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革命は遠に過ぎ、ロマンティシズムに相応しい... ブラームス。 [2009]

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ブラームスばかりでなく、ブラームスに影響を与えた作曲家も取り上げる、ジョン・エリオット・ガーディナーと、彼が率いるピリオド・オーケストラ、オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティク(以後、ORRと略... )の、ブラームスの交響曲、全曲録音のシリーズ。その第2弾(Soli Deo Gloria/SDG 703)は、2番の交響曲。そして、第1弾、同様、ガーディナーのコーラス部隊、モンテヴェルディ合唱団が歌い、シューベルトの合唱曲を... さらには、ナタリー・シュトゥッツマン(アルト)を招いて、アルト・ラプソディなども取り上げられ、ブラームスを俯瞰するその選曲は、第1弾と変わりなく、興味深い。
が、何より楽しみなのは、2番の交響曲。1番の交響曲では、チャレンジングなあたりを聴かせてくれただけに、颯爽とした2番では、どんな演奏を聴かせてくれるのかと、興味津々... だったが...

ガーディナーの律儀さと、オーケストラ・メンバー、一人一人の、確かなテクニックが生む明晰さ、精緻さ... そのクリアなサウンドから繰り出される、ガーディナーによる竹を割ったような解釈が、彼らの魅力。のように思っていたが、ブラームスの交響曲は、かつてのイメージとはまた一味違って、1番の交響曲(Soli Deo Gloria/SDG 702)では、気を衒う?ノン・ヴィブラートから繰り出されるポタメントに驚かされたわけだ。ガーディナーにして、予想外の灰汁の強さ?と言うのか、そのチャレンジングな姿勢に、彼らの新たな境地を見せられて(若干、戸惑いながらも... )、興味深かった。が、2番の交響曲では、そうしたトーンは抑えられ... 良くも悪くも、真っ当な仕上がりに。ポルタメントも、それなりに掛かっているけれど、そのことを強く主張してくることはない。となると、ぼんやりと物足りなさを感じてしまう?
かつては、"ピリオド"であることに、「事件」を期待したが、もう、そういう時期は過ぎてしまった... ならば、ORRの演奏は、端正で、的確。弦楽セクションなどは、ノン・ヴィブラートでも十分に太いサウンドを響かせて、モダン・オーケストラが奏でる厚みに引けを取らない。というより、"ピリオド"を特筆するほど、個性的なサウンドでもない?やはり、19世紀も半ばを過ぎてしまうと、ぐっと"モダン"に近づいて... 仕方のないことか。それでいて、ガーディナーの創り出すブラームスは、ロマン主義の時代に相応しい、巨匠然とした風格もあって、立派に響き... もちろん、それは大味になるような演奏ではなく、求心力をしっかり持って、躍動感に溢れ。終楽章(track.8)のフィナーレへの盛り上がりなどは、見事。だが、もし、以前のガーディナー+ORRだったなら、どうだったろう... そんな欲求も湧いてくる。1番とは違って、颯爽とした2番ならば... ブラームスの音楽の中に、18世紀の残像を見せるとか... 斬新なブラームス像が出現したのではないかと。

一方で、アルバムの前半は、なかなか興味深く... 何より、1曲目、アルト・ラプソディが絶品!ソロを歌う、ナタリー・シュトゥッツマン(コントラルト)が、とにかくすばらしい。もちろん、以前からすばらしいわけだけれど、さらにさらにすばらしく... その深過ぎるほどに深い味わい、艶やかで、時に怪しげで、コントラルトとしてのただならなさは、ますます磨きが掛かっているかのよう。こういうすばらしい歌い手に恵まれると、作品自体が引き立って、聴き入るばかり。そして、モンテヴェルディ合唱団(男声)も、好サポート。その歌い出しの、空気が変わる瞬間の美しさときたら、もう...
そんな、アルト・ラプソディを聴いた後で、シューベルトの水の上の精霊の歌(track.2)を聴くと、時代が遡ったことを感じ、また、シューベルトの流れに、アルト・ラプソディがあることも、しっかりと実感。さらに興味深いのが、男声合唱と管弦楽のためにブラームスが編曲したシューベルトの歌曲、タルタロスの群れ(track.3)、御者クロノスに(track.4)。ブラームスによるヴァージョン・アップが、なかなかおもしろく。ドイツ・リートは、完全にオペラティックな表情を纏い、ドラマティックで聴き応えは十分。もしブラームスがオペラを書いていたならば... なんてことを、つい考えてしまう。

Brahms Symphony 2 Gardiner

ブラームス : アルト・ラプソディ Op.53 **
シューベルト : 水の上の精霊の歌 D 714 *
シューベルト : タルタロスの群れ D 583 〔編曲 : ブラームス、男声コーラスとオーケストラによる〕 *
シューベルト : 御者クロノスに D 369 〔編曲 : ブラームス、男声コーラスとオーケストラによる〕 *
ブラームス : 交響曲 第2番 ニ長調 Op.73

ナタリー・シュトゥッツマン(アルト) *
モンテヴェルディ合唱団(男声) *
ジョン・エリオット・ガーディナー/オルケストル・レヴォリュショネル・エ・ロマンティク

Soli Deo Gloria/SDG 703




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