かずに、いられないじゃないか... ということで、手に取る、その、炸裂するアルバム。ポール・グッドウィンの指揮で、ドイツ放送フィルに統合される直前のカイザースラウテルンSWR放送管弦楽団の演奏で、何気にベンヤミン・シュミット(ヴァイオリン)も参加していたりの、ハルトマン作品集(WERGO/WER 6714 2)。ドロドロ官能系?軍靴の音ガチガチ?社会派系?なのかは、微妙な気もするのだけれど、ハルトマン節炸裂!は、間違いないなと。そのフリキレ感、ちょっとヤミツキになりそう。

カール・アマデウス・ハルトマン(1905-63)。
というと、マーラーやレーガーの系譜を受け継ぐ人物で、新(擬)古典主義的な指向もあって... ヴェーベルン以後の音列音楽、全盛の、20世紀後半にあっては、「前衛」の陰に隠れてしまって、保守的。一方で、そのサウンドは、まさに骨太... ナチスに毅然と対峙し、屈することの無かった政治姿勢もあって、タフで、ヘヴィーで... 近頃、聴く機会が多いようにも感じる、葬送協奏曲(まさに、ナチスへの抗議の作品)の、重々しいイメージというのが、そのままハルトマンのイメージだったりする。が、1曲目、初めて聴く、ブルレスケ・ムジーク(track.1-4)の、そのあまりにバーレスクなあたりに、ギョっとさせられて...
ヒンデミットの影響を受けたハルトマンだが、ヒンデミット的、新(擬)古典主義的のドライな感覚と、ヴァイマール共和国時代、1920年代を象徴するヴァイルの軽さが乗っかって、「キッチュ」という言葉がドイツ語であることを思い出させてくれるブルレスケ・ムジークは、1931年の作品。バンドとピアノという編成による、飄々とした音楽は、軽薄なレビューの伴奏か?サーカスの道化の伴奏か?死に逝くヴァイマール共和国時代のエッセンスを煮詰めたような感覚があって、キテレツ。よくよく振り返れば、ハルトマンという作曲家について、これまで、あまり知らなかったとも言えるのだけれど、こういう作品も書いていたのかと、驚かされる。
つづく、2曲目、ピアノ、管楽器と打楽器のための協奏曲(track.5-7)は、戦後の作品。すでにノスタルジックな気分に包まれているモダンなセンスに、ジャジーな臭いも漂い、ビターでハードボイルドな佇まいが、今だからこそクールというのか、なかなか魅力的。そして、3曲目、ベンヤミン・シュミットのヴァイオリンで、葬送協奏曲(track.8-11)。4曲目、ヴィオラとピアノのための、管楽器と打楽器伴奏による協奏曲(track.12-14)では、重々しさと、暗さと、時折、現れる鮮烈さと、ハルトマンならではの音楽が展開される。
ところで、そうしたハルトマン作品を指揮するのが、ポール・グッドウィン。ピリオド系のグッドウィンの指揮に、驚かされつつも、なんとも新鮮で... 新(擬)古典主義では、ホグウッドが大きな成果を上げているわけだが、"ピリオド"から繰り出される"モダン"というのは、不思議とその魅力がより活きてくるところがあって。グッドウィン+カイザースラウテルンSWR放送管の演奏は、ハルトマンの新(擬)古典主義なあたりが、小気味よく強調されて、キレの良さが印象的。独墺系の音楽史の伝統をモダンの中に響かせるハルトマン作品だが、彼らの演奏で聴くと、伝統の重力から解放されたハルトマンの姿を見るようで、ヴィヴィット。この作曲家ならではのヘヴィーさも、クールに感じる。
そして、忘れてならないのが、ベンヤミン・シュミットのヴァイオリン。沈痛な葬送協奏曲は、この人ならではのナイーヴさから発せられる艶っぽさで、また独特の香りを放つよう... ハルトマンは、ナチスによるチェコのズデーテン地方割譲(1938)に抗議するために作曲(1939)、フス派(神聖ローマ皇帝=ドイツ王により弾圧されたチェコにおける宗教改革の先駆け... )のコラールを用い、メッセージ性の強い作品となったわけだが、世紀が替わり、ナチスの災禍が歴史となった今、シュミットによる演奏を聴いていると、この作品のヴァイオリン協奏曲としての魅力を再確認する思いも。特に、2楽章(track.9)のアダージョ、終楽章のコラール(track.11)は、シュミットの切なげな美音が活きて、深く、聴き入る。
と、こんな具合に、ハルトマン節炸裂!しつつ、新たな一面も発見するようでもある、グッドウィン+SWR放送管によるアルバム。そうしてハルトマンの音楽に向き合えば、その、20世紀音楽のアウトロー的性格(政治に対しても、音楽のモードに対しても... )が、21世紀には、カッコよく響くようで。この作曲家に、改めて強い関心を抱いてみる

Karl Amadeus Hartmann Concerto funebre

ハルトマン : ブルレスケ・ムジーク *
ハルトマン : ピアノ、管楽器と打楽器のための協奏曲 *
ハルトマン : 葬送協奏曲 *
ハルトマン : ヴィオラとピアノのための、管楽器と打楽器伴奏による協奏曲 **

ヨルク・クローネンベルク(ピアノ) *
ベンヤミン・シュミット(ヴァイオリン) *
エリザーベト・クッフェラート(ヴィオラ) *
フローリアン・ウーリヒ(ピアノ) *
ポール・グッドウィン/カイザースラウテルンSWR放送管弦楽団

WERGO/WER 6714 2




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