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二〇〇八、室内楽から... [overview]

改めて2008年のリリースを見つめると、どれもこれも魅力的過ぎて、ちょっと途方に暮れてしまう。いや、ベストを選ぶにあたり、もう一度、いろいろ聴き直してみるのだけれど、聴き直せば聴き直すほど、どれもこれもすばらしく感じられて、実に興味深いものであって、悩ましい。考えてみると、いい加減なものをリリースしようなんてアーティストはいないわけで... そこに、クラシック特有の歴史の重みが加わって、かつての作曲家たちの思いやら何やらが時空を越えて1枚の盤面に籠められたなら、ダメなものは生まれにくいのかも... なんて思うのは、極楽トンボだろうか?ま、それでいいのです。貪欲に楽しむ!これが、当blogのスタンスかなと...
ということで、2008年のリリース、交響曲、管弦楽曲、協奏曲に続いての、室内楽、ピアノ、オペラ、ヴォーカルを振り返ります。そして、これまたすばらしいものばかり!なのだけれど、このあたりで、ちょっと引き締めまして、しっかりと選ぶ!と、意気込んでみる。
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室内楽、まずは弦楽四重奏のど真ん中とも言える作品... イェルサレム四重奏団によるシューベルトの「死と乙女」(harmonia mundi/HMC 901990)。今さらとも思える名作を、若い才能が捉えるとマジック!いや、もう、何て言ったらいいのだろう。教科書的にロマン主義で、ドラマティックで、というあたりを、滴るように繰り出すイェルサレム四重奏団。若いアンサンブルなればこその集中力が、作品をこれまでにない次元にジャンプさせてしまう。そうして響き出す独特な濃密さ。そういう密度から生まれる異様なほどの瑞々しさ。ただならない。
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ドビュッシーのピアノの名曲をハープで弾いたなら?という異色作... ウィーン・フィルの首席ハーピスト、メストのハープによるドビュッシーの作品集(RCA RED SEAL/88697222492)。まず、この楽器のステレオタイプをブチ壊す、力強い響き!パリっと鳴る一音一音に強く惹き付けられる。そういう音で、印象主義の音楽の音楽を捉えると、隅々まで輝き出し、思い掛けない精悍な姿を現し、驚かされる。これは、ピアノでは絶対に味わえないテイスト... 弦を爪弾くハープだからこそ、一音一音が心地良く弾けて、このスパークする感覚がたまらない!
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そして、ピアノ。まずは、注目のピアニスト、シュフが、ラッヘンマンの作品とシューベルトのソナタを弾くアルバム(OEHMS CLASSICS/OC 593)。ラッヘンマンによるシューベルトの主題による5つの変奏曲から、シューベルトの「幻想」が立ち現れるという、思いもしなかった展開!何という組合せ!その意外性からして、もうノックアウト... で、圧巻は、シューベルトのソナタから、ラッヘンマンのグエロへと至る最後。特殊奏法により音楽は解体され、まったく違うものに変貌して行く... というより、それはもう猟奇的... ラッヘンマンの異様に慄きつつ、惹き込まれる。
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特殊奏法から一転、ピリオドのピアノによる落ち着いた響きが印象的な、ブラウティハムによるベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集、vol.6(BIS/BIS-SACD-1573)。21番から25番までの、ベートーヴェンの中期のソナタが取り上げられるのだけれど、ピリオドのピアノの抑制的な響きが絶妙!「ワルトシュタイン」や「熱情」が、渋いサウンドで捉えられると、思い掛けず音楽が明瞭になる感覚があって、おもしろい。いや、美しい!ピリオドのピアノなればこその癖を物ともしないブラウティハムの明確なタッチは、ベートーヴェンの美しさを鮮やかに引き立てる!
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さて、オペラなのだけれど、全曲盤のリリースは減少傾向という中で、興味深いリリースもあった2008年... そうしてひとつ、ベルカント・オペラの人気作が、とうとうピリオドで... という感慨が先に立った、バルトリがアミーナを歌うベッリーニのオペラ『ラ・ソナンブラ』(L'OISEAU-LYRE/478 1087)。デ・マルキ指揮の、ピリオド・オーケストラ、ラ・シンティッラ管のファンタジックな響きが、このオペラの魅惑的なあたり、夢遊病の心許無さ、あるいは無垢さを絶妙に引き立て、聴き入ってしまう。で、そういうファンタジックな中、見事に歌い上げるバルトリ!さすが...
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ベルカント、ピリオドからは一転、20世紀の硬派な作品、ハーディングの指揮、ロンドン響によるブリテンのオペラ『ビリー・バッド』(Virgin CLASSICS/5 19039 2)。舞台は軍艦、男声のみによる異色のオペラ、なのだけれど、いやー、ブリテンならではのヴィヴィットさを際立たせ、圧倒的なスペクタクルを繰り広げ、濃密なドラマを紡ぎ出すハーディング。その手腕に、唸ってしまう。そこに、タイトルロールを歌うガン、艦長を歌うボストリッジら、魅力的な歌手陣がドラマを息衝かせ、惹き込まれる。しかし、このオペラは20世紀オペラの最高傑作のひとつだわ...
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歌曲から教会音楽まで、広く声楽曲をカヴァーする。ということで、ヴォーカル... まずは、アンドレアス・シュペリング+カペラ・アウグスティーナ、ヴォーカル・アンサンブル・ケルンのコーラス、インヴェルニッツィら手堅い歌手たちによる、ハイドンのオラトリオ『トビアの帰還』(NAXOS/8.570300)。『天地創造』、『四季』ではないハイドンのオラトリオの新鮮さ!その晩年の傑作とは一味違う、当世風な魅力!というあたりを、ナチュラルに、活き活きと描き出すアンドレアス・シュペリング。もうひとつのハイドンのオラトリオの存在を見事に示す!
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続いても、珍しい作品... ボットスタインの指揮、BBC響の演奏、同響のコーラスを中心に、少年合唱も動員、フィンリーら4人のソリストを擁しての、フィールドのワールド・ミュージック(CHANDOS/CHSA 5058)。第1次大戦の犠牲者を悼む作品なのだけれど、とにかく規模がデカい!よって、取り上げ難い... ところを挑んだボットスタイン!見事にその壮大さを捌き切り、ワールドどころか、ユニヴァーサルな印象すら与えるフィールドの音楽を鮮やかに響かせて、圧倒!しかし、壮大だけれど美しい... 魅了されずにいられない...

という、室内楽、ピアノ、オペラ、ヴォーカル、2タイトルずつに絞りこんでみました。で、メジャーもマイナーも、モダンにピリオドと、幅広く魅力溢れるタイトルが揃っていたことが印象的だったなと... で、次回は、古楽、現代音楽、さらに+αと続きます。

交響曲 | 管弦楽曲 | 協奏曲 | 室内楽 | ピアノ
オペラ | ヴォーカル | 現代音楽 | 古楽 | ボーダーライン上のエリア




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