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気になるノイコム。そのレクイエムを聴く... [2009]

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2006年、モーツァルト、生誕250年のメモリアル... メモリアルならではの、センセーショナルなリリースとなったのが、ブラジル版、レクイエム(K617/K617180)。そして、そのブラジル版を手掛けたことで、一躍、注目されることになったのが、ジギスムント・ノイコム(1778-1858)。1819年、ブラジルにて、モーツァルトの未完の遺作を、彼なりに補筆。欠けていた『リベラ・メ』を作曲。古典派のアウトラインに、ロマンティックな彩色を施して、なかなか興味深い音楽を響かせたノイコム、だったわけだが... その、ブラジル版、レクイエムを拾い上げた鬼才、ジャン・クロード・マルゴワールが、今度は、ノイコム自身によるレクイエム(K617/K617210)を取り上げて、またまた興味深いアルバムをリリースしてきた。

モーツァルトの故郷、ザルツブルクに生まれ、ザルツブルクでミヒャエル・ハイドンに、ウィーンでヨーゼフ・ハイドンについて学び、オーストリアから、ロシアへ、ブラジルへ... さらにはアフリカや、アメリカをも旅し... やがて、パリに落ち着き、1838年に作曲されたのが、このアルバムで取り上げるレクイエム。
冒頭のブラスの吹奏に、どことなく、後のワーグナーを感じ。男声コーラスによる歌い出しには、どことなく、ロシアの聖歌を感じ。これまであまり経験したことのない、独特の雰囲気に、早くも惹き込まれてしまう。そして、キリエ(track.2)で、女声も加わると... 思い出すのは、ベルリオーズのレクイエム。ノイコムのレクイエムの前年に初演されているだけに、どこかでインスパイアされている部分もあるのか?ブラスの吹奏と、荘重なコーラスは、黙示録的な気分を漂わせ、時に古典派的な透明感も見せ、なかなか興味深い。が、ベルリオーズとは違って、盛り上がりに欠けてしまう。
本来、無伴奏、あるいはオルガン伴奏... が、任意での伴奏楽器の変更が許されているノイコムのレクイエム。マルゴワールは、レクイエムの後に取り上げる、葬送行進曲とミゼレーレでの、ブラス・アンサンブルをそのまま用い、また、オルガンも加えて、葬送の気分を徹底して漂わせる。そして、そこに歌われる、ただただ沈鬱なコーラス... わずかでも慟哭の表情を見せてくれたならば... あと少し天上の光を見せてくれたならば... どれほど印象的なレクイエムになっただろうか。なんて、考えてしまう。レクイエムに続けて演奏される、葬送行進曲とミゼレーレ(track.13)も、やはり、同じトーンで、沈鬱な空気が続いて... こうなってくると、芸術音楽というよりは、実用音楽か?
ただ、もし、北欧やドイツの、クリアなコーラスで、もう少し表情を付けて歌われていたならば、印象は変わったのかもしれない... 伴奏を務める、ラ・グラン・エキュリ・エ・ラ・シャンブル・デュ・ロワの演奏は、ピリオド楽器の制約が生む、どこか影を帯びるブラスのサウンドが、とても魅力的(葬送行進曲とミゼレーレでは、特に!)だっただけに、もどかしさも。あるいは、本来の無伴奏、オルガン伴奏で、歌そのものを前面に出していたならば... ブラス・アンサンブルによる葬送行進曲とミゼレーレと、いい具合にコントラストが生まれて、また違った音楽として聴こえたかもしれない。
ロマンティックでありながら、古典派の透明感を失っていないノイコムの音楽。このアルバムでは、そんな魅力が、どうも沈鬱さに沈み、どうも見えにくい。が、見えている部分の、瑞々しく、美しいきらめきは、印象的... だからこそ、他の演奏で、改めて聴いてみたい!

Sigismund Neukomm  Requiem

ノイコム : レクイエム
ノイコム : 葬送行進曲 と ミゼレーレ

インド洋声楽アンサンブル"カンターレユニオン"
ジャン・クロード・マルゴワール/ラ・グラン・エキュリ・エ・ラ・シャンブル・デュ・ロワ

K617/K617210




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