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世紀末、サティ。 [2009]

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タローのサティを聴いたばかり... なのだけれど、また手に取ってしまう、サティのアルバム。今度は、シュヴァリエがサティを弾く(Zig-Zag Territoires/ZZT 080901)というのだから、タロー以上にセンセーショナルなのかも。
リストの「死の舞踏」(Zig-Zag Territoires/ZZT 041102)、ラフマニノフの2台のピアノのための作品集(Zig-Zag Territoires/ZZT 061105)、ラヴェルの左手のための協奏曲(Zig-Zag Territoires/ZZT 060901)... じわりじわりと時代を下って、そのギリギリの辺りを行き来する"ピリオド"界の異才、ピアニスト、クレール・シュヴァリエ。彼女が、とうとうサティを捕えたかと、感慨も... いや、サティすら、"ピリオド"の範疇で語られることへの驚きもありつつ、聴いてみる、1905年製、エラール・ピアノによるサティは...

お洒落なサティ... なんて、甘い幻想を抱いていると、足をすくわれてしまう、始まりのグノシェンヌ。シュヴァリエの奏でるアンティークなサティは、"ジャク・イン・ザ・ボックス"的な楽しみに充ちたタローによる2枚組とは、真逆の世界を極めていて。エラール・ピアノからは、湿り気を帯びたようなサウンドが広がり。また、「アンニュイ」なんてレベルではない、ただならない倦怠が横たわり、おどろおどろしく、その様は、かなり衝撃的。浮遊感すら感じていたサティの音楽が、予想外にヘヴィーに響いて、驚かされる。
神秘主義、象徴主義に彩られた19世紀、その「世紀末」の時代。サティもまた、そんな時代の空気をたっぷり吸いこんで... 「世紀末」の空気とも共鳴し、サティなりに「世紀末」を響かせたのが、この作曲家の前半生の作品... そうしたあたりを、エラール・ピアノですくい取ったシュヴァリエのアルバムは、他ではなかなか味わえない、サティの姿をあぶり出すよう。
モダンのピアノにはない仄暗さと、遅めのテンポで、シンプルな音楽世界をじっくり響かせると、普段、聴き逃していたこの作曲家の、「世紀末」が浮かび上がる。そして、同時代の音楽(ロマンティックな... )とは一線を画すサティの音楽に、極めて同時代的な「世紀末」の気分を漂わせれば、この作曲家の異質さは際立ち、ロマンティックが過剰に盛り付けられたサウンドよりも、神秘主義はたっぷり滴って、象徴主義が怪しげに光り出す。薔薇十字団に関わる作品、『星たちの息子』への3つの前奏曲(track.4-6)、薔薇十字団のファンファーレ(track.8-10)を取り込んだ構成も、そうした気分をより濃厚なものにし、謎めき、不可思議さすら加わり... 一度、この感覚に足を取られてしまうと、抜け出せなくなるような、そんなトーンが、印象的。
そうした中で、ふと、聴き馴染んだジムノペディ(track.11-13)のメロディが聴こえてくると、少し、ほっとしてみたり。が、やはり、独特のトーンがこの作品にもあって、ゆっくりと、ゆっくりと奏でられるジムノペディは、たっぷりと水気を含んで、今にも滲んで、形を失いそうな、そんな危うさすら感じて、一筋縄ではいかない。シュヴァリエ、エラール・ピアノの魔法は、サティ自身の魔法を呼び覚ますかのよう。
それにしても、サティという作曲家を、改めて見つめ直させてくれるアルバム。ピリオド・アプローチは、サティであっても、興味深い効果を引き出してくれる。シュヴァリエのサティを聴いて、タローのサティを聴けば、モダンのピアノによって、失われてしまった響きの存在を感じ、考えさせられる。万能であることの魅力、万能ではないことの魅力。そして、異才、シュヴァリエが、万能ではないことの魅力で、次に、誰を取り上げるのかが、大いに気になる。

Erik Satie | Claire Chevallier

サティ : グノシエンヌ 第1番
サティ : グノシエンヌ 第2番
サティ : グノシエンヌ 第3番
サティ : 『星たちの息子』 への3つの前奏曲
サティ : 『天国の英雄的な門』 への前奏曲
サティ : ばら十字団のファンファーレ
サティ : 3つのジムノペティ
サティ : 4つのオジーヴ

クレール・シュヴァリエ(1905年製、エラール・ピアノ)

Zig-Zag Territoires/ZZT 080901




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