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ライト!クール?シャドウ・オブ・サイレンス。 [2009]

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レイフ・オヴェ・アンスネス、北欧、ノルウェーのピアニスト。
だからか、その演奏、なんとなく涼しげなイメージがある。氷河から、フィヨルドを吹き抜けていく風のような... というのは、あまりに安易かもしれないけれど。淡々としたタッチに、清々しさのようなものを感じて。けれど、ドライにはならないバランス感覚が魅力的で、こってりとしたロマン派の音楽であっても、アンスネスが弾くならば、そのロマンティックも味わいつつ、さらっと聴けてしまう。まさに、「現代的なピアニスト」とうのか、そんな彼のスタンスに、クールな印象を持っていた。そして、そのクールさから、現代音楽を弾いたならば... またさらに!なんて期待してしまう、アンスネスの最新盤、『シャドウズ・オブ・サイレンス』(EMI/2 64182 2)を聴いてみる。

デンマークのベント・セレンセン(b.1958)のピアノ作品、"The Shadows of Silnce"をアルバムのタイトルに... ウェルザー・メストが指揮するバイエルン放送響の好サポートを受けて、ポーランドのヴィトルト・ルトスワフスキ(1913-94)と、フランスのマーク・アンドレ・ダルバヴィ(b.1961)のコンチェルトを... ハンガリーのジェルジ・クルターク(b.1926)の小品集、『遊び』から、8曲をセレクション... "ゲンダイオンガク"を覆う、難解さに酔うのではなく、そうしたあたりを巧みに避けて、より間口を広く取って、現代音楽を綴る。
1曲目、セレンセンの子守唄の、アンビエントなサウンドが、まず耳を捉える。透明感に、瑞々しさに、どこか影を帯びる表情が、どことなしにセンチメンタル。まどろみの中で聴くようなその音楽は、殺伐とした"現代"が欲する子守唄... といった雰囲気で、いつもの"ゲンダイオンガク"とは違う場所へと導かれるよう。2曲目、「前衛」であるより、「モダン」なルトスワフスキのコンチェルト(track.2-5)は、そのオールド・ファッションが、かえってクール。20世紀前半のカッコよさ、たとえばラヴェルのような、そんな感覚を、"現代"の中で響かせたならば... そんなセンスが、魅力的。次の、クルタークの『遊び』(track.6-13)は、"ゲンダイオンガク"の難解さを向こうに回してのシンプルさが印象的。シンプルが生む洒脱さ、シンプルであるからこそのフレッシュな感覚が、2つのコンチェルトに挟まれて、絶妙のアクセントに。
その、もう一方のコンチェルト... ダルバヴィのコンチェルト(track.14, 15)は、この人ならではの、現代音楽にして、現代っ子なサウンド。ミニマル風なパルスと、グリッサンドと、巧みにオーケストラを繰り出し、ダイナミズムも生み出して、フランス版、ジョン・アダムズ?そこに、「モダン」のフラッシュバック?ふと、フランス印象主義や、ストラヴィンスキーが過っていくような、おもしろさも。"ゲンダイオンガク"にエンターテイメント性を漂わす、この人のセンスは、いつもながら興味深い。そして、ダルバヴィとはまた違った、心地よいパルスで始まるセレンセンの"The Shadows of Silnce"(track.16)。タイトルそのままに、アンビエントな美しい音楽が、アルバムを締め括る。
最も古い作品で、1970年代の作品... となれば、まさに「現代音楽」のアルバム。だが、するするっと聴けてしまう、ライトな"ゲンダイオンガク"。そういう感覚が強く打ち出されたアルバムだ。アンスネスの感性にぴったりな選曲もあって、よりライトさが引き立つようでもあり。とにかく、綺麗にまとめ上げられた1枚。なのだが、多少、危なっかしさも欲してしまう聴き手には、なんとなく消化不良でもあるような... 1曲1曲は、作品も演奏も、それぞれに魅力的なのだけれど、それら綺麗にまとめ上げられて、クールさがあるかと言えば、言い切れない。良くも悪くも、"ゲンダイオンガク"に孕むスリリングさを求めれば、優等生的過ぎてしまう。ライトでないものを、クールに響かせたなら、もっとカッコよいように感じてしまう。のは、個人的な趣向の違い?

DALBAVIE ・ KURTÁG ・ LUTOSŁAWSKI ・ SØRENSEN
ANDSNES


セレンセン : 子守唄
ルトスワフスキ : ピアノ協奏曲 *
クルターク : Hommage à Farkas Ferenc (3) (『ペトルーシュカ』からの引用) 『遊び』 第3巻 から 26
クルターク : Aus der Ferne II (アルフレッド・シュリーの80歳の誕生日のために) 『遊び』 第5巻 から 6
クルターク : Bogáncs 『遊び』 第3巻 から 12
クルターク : Les Adieux (ヤナーチェク流で) 『遊び』 第5巻 から 10
クルターク : Vízözön-szirénák (ノアを待ちながら) 『遊び』 第6巻 から 6
クルターク : Apokrif himnusz (第2版) 『遊び』 第6巻 から 7
クルターク : Hempergős 『遊び』 第3巻 から 14
クルターク : Hommage à Farkas Ferenc (2) (コリンダ・メロディーの断片―かすかな思い出)
   『遊び』 第3巻 から 25
ダルバヴィ : ピアノ協奏曲 *
セレンセン : シャドウ・オブ・サイレンス

レイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ)
フランツ・ウェルザー・メスト/バイエルン放送交響楽団 *

EMI/2 64182 2




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