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シューマン、夢の後で... 暁を迎える前に... [2009]

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一筋縄ではいかない絶妙な選曲で、魅力的に「夜」を響かせたヘルベルト・シュフ(ピアノ)のアルバム、"NACHTSTÜCKE"(OEHMS CLASSICS/OC 733)。このアルバムで、シューマンとホリガーについて触れられていて、興味深く感じていたのだけれど... シューマンにインスパイアされたホリガーのアルバム、"ROMANCENDRES"(ECM NEW SERIES/476 3225)がリリースされて... これまで、何となくは聴いていたけれど、きっちり向き合って聴くことのなかったホリガー作品に触れるいい機会かなと、手に取ってみる。

のだけれど、この"ROMANCENDRES"。クララ・シューマンの、チェロとピアノによるロマンス(track.1-3)で始まる。その、ロマンティックな「ロマンス」の、スウィートさは、ただならない... 美しい夢の世界に迷い込んだような、夫、ロベルトとは違う、純真無垢なロマンティッシズム?とでも言うのか。ホリガーのビターなサウンドを思い描いて、このアルバムを聴き始めれば、まったく異なるスウィートさが、返って、インパクトを生むようでもあり... 続く、ホリガーによるロマンス。アルバムのタイトルにもなっているロマンセンドレス(track.4-9)は、やはりチェロとピアノによる作品なのだが、当然ながら、ビターなサウンド。クララのスウィートさの後で、そのビターさが、より引き立ちもし、また薫り立つようでもあって、たまらないものがある。
そこには、「ロマンス」を、一度、壊して、その欠片から、クララとロベルト、さらにはその周りにいた人々、ブラームスなども読み解こうという意図があるのか?凝った構成(国内盤で、ちゃんと解説を読み込めたら、おもしろいのだろうなぁ... なんて、英語のリブレットと格闘。あえなく敗北... )が見受けられ、スリリング。また、そうして生み出された「ロマンセンドレス」のサウンドが、やはりスリリングで。2楽章(という数え方でいいのだろうか?)、"R(asche)S Flügelschlagen"(track.6)の、モダン・ジャズか?薄っすらロックか?なんて、テイストが、クール。新ウィーン楽派、そして音列音楽へ... という"ゲンダイオンガク"の正しい流れを踏襲しつつも、もうひとつ違うフィールドへと踏み出そうとする感覚、孤高の作曲家、ホリガーの魅力に、感じ入る。
そして、その「孤高」なあたりが、美しくも、独特の光を放つ、コーラスとオーケストラ、テープによる暁の歌(track.10-13)が、深い感動をこのアルバムにもたらすようで... それは、シューマンの死を見つめる印象的な作品。ロマンセンドレスからは一転、始まりのコーラスの美しさ、その天国的で、やさしげなハーモニーに、驚きつつ、引き込まれてしまう。シューマン、最後のピアノ作品、暁の歌 Op.133と、ヘルダーリンの詩を素材に、ナレーションと不思議なピアノの音などで編まれたテープが、それらをやわらかにつないで、浮世離れした音楽を紡いでいく。それは、今際のシューマンに浮かんだイメージか?次第に意識が混濁していくような、そんなサウンドがあって、不思議な心地に。
ホリガーのアルバムでありながら、シューマンの魂と対話する... それは、興味深い体験なのかもしれない。クララのロマンスに始まり、シューマンの音楽を引き込みコラージュしたホリガーの暁の歌まで、何か、ひとつの映画音楽でも聴くような、物語を感じ、最後は、切なさがこみ上げつつ、人生の深さを思い、感動に包まれる。そこには、「シューマン」というテーマこそ残り、ホリガーの存在は、すーっと後ろへと消えていくような感覚もあって。そんな、コンセプチュアルなアルバムを、さらり聴かせてくれるのは、やはりECM NEW SERIESならでは。"ゲンダイオンガク"にして、また一味違うヴィジョンを映す、そのセンス、他にはなかなか求められない... "ROMANCENDRES"、ホリガーを聴くつもりが、ホリガーを超えて、聴き入ってしまう。

HEINZ HOLLIGER ROMANCENDRES

クララ・シューマン : 3つのロマンス Op.22 〔チェロとピアノによる版〕 **
ホリガー : ロマンセンドレス 〔チェロとピアノのための〕 **
ホリガー : 暁の歌 〔シューマン の Op.133 と ヘルダーリンに基づく〕 **

クリストフ・リヒター(チェロ) *
デーネシュ・ヴァールヨン(ピアノ) *
SWRヴォーカル・アンサンブル・シュトゥットガルト *
ハインツ・ホリガー/シュトゥットガルト放送交響楽団 *

ECM NEW SERIES/476 3225




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