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シマノフスキ。そのダンディスムを巡って... [2009]

シマノフスキ(1882-1937)、生誕125年にして、没後70年のメモリアルだった一昨年。その成果が、じわりじわりとディスクとなって出ていた、昨年... が、その勢い、まだまだ続いている?今年も、シマノフスキの気になるリリースが続くよう。ということで、ヴィト+ワルシャワ国立フィルによるシマノフスキの劇場作品に続いての、シマノフスキの室内楽。ロシアの新鋭ヴァイオリニスト、アリーナ・イブラギモヴァによる、ヴァイオリンとピアノのための作品全集(hyperion/CDA 67703)と、スウェーデンのベテラン、ローランド・ペンティネンによるピアノ作品集(BIS/BIS-CD-1137)を聴く。


ヴァイオリンで、シマノフスキを振り返る。

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デビュー・アルバムのハルトマン(hyperion/CDA 67547)、続いてのロスラヴェツ(hiperion/CDA 67637)、ともに高評価(ハルトマンが"GRAMOPHONE"のエディターズ・チョイスに... ロスラヴェツはディアパソンの赤いシール... )を得て、気になる存在だったロシアからの新たな逸材、アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)。20世紀の渋過ぎるチョイスに、メジャー・レーベルから派手にデビューする、若手、「アイドル」とは一線を画す、骨のあるアーティストぶり(けど、ルックスは、かなりアイドル... )に、まずはリスペクト!そんなアリーナが、3枚目のリリースに選んだのが、シマノフスキ。
ヴァイオリンとピアノのための作品全集... ということで、シマノフスキという作曲家をヴァイオリンから把握するのに、実に好都合なアルバム。ヴァイオリニストのアンコール・ピースとして欠かせない「アレトゥーサの泉」(track.3)はもちろん、そうしたミステリアスでエキゾティックなシマノフスキ・ワールドが展開されていく作品の数々。そこに至る前の、見事なロマン派のスタイルによるソナタ(track.7-9)。パガニーニの難曲、有名なカプリースを見事にアレンジし、シマノフスキ流の超絶技巧を聴かせる3つのパガニーニのカプリース(track.10-12)。そして、ポーランドのフォークロワな世界へと立ち返る頃の作品まで、ヴァラエティに富む全集。シマノフスキという作曲家の全体像を振り返ることはもちろんだが、ヴァラエティに富む... というあたり、1枚のアルバムとして、すっかり楽しませてくれる。
そして、アリーナのヴァイオリン... 透明感のある繊細な音が印象的で、難曲もさらりとこなし、表情の味付けも卒なく。いや、まったく以って器用に、ひとつひとつの作品を丁寧に捉えていて、ヴァラエティに富む全集を、しっかりまとめてくる。ならば、当然、すばらしい。のだけれど、シマノフスキ、独特のダンディスムというのか、艶っぽさ... それも、多少危うさのあるくらいの気分というのか、そうした微妙なトーンに関しては、女の子には醸しきれない部分、あるのかな?とも思えて。それは、贅沢な欲求でもあるのだけれど。
一方で、アリーナにそっと寄り添う、ティベルギアンのピアノには、シマノフスキ、独特なあたりを醸してくれる部分、聴き取れて。ヴァイオリンを前面に、控え目ながらも、見事なサポートを聴かせつつ、耳を凝らせば、端々に、シマノフスキが、わずかに薫るあたり、かなりクールな仕事ぶりなのかも...

SZYMANOWSKI THE COMPLETE MUSIC FOR VIOLIN AND PIANO
ALINA IBRAGIMOVA violin ・ CÉDRIC TIBERGHIEN piano


シマノフスキ : 夜想曲とタランテラ Op.28
シマノフスキ : 神話 Op.30
シマノフスキ : ロマンス ニ長調 Op.23
シマノフスキ : ヴァイオリン・ソナタ ニ短調 Op.9
シマノフスキ : 3つのパガニーニのカプリース Op.40
シマノフスキ : アイタコ・エニアの子守歌 Op.52

アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)
セドリック・ティベルギアン(ピアノ)

hyperion/CDA 67703




ピアノで、シマノフスキの芯央に触れる。

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膨大な録音を振り返れば、多様なレパートリー、かつ程好くマニアックな路線... でいて、常にフレキシブルな姿勢を見せ、いつも気になる存在、スウェーデンのピアニスト、ローランド・ペンティネン。ソロとしては、久々のアルバムになるのか、シマノフスキのピアノ作品集を聴いてみる。とはいえ、リリースされて、すでに半年くらい過ぎてしまったが... これが、すばらしく...
シマノフスキ・ワールドが存分に展開されるマスク(track.6-8)、メトープ(track.9-11)といった代表作に、ポーランド色を濃くしたマズルカをブレンドして、シマノフスキ音楽の美味しいとこ取りなアルバム。そして、1曲目、3番のソナタから、たまらなく美しく... 北欧のピアニズムから、シマノフスキの音楽を洗い直すと?艶めかしさの中にも、透明感を得るようで。作曲家の、地中海文化圏への憧れと、そこを旅し、熱に浮かされたような陶酔は、氷河から吹く涼風で冷やされて、憧れや陶酔に意識が飛んでしまうのではなく、しっかりと意識のある中で、地中海は遠い、北では味わえない、あるいは許されない悦びを、探るような感覚すらある?ペンティネンの鋭敏な感性が、絶妙に抑えた響きのバランスを創り出し、難曲も鮮やかに、軽やかに弾きこなすテクニックが、さらりと繰り出され、ひとつひとつ、瞬間、瞬間の、繊細な表情、シマノフスキの心の襞に迫るような感覚に、息を呑む。
ツィンマーマンが弾くヴァイオリン協奏曲(SONY CLASSICAL/88697439992)でも感じた、透明だからこそより薫り立つ、シマノフスキのダンディスムがあって... ペンティネンのピアノには、そこに、ジャジーな気分すら漂うようなところも。難曲、20のマズルカからの4曲(track.2-5)の、力まないワイルドさというのか、そのあたりにジャジーな気分が重なり。マズルカのリズムも、ジャズに近付く感覚があって、おもしろく。また、シマノフスキ、最後の作品(で、いいのか?)、2つのマズルカ(track.12, 13)のけだるさは、フォークロワなセンスでは推し量れない、都会的な臭いがし、魅力的。
このアルバムにあるのは、ペンティネン・ワールドと、シマノフスキ・ワールドの得も言えぬ共振... そのヴァイブレーションが、シマノフスキの音楽を純化して、全てをクリアにし、だからこそ露わとなる妖しさみたいなものが、たまらない。そうして、再認識する、シマノフスキ、独特の魅力。やっぱり、この作曲家は凄い。

Szymanowski ・ Piano Music ・ Roland Pöntinen

シマノフスキ : ピアノ・ソナタ 第3番 Op.36
シマノフスキマズルカ 第9番 20のマズルカ Op.50 より
シマノフスキマズルカ 第10番 20のマズルカ Op.50 より
シマノフスキマズルカ 第11番 20のマズルカ Op.50 より
シマノフスキマズルカ 第12番 20のマズルカ Op.50 より
シマノフスキ仮面劇 Op.34
シマノフスキメトープ Op.29
シマノフスキ2つのマズルカ Op.62

ローランド・ペンティネン(ピアノ)

BIS/BIS-CD-1137




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