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イニシエの、重み、 [2009]

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クラシックというと、何だかもの凄く古い音楽を聴いているように思われるけど、日常、聴かれているクラシックは、意外にも、そう古い音楽でもない。が、クラシック=音楽の古典として、音楽史を遡れば、それはもう本当に古いところまで行き着く。古代ギリシアの音楽ともなれば、それは紀元前となるわけで... さて、そこまでは古くはないのだけれど、やはり「古代」が息衝く音楽を聴いてみようかなと思う。古代ローマの残照、初期キリスト教の姿を窺う、ローマに歌い継がれていた古ローマ聖歌。それは、グレゴリオ聖歌の素になったと言われる、グレゴリオ聖歌以前の教会音楽。おもしろいのは、グレゴリオ聖歌以後もローマで歌われていたこと...
ということで、マルセル・ペレス率いるアンサンブル・オルガヌムによる、6世紀から13世紀に掛けての古ローマ聖歌から、クリスマスのミサで歌われたものを集めて編まれた1枚、"CHANT DE L'EGLISE DE ROME"(Zig-Zag Territoires/ZZT 081001)を聴く。

中世の前半になるのか、古い地中海文明の延長線上にあったローマ教会(南)と、新たにヨーロッパの主となったゲルマン世界(北)がつながっていく過程で、アルプスの北側で生成されたのが、グレゴリオ聖歌... で、クラシックの始まりと言えば、漠然と、中世のグレゴリオ聖歌を思い浮かべるのだけれど... ここで聴く、古ローマ聖歌とは、アルプスの北側からの影響を受ける前の、まさに、古代ローマの臭いを強く残す聖歌となる。やがて、ヨーロッパ中の様々な聖歌を呑み込んで、ヨーロピアン・スタンダードを確立したグレゴリオ聖歌に取って替わられる存在だ。それにしても、クラシックというジャンルが、ただならず広大であることは、認識してはいるが、グレゴリオ聖歌以前ともなれば、いつものクラシックでは、なかなか想像が追い付かない。が、そこは、想像を膨らませて... 聴こえてくる、今のヨーロッパとは違うDNAを持つ、地中海文明が紡ぎ出したサウンドの異質さは、衝撃的ですらある。それをまた、マルセル・ペレス率いるアンサンブル・オルガヌムが歌えば、強烈に、古代の臭いが、スピーカーから溢れ出すようで、古ローマ聖歌云々よりも、この「古代」に圧倒されてしまう。
古ローマ聖歌のアルバムを、すでにいろいろリリースしているペレス+アンサンブル・オルガヌム。以前は、もう少し色味があって、西洋音楽の源流を感じさせる部分もあったように感じるのだけれど、最新盤でのその姿は、突き抜けている。前作、"La Chant Des Templiers(テンプル騎士団の歌)"でも、オリエント世界を吸収した、謎めく修道騎士団(『ダ・ヴィンチ・コード』にも登場!)の姿を、見事、サウンドとし、その異様さに、圧倒されたのだけれど、古ローマ聖歌の最新盤では、またさらに、凄いものを"見る"思い。
ヨーロッパ的な透明感とは一線を画す、唸る男声集団。アラベスクな表情すら漂う、ミステリアスな謡い。これが、古代ローマのDNAを受け継ぐサウンドなのか?もはや、「歌」であるというより、まさに「サウンド」。そして、音でありながら、物体として存在しているような、強烈な存在感を感じずにはいられない。何より、人の声で、ここまで表現できるのか?というようなレベルのシロモノ... そうしたサウンドに触れていると、いや、その物体を前にしていると、後の音楽が失ってしまった、生々し過ぎるほどの、生命の拍動を感じるようで、慄いてしまう。で、日ごろ聴いているクラシックは、あまりに新し過ぎる!と思ってしまうほど、イニシエの重みに、畏れすら感じる。と同時に、そうした、諸々のただならなさを失うことで、美しさを獲得していくのが音楽史なのだなと、感慨深くもあり。しかし、ただただ圧倒されるばかり... ペレス+アンサンブル・オルガヌムが歌えば、そんなところだろう... という予想はついていたはずだが、それを越えて圧倒的...

CHANT DE L'EGLISE DE ROME Marcel Pérès Ensemble Organum

古ローマ聖歌によるクリスマスのミサ(徹夜祭のミサ/真夜中のミサ/暁のミサ/日中のミサ)

マルセル・ペレス/アンサンブル・オルガヌム

Zig-Zag Territoires/ZZT 081001




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