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二〇〇八、交響曲から... [overview]

さて、下半期を振り返ったので、2008年全体を振り返る!って、もう、ワクワクします。2008年、最も印象に残るアルバムは何だったか?いやー、あり過ぎて、迷う。というより、頭を抱えるレベル。2008年のクラシックは、メジャーもマイナーも、もの凄く充実していた印象。で、思いっきり楽しんだなと... ベートーヴェンの交響曲も、中世の典礼劇も、エレクトロニクスを用いた現代作品も、ヴィルトゥオーゾ・コンチェルトも、南米の陽気な音楽も、ベルカント・オペラも... いや、それら全てを楽しめたことに、自身の成長をも見出す。あれは苦手、これは嫌い... 気が付くと、結構、克服されているもので、何より、そうなってこそ見えて来る景色もあるのかなと... いや、クラシックに限らずだけれど、自ら壁を作ってしまって、選り好みしてしまうことは、結局、自身が損をすることなのだろうなァ。なんて、今さらながらに、噛み締める。それだけ、マックスに楽しめた2008年、クラシック!
ということで、2008年のリリース、当blogで取り上げた100タイトルを、10のカテゴリーから見つめます。で、今回は、オーケストラによる3つのカテゴリー、交響曲、管弦楽曲、協奏曲を振り返りつつ、それぞれの最も印象に残るタイトルを選んでみたいなと...

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ウーン、交響曲なのだけれど、どれもこれもすばらしく、絞り切れない!いや、もう、全部、紹介したいくらいなのだけれど、そこから、苦し紛れに5タイトルも選んでしまう... まずは、ダウスゴー+スウェーデン室内管による"Opening Doors"のシリーズ、シューマンの「春」(BIS/BIS-SACD-1569)。モダン+ピリオドのハイブリッド、「室内」という規模、そういうチャレンジングなあたりが、いよいよ以って結晶化!ダウスゴーの独特な感性の下、切れ味鋭いオーケストラが、ひとつの有機体のようになって繰り広げる、ロマン主義の春の濃密な輝き!
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そして、インマゼール+アニマ・エテルナ、ピリオド・アプローチによるベートーヴェンの交響曲全集(Zig-Zag Territoires/ZZT 080402)。いや、最初は戸惑った... というより、期待していたインパクトが無い?どこか飄々と繰り出される9つの交響曲に、肩透かしを喰らう。しかし、透かされて見えて来るものが... いや、ドヴァーっと視界が開けて、うわぁー!っとなる。ベートーヴェンが生きたその時へと帰る生々しさ!楽聖の音楽ではなくて、猥雑で、時に軽薄ですらあったろう、ベートーヴェンを取り巻いた時代そのものをクローズ・アップしたインマゼール...
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ブルックナーが苦手だった。それほど昔の話しではない。が、今、これほど魅力的に感じる作曲家はいない... 19世紀にあって、この作曲家が生み出す峻厳な世界は、とても現代的に思える。のだが、ヤング+ハンブルク・フィルによる4番、「ロマンティック」(OEHMS CLASSICS/OC 629)は、現代ではなく太古へ還るかのよう... 全てが雄大に流れてゆき、男性的、構築的なブルックナーの音楽世界を、大地に根差した音へと返す、注目の女性指揮者、ヤング。上っ面のフェミニズムなんかではない、その深い女性性から生まれるスケールに圧倒される。
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そして、もうひとつブルックナー。パーヴォ+hr響による新たなツィクルス、その第1弾、7番(RCA RED SEAL/88697389972)。2008年、最も輝いていたマエストロかもしれない... ベートーヴェンの5番も、プロコフィエフの5番もすばらしかった... けれど、ブルックナー!ヤングとはまた違って、これまでのブルックナーのイメージを覆す、何とも言えないやわらかな雄大さ。パーヴォが魔法を掛けて、ブルックナーの武骨さをナチュラルに変換してしまうようで。そうして広がる、新たなファンタジー!美しさに酔いながら、最後はワクワクしてしまう。
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さて、2008年のリリースから、交響曲、最も印象に残った1枚が、ハーディング、ウィーン・フィルによる、マーラーの10番(Deutsche Grammophon/477 7347)。嗚呼、何て美しいのだろう... まるで、時が止まるような美しさ... 最初の一音を聴いた瞬間からため息をついているような、そんな感覚すらある。それでいて、その美しさに、マーラーが苦悩した諸々が、今、解き放たれるかのよう。19世紀に引き摺られもがく20世紀を生きたマーラーが、ハーディングという21世紀の感性によって浄化されて行くよう。それが、沁みる。
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ちょっと、交響曲にスペースを割き過ぎたので、ここから締めて参ります。ということで、管弦楽曲、最も印象に残ったのが、メルシエ+ロレーヌ国立管によるフローラン・シュミットの劇音楽『アントワーヌとクレオパトラ』からの2つの組曲(timpani/1C1133)。この作曲家ならではの豊潤なサウンド!フランスならではのエキゾティシズム!これを、鮮やかに、煌びやかに響かせるメルシエ!往年のハリウッド歴史大作(エリザベス・テーラーのイメージ?)を思わせるゴージャスさに、直球勝負のオーケストラの魅力がテンコ盛り!何だかこれが新しく感じられる。
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そして、ピリオドからビゼーの名作に斬り込んだ、ミンコフスキ+レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルの『カルメン』前奏曲と間奏曲、『アルルの女』組曲(naïve/V 5130)。さすが、ミンコフスキ、鮮烈... 期待を裏切らない、レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルの切れ... 十分に聴き知ったはずの音楽が、またイメージを刷新して来る。何と言うのか、南欧の鮮やかな色彩を聴き手にブチまけて来るような迫力。あまりの鮮やかさに、目が眩み、慄きすら覚えるほどの切っ先の鋭さを見せて、聴き知ったなんて安易に言えなくなる仕上がりに衝撃を覚える。
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さて、協奏曲、まずは、パユによる21世紀に作曲されたフルート協奏曲集(EMI/5 01226 2)。本来、現代音楽にカテゴライズすべきアルバムだとは思うのだけれど、パユのヴィルトゥオーゾっぷりに圧倒され、魅了され、協奏曲にカテゴライズしてしまう。もちろん、作品もすばらしいのだけれど、何たってパユの妙技!"ゲンダイオンガク"の気難しさなんて吹き飛んでしまうスーパー・プレイ!本物の音楽というのか、凄い演奏というのは理屈抜きなのだなと、改めて思い知らされる。そんなパユ、セレクションによる、最新のコンチェルトもクール!
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現代から一転、まさにヴィルトゥオーゾ・コンチェルト!ブリュッヘン+18世紀管の演奏、ダン・タイ・ソンが弾く1849年製、エラールのピアノで聴く、ショパンのピアノ協奏曲(Narodwy Instytut Fryderyka Chopina/NIFCCD 004)。ポーランド国立ショパン協会によるショパンの時代のピアノを用いてのショパンの全曲録音!つまりピリオドによる全集というトンデモないプロジェクトがスタート。で、早速のコンチェルトのリリースなのだけれど、いやー、ピリオドによるショパンのクリアさ!その一方で、味わい深いサウンドに惹き込まれ、魅了されるばかり...
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時代を遡って、バロック!ベイエ+グリ・インコーニティによるヴィヴァルディの「四季」(Zig-Zag Territoires/ZZT 080803)。今さら「四季」か?とも思うのだけれど、いや、だからこそ「四季」かも... そんな思いを充たしてくれたベイエ... グリ・インコーニティの目の詰まったアンサンブルに、そのコンティヌオがまた存在を主張するようで、低音から魅了して来るおもしろさ!そうして、しっかりと歌い上げるベイエのヴァイオリン。奇を衒うのではない、もっと自然に「四季」を捉えて、より音楽的な「四季」を紡ぎ出すのか、息衝くも希有な素直さが魅力的。
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もうひとつヴィヴァルディなのだけれど... こちらは、これまでにない視点でヴィヴァルディを捉えていて、そういう興味深さがまずあるのか... ドイター+アルモニー・ウニヴェルセルの、ヴィヴァルディ、初期ヴァイオリン協奏曲集(ELOQUENTIA/EL 0815)。膨大なコンチェルトを残したヴィヴァルディということで、どれが先で、どれが後に来るかなんて、これまであまり意識して来なかったけれど、「初期」という括りで聴くヴィヴァルディはとても新鮮!またアルモニー・ウニヴェルセルの演奏がすっきりとして端正で、「初期」の初々しさを引き立てる!
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いやはや、何だかんだで、協奏曲も5タイトルを選んでしまう。で、その5タイトル目、ツェートマイアーが弾く、ツィンマーマンのヴァイオリン協奏曲(ECM NEW SERIES/476 6885)。久々にガツンと来る本物感というか、近代音楽ならではのビターなあたりが直球過ぎて、圧倒される!とにもかくにも、20世紀... そう、20世紀とは、こういう臭いがしていた... そんな聴き応えが、味わい深くもあり、ノスタルジックでもあり... でもって、ツェートマイアーのストイックかつパワフルなヴァイオリンが、またハード・ボイルド... 痺れる。

ひとつのカテゴリーで5タイトルも選ぶなんて選び過ぎだよ... とか思いつつ、実はもっと選びたかったくらいで、本当にすばらしいタイトルが多かった2008年。さて、次回は室内楽、ピアノ、オペラ、ヴォーカルと続きます。次回は、もう少し絞り込まねば...

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