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歴史の荒波から、サルヴェージ。ボエリという存在。 [2009]

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ピリオド界を代表する弦楽四重奏団、モザイク四重奏団。先日、聴いた、"Joseph Haydn - deLirium"にも参加していけれど、モザイク四重奏団としての演奏を、近頃、聴いていないなと、ふと思い... モザイク四重奏団のチェリスト、クリストフ・コワン率いる、アンサンブル・バロック・ドゥ・リモージュとともに、フランス、ロマン主義黎明の時代を活きた作曲家、ボエリの室内楽作品を取り上げるアルバム(La Borie/LC 05)を聴く。
もちろん、ボエリの存在も、気になるところ... 昨年、ショルンスハイム(フォルテピアノ)によるソナタとカプリースのCD(PHOENIX Edition/PE 127)がリリースされていたけれど、近頃、ぼんやりブーム?と思ったら、昨年が、没後150年のメモリアル。ということで、その成果が、録音となって、じわりじわりリリースされて来ているよう。ということで...

アレクサンドル・ピエール・フランソワ・ボエリ(1785-1858)。
フランス宮廷に仕える音楽家一家に生まれたボエリ。となれば、ヴェルサイユの生まれで、革命がなければ、そのまま王室付きの音楽家として、安定した生活があったのだろう... しかし、ボエリの生きたフランスは、まさに激動の時代。一家はパリへと移り、厳しい環境の中、音楽を学び。ボエリは、オルガニスト、ピアノ教師として生活していたとのこと。やがて、パリのサン・ジェルマン・ロクセロワ教会のオルガニストに就任(1840)。クープランや、さらにはフレスコバルディまで、古い音楽を探求。バッハをフランスに紹介するなど、後のフランスの音楽に影響を与えることに。とはいえ、19世紀のフランスは、グランド・オペラとサロンの時代。古典的な厳めしい音楽を志したことで、ボエリは、広く人気を得ることは無かったのだとか...
その音楽は、19世紀当時のオールド・ファッションだったのかもしれないが、はっきりと18世紀風というでもなく。世代的には、ウェーバー(1786-1826)と重なり、まさにロマン主義の最初の波が広がった時代、ボエリの音楽にもロマンティックな臭いはしてくる... そして、その室内楽を聴いていると、メンデルスゾーン(1809-47)の感覚に近いのか?古典派の上品さと、しっかりとした構築感がまずあって。1番の弦楽四重奏曲(track.6-9)などは、シューベルト(1797-1828)を思わせるテイストもあり、魅力的。となると、どことなしにドイツ的なカラーが強い?ピアノ・ソナタ(ショルンスハイム盤で聴いた... )などでは、ベートーヴェン(1770-1827)のような感覚があったことを思い出す。
さて、その作品の数々を演奏するモザイク四重奏団。このアルバムの最大の目的。
トリオ(track.1-4)と1番の弦楽四重奏曲(track.6-9)、弦楽四重奏のためのムヴマン(track.10)を演奏しているのだけれど... やはり、彼らのサウンドというのは、忘れ難く。その音が響き出せば... そうそう、このサウンド!というような、手応えがしっかりとあって、聴き入ってしまう。特に、18世紀的な色合いが強い、弦楽四重奏のためのムヴマン(track.10)のアダージォの美しさときたら... ハイドン、モーツァルトで名演を聴かせてくれたモザイク四重奏団ならではの、瑞々しさがたまらず、しっかり堪能。
一方、コワン率いる、アンサンブル・バロック・ドゥ・リモージュ。ボエリの交響曲を、作曲家自身によりサイズを小さくした、七重奏曲(track.12-15)を演奏するのだけれど、モザイク四重奏団とはまた一味違って、溌剌としたサウンドを聴かせてくれて。古典派からつながる交響曲の爽快なあたりを、フレッシュに楽しませてくれる。が、これがなかなか魅力的で、七重奏ではなく、オリジナルの交響曲で聴いてみたかった。
そして、オルガニスト、ボエリを垣間見る、チェロとエクスプレッシフ・オルガンのための3つのメロディ(track.5, 11, 15)... 絶妙に挿みこまれたこの小品が、このアルバムのすばらしいアクセントになっていて。ルブランによる素朴で、やさしげなオルガンの響きに、コワンによるチェロの、メロディックなあたりが絶妙で。ここには、明確な19世紀的な気分が漂っていて。フォーレ?なんても思わせる、19世紀、フランス音楽の萌芽を見るような、興味深さもあり、魅力的。

Alexandre Pierre François BOËLY | Musique de chambre

ボエリ : トリオ ハ長調 Op.5-2 *
ボエリ : チェロとエクスプレッシフ・オルガンのための3つのメロディ より アンダンテ・ラルゲット (第1番 ハ短調) **
ボエリ : 弦楽四重奏曲 第1番 イ短調 Op.27 *
ボエリ : 弦楽四重奏のためのムヴマン ホ長調 *
ボエリ : チェロとエクスプレッシフ・オルガンのための3つのメロディ より ウン・ポコ・レント (第2番 ホ長調) **
ボエリ : 七重奏曲 ニ長調 〔自作の交響曲による〕 *
ボエリ : チェロとエクスプレッシフ・オルガンのための3つのメロディ より アンダンテ・ソステヌート (第3番 ト長調) **

モザイク四重奏団 *
クリストフ・コワン(チェロ) *
エリック・ルブラン(オルガン) *
アンサンブル・バロック・ドゥ・リモージュ *

La Borie/LC 05




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