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ラルペッジャータ的モンテヴェルディ、愛の劇場。 [2009]

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Alphaの白のジャケット、"Les chants de la terre"のシリーズで... 特に、"La Tarantella"(Alpha/Alpha 503)で、その存在を強烈に印象付けた古楽アンサンブル、ラルペッジャータ。軽々とジャンルを越境して、活き活きと、時に生々しく、大胆に音楽と向き合い、何物にも囚われることなく、自由に紡ぎ出されるサウンド、チャレンジングなアルバムの数々は、どれも魅了されずにはいられなかった。が、リリースが途絶えて... 気が付けば、Alphaを離れて、naïveへ... ラテン・アメリカのバロックを、随分と砕けて、魅惑的に響かせた"Los Impossibles"(naïve/V 5055)がリリースされるものの、それから、どうなってしまったのか?と、思いきや、Virgin CLASSICSに登場して、ちょっと驚いてみる。いや、かなり驚いてみる。
そんな最新盤、"Teatro d'Amore(愛の劇場)"(Virgin CLASSICS/2361402)。フィリップ・ジャルスキー(カウンターテナー)、ヌリア・リアル(ソプラノ)という、豪華なキャスティングによる、モンテヴェルディのアルバム。だが、鬼才、クリスティーナ・プルハル率いるラルペッジャータだけに、ただならず、ジャンルを越境していくことに... 素直なモンテヴェルディなんて彼らにはあり得ない?

1曲目、『オルフェオ』の序曲、トッカータの、軽やかなリズムで導かれるラルペッジャータ的モンテヴェルディ、愛の劇場。ジャルスキーの歌う「ああ、私は倒れてしまう」(track.2)で、いきなりジャズ(ディキシーランド?)っぽく切り込まれて、こうなりますか... と、Alphaの白のジャケット、"All'Improvviso"(Alpha/Alpha 512)を思い起こさせるスタイル。モンテヴェルディのメロディに、腕利き達のインプロヴィゼーションが添えられていくような。また、そうしたノリに、ジャルスキーもしっかりと応えて、いや、巧くノってしまっていて。スーパー・カウンターテナーの、フレキシブルな可能性に、驚かされる。
そして、モンテヴェルディ、愛の劇場における、究極の美?『ポッペアの戴冠』のフィナーレ(track.3)が続く... のだが、その息を呑む二重唱!リアルのポッペアと、ジャルスキーのネロ。恐るべき悪のカップルが、長大なオペラの最後に歌う、あまりに美し過ぎる愛の二重唱だが、2人の声が、たまらなく美しく、2人が融けていくような危うさすら感じて。そんな2人に寄り添うラルペッジャータのサウンドは、初期バロックのオペラの古色蒼然とした色合いを薄めて、ピュアな美しさを抽出して、少しポップに響かせる。これが、絶妙なバランスで、2人の声の鮮やかさを際立たせ、ただならない...
かと思えば、フォークロワな屈託の無いリズムも爆ぜて、ダンサブル(track.4)。リアルが歌う、ニンファの泣き(track.5)の表情には、ラテンの色が濃く滲み。コルネットの鮮やかな響き(これ自体が、すでに"クラシック"を超越している... )に伴われて歌うジャルスキーの歌うセンチメンタルなメロディ(track.6)は、フォークソング?と、モンテヴェルディのイメージは、どんどん拡張されていく。
慣れた手捌きで、それらを無理無く形にしてしまうプルハル+ラルペッジャータの器用さは、以前のまま... モンテヴェルディを素材に、すばらしいクッキングを披露してくれる。それは、モンテヴェルディにおける"ヌーヴェル・キュイジーヌ"かもしれないが、まだまだ"クラシック"が教科書的イメージに納まってしまう前の、自由闊達だった頃に迫ることでもあり、単に新奇であるばかりでない、古楽アンサンブルとしての力量もきっちりと聴かせてくれる。そして、アルバムは、進むにつれてシリアスに... 飾ることなくモンテヴェルディそのものを響かせて、そんなあたりも印象的。『マドリガーレ集』第8巻からの「今や天も地も」の前半部分(track.11)の、静けさの描写などは見事。下手に古色蒼然となるのでなく、モンテヴェルディの同時代の絵画のような、鮮烈さと、ドラマティックさで、その時代のリアルに迫る。
それにしても、彼らの器用さに驚かされる。大胆にジャンルを越えて、何食わぬ顔で本来の場所へと戻ってきてしまう。また、それを1枚のアルバムの中でやってのけてしまうのだから、凄い... そんな、ジャンルを越境しつつ、モンテヴェルディへと還っていく、ラルペッジャータ的モンテヴェルディ、愛の劇場は、この作曲家の可能性を知る、洒落たカタログに。そして、そのカタログの示す先が楽しみになるのだが...
リアル、ジャルスキーのみならず、すばらしかった歌手陣の歌なども聴いてしまうと、モンテヴェルディのオペラを、しっかりと聴いてみたくなってしまう。

TEATRO D'AMORE L'ARPEGGIATA CHRISTINA PLUHAR

モンテヴェルディ : トッカータ
モンテヴェルディ : ああ、私は倒れてしまう 『ミラヌッツィの歌の諧謔』 第4巻 から
モンテヴェルディ : ずっとあなたを見つめ オペラ 『ポッペアの戴冠』 から
モンテヴェルディ : ほんとうに美しいダミジェッラ 『カンツォネッテ・エ・スケルツィ・ムジカーリ』 から
モンテヴェルディ : ニンファの嘆き 『マドリガーレ集』 第8巻 から
モンテヴェルディ : 苦しみが甘美なものならば 『ミラヌッツィの歌の諧謔』 第4巻 から
モンテヴェルディ : シンフォニアとモレスカ
モンテヴェルディ : 断ち切られた希望 『マドリガーレ集』 第7巻 から
モンテヴェルディ : 金色の髪で 『マドリガーレ集』 第7巻 から
モンテヴェルディ : 安らかにみな忘れ オペラ 『ポッペアの戴冠』 から
モンテヴェルディ : 天と地と風が沈黙し 『マドリガーレ集』 第8巻 から
モンテヴェルディ : 竪琴の調子を合わせて 『マドリガーレ集』 第7巻 から
モンテヴェルディ : バッロ
モンテヴェルディ : 唇よ、何とかぐわしく匂うことか 『マドリガーレ集』 第7巻 から
モンテヴェルディ : やさしい鳥は歌う 『マドリガーレ集』 第8巻 から
モンテヴェルディ : 西風が戻り 『スケルツィ・ムジカーリ』 から

ヌリア・リアル(ソプラノ)
フィリップ・ジャルスキー(カウンターテナー)
シリル・オーヴィティ(テノール)
ヤン・ファン・エルザッカー(テノール)
ジォアン・フェルナンデス(バス)
クリスティナ・プルハル/ラルペッジャータ

Virgin CLASSICS/2361402




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