SSブログ

二〇〇九。バロック・ロック、再び... [2009]

4780319.jpg
1010.gif
2009年は、ヘンデル没後250年のメモリアル...
となれば、どこもかしこも水上で... 花火で... 救世主がハレルヤで... となりそうだけど、そんな「メモリアル」商売には辟易?しかし、ヘンデルのレパートリーが"ピリオド"に取り込まれてしまってからというもの、「定番」は崩れつつある。録音においては、今や、とにかくオペラだったりする。バロック期ならではの、もの凄い数のオペラ(+救世主がハレルヤ... だけでないオラトリオも... )を世に送り出したヘンデルだが、そのほとんどがすでに録音され、リリースされているはず... いや、もしかして全部?その一方で、かつてよく取り上げられていた作品を見掛けることは、明らかに減り... そんな作品の、久々の新録音などを目にし、手に取り、耳にすると、思わず「懐かしい!」なんてことに。
で、そんな、懐かしい(?)レパートリー、ヘンデルの合奏協奏曲 Op.6を聴くわけだが...
この作品、メモリアルのせいか、再び注目度を増している?昨年のアルテ・デイ・スオナトーリ盤に続いて、イル・ジャルディーノ・アルモニコ盤が登場。それは、歌モノから、器楽モノへの回帰現象?メモリアルが引き起こす揺れ戻しとあらば、なかなかおもしろい展開。ということで、ジョヴァンニ・アントニーニ率いるイル・ジャルディーノ・アルモニコ... かつて"ピリオド"の空気感を変えてしまった革命児たちの、久々の新譜(これって、年末のリリース?けど、2009年、第一弾ということで... )、全12曲、3枚組、ヘンデルの合奏協奏曲 Op.6(L'OISEAU-lYRE/478 0319)を聴いてみることに。

まず、1番、1楽章... ガンガンに鳴らして、序奏からすでに大見得を切ってくるサウンドは、イル・ジャルディーノ・アルモニコならでは。まさに、革命児たちが帰って来た!と、強くアピールしてくる。そして、そんなテンションのまま、2番、3番... 全12曲を、一気に突っ走っていく。それも、ただ突っ走るのではなく、一曲一曲、しっかりと作品に向き合い、全ての音で手を抜かない熱っぽさ。アグレッシヴで、軽やかで、時に艶っぽく、何気ない表情の中にゾクっとさせるものを織り込み、歌うところはしっかりと歌い、「一曲入魂」といったフルスロットルな演奏は、どこかお上品なイメージもあるバロックの合奏協奏曲を、エキサイティングな音楽に変身させてしまう。彼らの、"バロック・ロック"なサウンドは、しっかりと健在で、バロックの、劇的なあたりを上っ面で強調して、そのエキセントリックさで、聴く側を煙に巻くような演奏とは、やっぱり違う... とにかく、作品の芯からホット!そうして綴られる『合奏協奏曲集』は、ただならない。全12曲、3枚組ともなれば、どこかで飽きも来そうだが、イル・ジャルディーノ・アルモニコの演奏は、飽きる暇を与えてくれないから凄い。
名物(?)コンサート・マスター、オノフリのヴァイオリンは、聴かせ所で、ヴィブラートを掛けることをためらわず、歌うところはたっぷりと... 一方で、弦楽セクションのキレ味は、一向に衰えず、空を切るようなノン・ヴィブラートで、エッジの鋭さを見せつけてくる。そこにきて、低音部の迫力は増したか?サウンドはより力強く、厚みをしっかりと聴かせ。そうした重量感と、エッジの鋭さの兼ね合いが、ヘンデルのおもしろさを、徹底的に響かせていく。もちろん、合奏協奏曲としての、腕利きたちの妙技も、あちらこちらで輝き、すばらしいのだが、その腕利きたちによる混然一体感は、とてつもない輝きを放つよう。
その輝きを生む、グラマラスさと、スタイリッシュさと、巧みにメリハリを付けてくるフレキシヴィリティは、21世紀型ピリオド・アンサンブルを意識させる。すでに受け入れられたことになっている"ピリオド"だが、イル・ジャルディーノ・アルモニコの演奏を聴いていると、改めて、ピリオド・アプローチからの挑戦状でもあるようで、聴く側として、そんな気迫に、ただただヤラれてしまうばかり。90年代のあの勢いは、進化(深化)を遂げ、21世紀においても、凄まじい。
それにしても、「バロック」のカッコ良さを感じずにはいられない。12曲、どれも魅力的。「バロック」でありながら、古さを感じさせないヘンデル特有のポップ感が、21世紀の感覚とも共鳴するようで、時代性を越えた魅力が充ち... バッハで得難い感覚... で、とにかく、一曲一曲が、カッコ良過ぎる!

HANDEL: TWELVE CONCERTO GROSSI, OP.6
IL GIARDINO ARMONICO ・ GIOVANNI ANTONINI


ヘンデル : 合奏協奏曲集 Op.6

ジョヴァンニ・アントニーニ/イル・ジャルディーノ・アルモニコ

L'OISEAU-lYRE/478 0319

TELDEC消滅で、録音の世界からはフェードアウト気味... naïveから、グルックのバレエと、それを引用したボッケリーニの交響曲を収録した、凝ったアルバム(naïve/OP 30399)をリリースしてはいたが、指揮のアントニーニはバーゼル室内管と、ベートーヴェンのツィクルスをスタートさせたりと、イル・ジャルディーノ・アルモニコはどうなってしまうのだろう?という思いが、いつもあった。一方で、次から次と、新たなピリオド・アンサンブルは登場し、彼らの始めた、彼らの様な演奏は、あちらこちらで聴かれるように... ならば、『四季』で、革命を成し遂げたイル・ジャルディーノ・アルモニコの役割は、終わったのかも?とも。
しかし、一安心である。L'OISEAU-lYREというしっかりとした場所を与えられ、これだけのヘンデルを聴かせてくれて。これから、どんなサウンドを届けてくれるのだろうかと、期待せずにはいられない。ちなみに、2009年は、ヘンデルのみならず、ハイドンのメモリアルでもあり、そうしたあたりのリリースの予定もあるよう... となれば、ファイあたりと、どんな勝負になるのか、かなり楽しみに。また、ヘンデルの方では、ベルナルダ・フィンク(メッゾ・ソプラノ)を招いて、『マリアの涙』が取り上げられるとのこと。




nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 2

あんぐすた

イルジャルディーノのコンマス&ソリストを二十年来つとめる、エンリコ・オノフリが、今年の12月紀尾井で四季を演奏する、という情報を得ました。既にご存じかもしれませんが、
ファンサイトに詳しい情報が出ています。
私はこれで、年末が待ち遠しくなってきました。
http://homepage3.nifty.com/enricoonofri/
by あんぐすた (2009-09-20 18:15) 

genepro6109

森麻季さんが、『ファルナーチェ』のアリアを歌う... というあたり、ずっと気になっておりました。で、行こうか、どうか、今、かなり思案中です。
もちろん、オノフリのヴァイオリンも楽しみです。
by genepro6109 (2009-09-20 23:31) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。