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マーラー、予告編。 [2009]

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パーヴォ・ヤルヴィ... 今、最も精力的なマエストロのひとり。
まもなく、第九(RCA RED SEAL/88697576062)がリリースされて、ドイツ・カンマーフィルとのベートーヴェンのツィクルスを完結させるわけだが、hr響とは、ブルックナーの7番の交響曲(RCA RED SEAL/88697389972)を皮切りに、ブルックナーのツィクルスをスタートさせ... 今度は、マーラーに乗り出すと聞いて、驚いてみる。来年(生誕150年)、再来年(没後100年)と、マーラーのメモリアルで賑わうことになるとはいえ、息つく暇なく、次から次へと... なんとアグレッシヴな!何より、メジャー・レーベルが元気を失っている中で、大きなプロジェクトを同時進行させるだけの影響力を持ち得ていることに、このマエストロの末恐ろしさ?というか、これから、その存在が、どう大きくなっていくのか、気になるところ。
そして、パーヴォ+hr響によるマーラーのツィクルス、その始まりは、一筋縄ではいかないアルバム(Virgin CLASSICS/2165762)で...

2番、「復活」の、1楽章へと発展することになる交響詩「葬列」(track.1)に、未完の交響曲、10番の、完成されていた1楽章、アダージョ(track.2)。1番の2楽章として作曲されるも、後に削除された「花の章」(track.3)。3番の交響曲の2楽章を、ブリテンが編曲した「野の花々が私に語ること」(track.4)まで、これまでになく斬新なカップリングで聴かせるマーラー... それは、交響曲の4つの断章を集めて、1つの交響曲を再構成するようなところもあって、なかなか興味深く。何より、断章ゆえに、普段、耳にすることの少ない作品を、ひとまとめに聴けるというのは、得したよう。また、おもしろいのは、マーラーの交響曲の始まりと、終わりが、ひとつのアルバムに収められていること。
マーラー、最後の作品、10番の1楽章、アダージョ(track.2)を、初期の作品、「葬列」(track.1)と「花の章」(track.3)で挟むことで、マーラーの音楽世界の行き着いた先を、強く印象付ける。それでいて、初期の作品の若々しさと、最後の作品ならではの到達感のコントラストが、何とも言えず。こういう聴き方があったか... と、感心させられ。それは、マーラーの人生を、映画の予告編として見るような、そんな感覚もあって、感慨も。パーヴォ+hr響の演奏も、実に魅力的に、そうしたあたりを綴っていて。
1曲目、「葬列」の、その"葬列"でありながらも、若さから繰り出される活き活きとした表情。3曲目、「花の章」の、まるでニーノ・ロータの映画音楽のような、メロディックで、キャッチーなトランペットによる出だし。パーヴォは、駆け出しの作曲家の初々しさをそのままに、ヴィヴィットな音楽を響かせる。巨匠然とすることのない、パーヴォのピュアな感性は、2曲目、10番のアダージョでも活かされ。そのピュアな感性が、驚くほど透明な流れを生み出し、このアダージョにある濃厚さは、すっと消えて、清廉なサウンドが広がり、これまでにない美しさを体験する。その演奏は、このアルバムの白眉!複雑に絡み合う作品の背景、紆余曲折を切り離し、マーラーであることすら切り離し、書き遺されたスコアの音、ひとつひとつを、磨き上げ、結晶としてしまったような、ただならない輝きに、息を呑む。すると、安易なイメージに染まることのない、マーラーそのものが、立ち現われるよう、その姿に、「人生」に対する深い感動が、じんわりと広がっていく。
そうか、これがパーヴォのマーラーなのか...
hr響=旧フランクフルト放送響といえば、インバルとのツィクルスが、マーラー復興に大きな役割を果たしたわけだが、ここに、また新たな、マーラー像の模索が始まったように感じる。そして、この感覚で、マーラーのツィクルスがスタートしたならば、どうなるのだろう?大いに気になる。

さて、ブリテンによる3番の交響曲、2楽章、「野の花々が私に語ること」(track.4)だが...
オリジナルの大規模なオーケストラのサウンドを、少しタイトに絞り、ブリテンならではのヴィヴィットさが盛り込まれていて、オリジナルよりもくっきりとした印象を受ける。マーラーのオーケストレーションには、凄いものがあるわけだけれど、そこに、ブリテンも、すばらしいセンスを効かせていて。それは、「交響曲」などと、勿体ぶらず、まさに「野の花々が私に語ること」といった雰囲気に仕上げられて。ふんわり軽く、どことなくポップ。そのあたり、オリジナルを大切にしながらも、この音楽に籠められていたエッセンスを、マーラー以上に引き出させているようにも思え。よりキャッチーな雰囲気が、魅力的。これが、2楽章に限らず、3番、全曲だったなら、どうだったろう?なんても思う。
それにしても、ブリテンがマーラーをアレンジしていたとは... 新鮮な発見であり、興味深い。

MAHLER - 4 MOVEMENTS - PAAVO JÄRVI

マーラー : 交響詩 「葬礼」
マーラー : アダージォ 〔交響曲 第10番 嬰ヘ長調 より 1楽章〕
マーラー : 花の章
マーラー/ブリテン : 野の花々が私に語ること 〔交響曲 第3番 ニ短調 より 2楽章〕

パーヴォ・ヤルヴィ/hr交響楽団

Virgin CLASSICS/2165762




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