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モダニズム、ダンディズム、ニヒリズム、 [2009]

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ドイツのヴァイオリニスト、フランク・ペーター・ツィンマーマン(b.1965)。
若い頃(10代... )から第一線で活躍していると、どこかで「若手」のイメージを引きずってしまうのだが、彼も40代半ば。まさに「ベテラン」。だが、その長いキャリアを振り返れば、もはや「巨匠」?いや、そう言うのとはまた違うか... けれど、確実に"アーティスト"として熟成されて... あるいは、蒸留(?)されてきていて... 彼の音に触れると、一つ突き抜けた境地を見るようで、驚かされる。そんなフランク・ペーター・ツィンマーマンの最新盤、シマノフスキとブリテンのコンチェルト(SONY CLASSICAL/88697439992)を聴いてみる。

ということで、まずはシマノフスキの2つのコンチェルトから...
シマノフスキのコンチェルトには、これまでも、大いに魅力を感じてきたのだけれど、ツィンマーマンの演奏に出会って、これまでとは違う、まったく新しい世界が広がるようで、驚かされる。何と言うか、それは、恐ろしく解像度の高い演奏で... シマノフスキならではの、神秘的で、謎めき、どこか曖昧模糊とした魅力は、蒸留され、濁りの一切ないサウンドに。すると、ぼんやりと暗闇の中にあった音楽は、モダンで、かつエキゾティックな香りが漂うミステリアスなミニアチュールとして、くっきりと浮かび上がってくる。
それにしても、ツィンマーマンの、磨き抜かれた、息を呑む美音... 徹底した精密さから生まれる作品そのものの美しさ... それは、"ヴィルトゥオーゾ"を越えて、"テクノロジー"すら感じさせ、まさに"MADE IN GERMANY"な響き?その怜悧さ、鋭敏さで、シマノフスキの禁断領域を切り拓いて、ゾクゾクさせられる。また、アントニ・ヴィト率いるワルシャワ国立フィルがすばらしく。ソロとオーケストラ、計算された配合で、見事にサウンドを融かし、シマノフスキ、独特の音楽世界を、精緻に表現して見せる。で、十分にダイナミズムは味わえるが、変に力が込められて、熱くなるところがないのが印象的。というより、どこか冷えた感覚が魅力的。そんな、冷えた感覚から発せられるシマノフスキならではのダンディズムは、文字通り、クール!
シマノフスキがダンディズムならば、ブリテンはニヒリズムか?
スペイン市民戦争(1936-39)が始まる直前、バルセロナを訪れたブリテン。スペイン市民戦争の直後、作曲されたそのコンチェルトには、蜃気楼のようにスペインの情景が浮かび上がる。そして、ツィンマーマンのヴァイオリン、やはりここでも驚くべき解像度で作品に迫り、ブリテンのナイーヴな心を切り拓くよう... 否応無しに、全体主義、戦争へと傾くヨーロッパにあって、ニヒリズムを決め込むようで、その内にある作曲家の不安な心を繊細に捉え、映し出すのが印象的。それは、ブリテン的な平和へのメッセージ... というよりも、作曲家のパーソナルな部分に下りていく感覚か。
さて、ブリテンでは、ヴィト+ワルシャワ国立フィルに替わり、マンフレート・ホーネックと、2006年まで彼が率いたスウェーデン放送響が好サポート... ブリテン特有の瑞々しさをきっちりと響かせ、どこか映画音楽を思わせるセンスで、ツィンマーマンのストイックな美音に寄り添い印象的。ツィンマーマンの精緻な音楽を、より豊かに広げて、シマノフスキとはまた一味違う感覚を盛り込んで、魅力的。
それにしても、絶妙なる選曲!シマノフスキとブリテンのコンチェルト... こういう組み合わせもあったかと、ツィンマーマンのセンスに、関心してみたり。「前衛」に振り切らないモダニズム、何気なく漂うエキゾティシズムを、魅惑的に表現する2人の作曲家... それをまた、安易に「魅惑的」にまとめるのではない、精緻なツィンマーマンの仕事ぶりに、感服させられるばかり。

Britten, Szymanowski Violin Concertos Frank Peter Zimmermann

シマノフスキ : ヴァイオリン協奏曲 第1番 Op.35 *
シマノフスキ : ヴァイオリン協奏曲 第2番 Op.61 *
ブリテン : ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 Op.15 *

フランク・ペーター・ツィンマーマン(ヴァイオリン)
アントニ・ヴィト/ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団 *
マンフレート・ホーネック/スウェーデン放送交響楽団 *

SONY CLASSICAL/88697439992




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