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等身大の英雄=リヒャルトの新たな生涯? [2009]

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グラズノフ(FUGA LIBERA/FUG 521)、マルティヌー(FUGA LIBERA/FUG 531)と、"クラシック"の王道からは外れる渋いチョイスながら、そこに、驚くほどヴィヴィッドな世界を見せてくれて、目から鱗... あまり目立たないものの、ヴァルター・ヴェラー率いるベルギー国立管弦楽団によるアルバムは、どれも、間違いなくおもしろかった!そして、彼らの3タイトル目、最新盤は、リヒャルト・シュトラウス(FUGA LIBERA/FUG 546)。交響詩「英雄の生涯」に、プラメナ・マンゴーヴァ(ピアノ)を迎えて、ブルレスケを取り上げる。

その大仰なタイトルに、まず当てられてしまう交響詩「英雄の生涯」。で、「英雄... 」とは、作曲家自身のことで。また、34歳にして「 ...の生涯」というタイトルを付けてしまえる作曲家の若さにも当てられて。タイトルのみならず、その音楽にこそ、当てられる?その、過剰気味(?)の物語、極上なるオーケストレーションに、ぼんやりとストレスを感じてしまう?聴き終えると、どうも疲れてしまう。が、ヴェラー+ベルギー国立管による演奏で聴くと、まったく印象が変わる。
交響詩「英雄の生涯」(1898)... オーケストレーションの大家、リヒャルト・シュトラウス(1864-1949)、最後の交響詩にして、その前半生の集大成。間違いなく、この作曲家の、オーケストラ作品の代表作。ともなれば、たくさんの録音があり、ライヴでもよく取り上げられる作品。ということで、いろいろ聴いてきたわけだけれど、ヴェラー+ベルギー国立管の演奏には驚かされる。あの大仰さはどこへ?ストレスなどあり得ない... その、あまりにナチュラルなサウンド... オーケストレーションの極上感が、まったく嫌味にならず、そこはかとなしにエンターテイメント性が輝いて、カッコよくすらあって。またしても、目から鱗...
2007/2008年シーズンに、ベルギー国立管の音楽監督に就任したヴァルター・ヴェラー。華々しくウィーン・フィルのコンサート・マスターとして、ヴェラー四重奏団を率いて活躍した若かりし頃に比べ、指揮者としては、必ずしも華やかな場所を歩んで来たマエストロではないかもしれないが、そのセンスは間違いない。ちょうど、2シーズン目が終わろうとしているベルギー国立管のヴェラー体制だが、まだまだこれからのようで、すでに"独特"。オーケストラならではのゴージャスなサウンド... とは一味違う、ドライな感覚?そうしたあたりから、丁寧に作品と向き合って生み出される音楽は、勿体ぶったところが一切ない。作曲家を神格化していくような、「普遍」を売りにする"クラシック"にあって、そうした「雰囲気」に流されないサウンドは、どこか、気軽さすら得たようで、オーケストラというメディアそのものに、新鮮さを感じてしまうようなところも。そうして紡がれる「英雄の生涯」は、素直にカッコいい!
例えば、第1部、「英雄」(track.2)... ヴェラー+ベルギー国立管の手に掛かると、往年のハリウッド映画(コルンゴルトが活躍していた頃... )のオープニングのようなロマンちっくさが匂い立ち。そのキャッチーさに、驚かされてしまう。そこに描かれる「英雄」は、往年のハリウッド映画のヒーロー(エロール・フリンのような?)といった雰囲気で、そんなコテコテ感が、どこかチープでもあって、ラヴリー!リヒャルトの「若さ」をポジティヴに炸裂させたその感覚は、何やら斬新... すると、第2部、「英雄の敵」(track.3)のコミカルなあたり(作曲家に向けられる不本意な嘲笑)が、しっくりと来て。第3部、「英雄の伴侶」(track.4)は、まったくもって愛らしく、第4部、「英雄の戦場」(track.5)などは、劇画ちっくに盛り上がりを見せ、とにかく楽しませる。そして、第5部、第6部と、「めでたしめでたし」といったハッピーな雰囲気に包まれるのも、魅力的。
戯画的な気分も漂いつつ、劇画的であり、絵本的でもある。ヴェラー+ベルギー国立管が見せてくれた、等身大の英雄=リヒャルト・シュトラウスの姿に、やっとこの作品を呑み込めたような気がしてくる。何より、極上=複雑なオーケストレーションをきっちり整理して、その全ての音を制御して、まったく響きに斑を出さず、ヴェラー+ベルギー国立管の"独特"を、堂々と形にしていることに感心。いや感服。実は、メインである交響詩「英雄の生涯」よりも、マンゴーヴァ(ピアノ)の初のコンチェルトの録音となるブルレスケ(track.1)が気になって手に取ったアルバムだったが、交響詩「英雄の生涯」を見つめ直す、すばらしい機会に。
もちろん、マンゴーヴァのピアノも素敵で... ブルレスケ=バーレスクというには、軽妙さよりロマンティックな気分に満ち溢れたこの作品。マンゴーヴァの鮮烈さが、ロマンティシズムの中に埋もれがちのバーレスクなあたりを探り、彼女の縦横無尽さとキレで、しっかり楽しませてくれる。のだが、リヒャルト青年(22歳)の作品、ブルレスケ... ティンパニによる主題の提示で始まったりと、なかなか個性的な作品ではあるが、マンゴーヴァの音楽性をフルに楽しむには、スケールの小さな作品?物足りなさも... ということで、次は、異才のピアノがより活きてくるコンチェルトを聴いてみたい!

Richard Strauss ― Burleske ― Ein Heldenleben
Plamena Mangova ― National Orchestra of Belgium ― Walter Weller


リヒャルト・シュトラウス : ブルレスケ ニ短調 AV.85 〔ピアノとオーケストラのための〕 *
リヒャルト・シュトラウス : 交響詩 『英雄の生涯』 Op.40

ヴァルター・ヴェラー/ベルギー国立管弦楽団
プラメナ・マンゴーヴァ(ピアノ) *

FUGA LIBERA/FUG 546

リヒャルト・シュトラウス、生誕150年に、リヒャルトを聴く!
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