二〇〇八、12タイトル／100タイトル。

さて、交響曲、管弦楽曲、協奏曲に、室内楽、ピアノ、オペラ、ヴォーカルと来て、現代音楽、古楽、ボーダーライン上のエリアまで、10のカテゴリーから見つめて来た2008年のリリース。全部で25タイトル、印象に残るものを挙げてみたのだけれど、そこから、さらに絞り、そして、2008年のベストを選ぶ！いや、とうとう、ここまで辿り着きました。正直、どうなるかと思ったけれど... 中断していた更新を3月に再開。ダムラウの鮮やかなブラヴーラで目が覚めたか？そこから、6日に1回の更新を続け、5月の後半からは3日に1回とギアを一段上げ、カッチーニの『エウリディーチェ』まで、何とか走り切った2008年。そうして聴いた100タイトル。もの凄く感慨のある100タイトル... まずはそこから、12タイトルを選ぶ。

100タイトルを聴いた2008年。振り返っての12タイトル。
さて、この12タイトルで本当に良かったのだろうか？ヤングとパーヴォのブルックナーを外してしまったぞ？！協奏曲には、現代のフルート協奏曲集のみを選んでしまったぞ？！シュフのシューベルトを選んだ理由は、ラッヘンマンとのカップリングだぞ？！選んではみたものの、頭を抱える。いや、それほど悩ましい2008年。しかし、はっきりと言えることは、頭を抱えるほどに、すばらしかった！12タイトルと数を限った自身に問題があるんだ... とか、ブツブツ言いながら、この12タイトルから、再び、2008年を振り返ろうと思うのだけれど...

まず、2008年のリリース、最も驚かされた1枚は？

シュメルツァー+グランドラヴォワによる、"Poissance d'amours"(GLOSSA／GCD P32103)。13世紀のブラバントの音楽というのが、凄まじくマニアックで、すでに眩暈を起こしそうなのだけれど、そういうマニアックさなんて、軽くフっ飛んでしまうほどの、慄きすら覚える地声コーラスの圧倒的な存在感！地の底から響くようなドローンを聴いていると、それこそ眩暈を起こしてしまう。このグワングワンと腹に響く感覚！いや、人間の声って凄い！クラシック云々、音楽云々を越えて、「声」に思い知らされた1枚。本当に驚かされた。

そして、2008年、最も印象に残るアーティストは？

ダニエル・ハーディング！
ウィーン・フィルとのマーラーの10番、ロンドン響とのブリテンの『ビリー・バッド』。交響曲とオペラという、指揮者にとって両輪をなすフィールドから、それぞれ本当にすばらしい演奏を届けてくれたハーディング。もはや若手とも言えるほどキャリアは浅くなく、だからこその安定感... というより、迷いの無さに、グイグイ惹き込まれてしまった。一方で、下手に巨匠然とするわけでなく、やっぱり現代っ子感覚に貫かれていて、だからこそ大いに共感してしまう。我々の時代のマエストロなんだ！という支持を籠めて、この人を選ぼう...

そして、2008年のリリース、最も印象に残るアルバム！

ハーディング、ウィーン・フィルによるマーラーの10番の交響曲。聴き始めた瞬間、凄い！と感じ、聴き終えた瞬間、深く、深く感動していることに気が付かされる... 正直、ハーディングの若さに、そこまで期待していなかった。古き良きウィーン・フィルにも、どんなものだろう？と、懐疑的な目を向けていたのだけれど、見事に裏切ってくれる。若さを活かしつつも落ち着き、どころか、達観すら見せるハーディングと、ウィーンの伝統、本場の底力を思い知らされるサウンドを聴かせながら、老舗の老獪さを打ち破る力強い瑞々しさを響かせたウィーン・フィル。そうして、真新しい、確固たる音楽として存在を示し始めるマーラーの10番。未完であることなど吹き飛ばす、中身の詰まった音楽に圧倒され、作品そのものを見直し、思い掛けなく、強く惹き込まれてしまった。

と、まぁ、こんなチョイス。なのだけれど、語り尽くせていない！ということで、そのあたりは、後日... さて、年も明けて、ひと月が経とうとしております。すでに、新しいアルバムが、続々とリリースされていて、今年は、どんなCDに出会うことになるのだろうか？何はともあれ、クラシックが、常に刺激的であることを願いつつ、次回からは通常運行、2009年のリリースを取り上げます。

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オペラ | ヴォーカル | 現代音楽 | 古楽 | ボーダーライン上のエリア

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