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二〇〇八、現代音楽から... [overview]

2008年にリリースされた、交響曲、管弦楽曲、協奏曲、そして、室内楽、ピアノ、オペラ、ヴォーカルと見て来て、最後に、現代音楽、古楽、それから、クラシックとそれ以外のジャンルのボーダーライン上で揺らめく越境的な音楽を振り返ってみようと思うのだけれど... 今回、見つめる、3つのカテゴリーは、普段のクラシックからすると、異端。いや、異端、としてしまうことに抵抗もある。けど、やっぱり、異端、なのだろうなァ。しかし、異端なくらいだから、間違いなく刺激的!音楽史の膨大な蓄積の上に、まさに"今"の要素が加えられ、生まれる、現代音楽。あまりに古過ぎて、再創造的なアプローチを取る他ない、からこそ、新しさが生まれ得る古楽。さらに、次元の違うセンスを生み出す可能性を秘めた、異なるジャンルとの交流... こうしたあたりが注目されると、クラシックはまた違った角度から息衝き始めるんじゃないかなァ。そんな異端につい期待を抱いてしまう。
という思いを籠めまして、現代音楽、古楽、そして、ボーダーライン上のエリアを振り返る。で、また、興味深いタイトルがいろいろ... いや、異端なればこそ、それぞれに個性の際立ったタイトルばかりで、普段のクラシックとは一味違う魅力に強く惹き付けられる!
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では、現代音楽から... フランスの作曲家、ブルーノ・マントヴァーニの7つの教会(KAIROS/0012722KAI)。ボローニャにあるサント・ステファノ教会群(増築に次ぐ増築で、いつの間にやら教会建築史の博物館... )を音楽で表現するという作品は、IRCAM仕込みのエレクトロニクスを駆使し、何だかヴァーチャル。まるで、ダンジョンに侵入するかのよう... そうしたあたりにマントヴァーニの現代っ子感覚を見出して、何か共感してしまう... で、マルッキ+アンサンブル・アンテルコンタンポランによる演奏が冴え渡る!その鋭敏さに痺れてしまう。
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現代音楽... だけれど、これは「現代」なのだろうか?音楽に留まらない、マルチな才能を発揮する、アメリカの作曲家、メレディス・モンクの"impermanence"(ECM NEW SERIES/476 6391)。マントヴァーニからは一転、シンプルな音楽が見せる現代のファンタジー!わらべ歌のような、どこか懐かしく、キャッチーなメロディーに、ついつい聴き入ってしまうのだけれど、ぼんやりとミステリアスで、知らず知らずの内に、何かの秘儀に立ち合わされているような、恐さも?けれど、聴き入らずにいられない。癖になる音楽。魅入られてしまったか?
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古楽は、とにもかくにも驚かされた、このアルバム... シュメルツァー+グランドラヴォワによる、13世紀のブラバントの様々な愛を拾い集めた1枚、"Poissance d'amours"(GLOSSA/GCD P32103)。民俗音楽学者、シュメルツァーならではの、古楽を逸脱するような地声コーラスの壮絶なるインパクト!神への愛の圧倒的な様に慄いてしまう。いや、これこそが、剥き出しのゴシックなのかも... 一方で、トルヴェールたちが歌った、恋人への愛の素朴さは、まるでフォーク・ソング... 13世紀のブラバントという狭い場所からこれほどの幅というのが、凄い。
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ジャンルを越境する刺激的なアルバムを見て行こうと思うのだけれど、まずは、古楽とジャズを結ぶ、ダウランド・プロジェクトによる"Romaria"(ECM NEW SERIES/476 5780)。グレゴリオ聖歌に始まって、ゴシックやルネサンスの歌を素材に、ジャズで彩る?いや、そう単純な仕上がりではなく、エレクトリックにも処理されて、ニューエイジっぽい?ジャンルの枠組みそのものを消失させ、その先に、古(イニシエ)が際立つという、不思議さ... 古い音楽を現代から読み解き、音楽の深淵へと降りて行くような、独特なディープさが、何とも言えない味わいに...
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実は、クラシックにおいて最も柔軟性に長けているのが古楽ではないか?そんなことを、近頃、思うのだけれど... いや、それを思い知らされる1枚、クロード+アロマートによる"Rayon de Lune"(Alpha/Alpha 521)。かつてイスラム勢力が支配した中世イベリア半島の音楽を、ヨーロッパの古楽器で鳴らしたら?という、不思議な試み... アラブのメロディーと、ヨーロッパのサウンドが融けて生み出される、これまで味わったことの無いテイスト... それでいて、とても洗練されているというおもしろさ!何なんだ?これは... ただならず眩惑されてしまう。

ところで、新譜の他に、旧譜を4タイトルほど聴いた2008年。そのあたりもさっくりと振り返ってみようかなと... まず、ボーダーライン上のエリアということで、クロノス・クァルテットによるビル・エヴァンス!クラシックからアプローチするビル・エヴァンスは、19世紀のフランスのサロンを思わせて、不思議とクラシカル?そのあたりが、新鮮な発見。弦楽四重奏(ベース、ギターも加わるのだけれど... )という、極めてクラシカルな編成が引き出すケミストリーだったかなと... で、素敵!それから、クレーメル+クレメラータ・バルティカによるピアソラ!こちらは、北欧のアンサンブルがラテンを奏でて生まれるケミストリー!もちろん、デシャトニコフとクレーメルによるアレンジも効いているのだけれど、ピアソラのクールさが引き出されて、すっかり惹き込まれてしまった。
さて、クラシックに帰りまして、生誕150年だったハンス・ロットの交響曲、セーゲルスタムの指揮、ノールショピング響の演奏で聴いてみたのだけれど... 北欧ならではの鮮烈、瑞々しさが、夭折の作曲家の若気の至り的な音楽を見事に引き立てて、何だか苦しくなってしまう。その音楽に展開された思いの丈と、挫折の背景に、ただならず共感。一転、ヴィルトゥオーゾによる作品を、現代のヴィルトゥオーサで聴く... 諏訪内晶子のヴァイオリンでサラサーテのツィゴイネルワイゼン!サラサーテ、没後100年ということで手に取ったのだけれど、カップリングにはドヴォルザークのコンチェルト。で、単に名曲を聴くに留まらない、ジプシー文化とクレズマー音楽という、ヨーロッパで独特な位置にあるフォークロワをさり気なく盛り込んで来る諏訪内さん... 凄い!

ふぅ。ちゃんと、おまけの旧譜、4タイトルも振り返れて、一安心。で、10のカテゴリーから見直してみた2008年のリリース。うん、やっぱり、もの凄く充実したものを感じる。充実し過ぎて、一部、あれもこれも挙げ過ぎてしまったほど... そういう嬉しい苦悩を経て、さらに、2008年のベストを選んでみようと思うのだけれど、ウーン、選べるか?というあたりは、次回へと続く...

交響曲 | 管弦楽曲 | 協奏曲 | 室内楽 | ピアノ
オペラ | ヴォーカル | 現代音楽 | 古楽 | ボーダーライン上のエリア




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