SSブログ

ダウスゴー... 恐るべきマエストロ。 [2008]

BISSACD1619.jpg
1010.gif
気鋭の指揮者、トマス・ダウスゴーと、彼が率いるスウェーデン室内管弦楽団による、5タイトルが予定されているBISのシリーズ、"Opening Doors"の4つ目、3枚掛かりのシューマンの交響曲全集の最後... 3番の「ライン」と、改訂版の4番を収録した最新盤(BIS/BIS-SACD-1619)がリリース。いつも刺激的なモダン/ピリオドのハイブリット編成で、オリジナル主義の先に驚くべき世界を見せてくれるこのシリーズ、当然ながら、最新盤も大いに期待せずにはいられないわけでして... ということで、早速、手に取ってみた。

いやぁー、ここのところ、バロックばかりを聴いてきたものだから、エモーショナルなロマン主義のシャワーを浴びてしまうと、なんだか溶けてしまいそう。もちろんバロックの音楽はすばらしいのだけれど、こうしてシューマンの作品、そのオーケストラ・サウンドに触れれば、"クラシック"に戻って参りました!というような、妙な実感があったり。とはいえ、独自の視点でオリジナル主義を極めるダウスゴーだけに、コテコテの"クラシック"はそこにあり得ないのだけれど。
定石に流されず、徹底してスコアを見つめ、作曲家そのものと対峙し、響かせる究極の音... とでも言うのか、安易なところがまったくない。まさに、ダウスゴー+スウェーデン室内管ならではのサウンドがそこにある。1曲目、「ライン」(trsack.1-5)の、まさに雄大なライン川を描く、壮大な風景画... というステレオタイプを断ち切って、このシリーズのこれまで同様、指揮者、オーケストラが完全に一体となって生まれてくる音楽の魅力は、平面的な壮大さとは違う、濃密さ、凝縮感が、三次元のように迫って来るあたり。そうして、「ライン」の情緒に流されることなく突き進む彼らのサウンドは、瞬発力、弾力性、柔軟性に充ち、どこかトップ・アスリートのような、しなやかな力強さが印象的。"Opening Doors"も4つ目ということで、ダウスゴー+スウェーデン室内管の一体感はますます深まり、まるで一つの有機体のよう(と、以前も感じたが、最新盤ではさらに... )で。そうした彼らの特性は、最後の、4番(track.8-11)でこそ輝くよう...
改訂版では、全ての楽章が切れ目なくつなげられ、作品自体も一つの有機体?のように凝縮された特異な交響曲、4番。ダウスゴー+スウェーデン室内管は、その悲劇性とドラマティックな流れを巧みに捉えて、一気に聴かせてくる。快速でありながら、けして軽くならず、彼ら特有の密度の濃さで、「室内」という規模を忘れさせる重量感を生み出して。その重さから繰り出される推進力は、ただならない緊張感を漲らせ、聴く者をグイグイと引き込んでしまう。まるで、衝突型加速器でブラックホールを創り出すような... 特異な作品と特異な演奏家たちが、周到な計算により、真正面からクラッシュし、予想外の音楽世界が出現?これまでのシューマンとは、4番とは、違う場所に存在するかのような、ダウスゴー+スウェーデン室内管ワールド。かつて体験したことのない不思議な世界に、聴き馴染むまで、違和感を感じたかもしれない... が、一度、彼らの場所に立ってしまえば、後はもう、ただただ、他ではあり得ない特異な魅力を堪能するばかり。
モダン/ピリオドの"ハイブリット"、"オリジナル主義"も、かつてのイメージを乗り越えて、さらなる進化を遂げつつある。が、"Opening Doors"のシリーズを聴いてくると、その先にどういう音楽世界が拓けていくのか、ちょっと想像がつかない。それは、"クラシック"のイメージすら変容させてしまいそうな、そんな力をも感じて、このシリーズのラディカルさには、眩暈を覚えなくもなく。
ダウスゴー... 恐るべきマエストロ。

Schumann ・ Symphonies Nos 3 & 4 ・ Overtures ・ SCO / Dausgaard

シューマン : 交響曲 第3番 変ホ長調 Op.97 「ライン」
シューマン : 劇音楽 『マンフレッド』 Op.115 序曲
シューマン : 『ヘルマンとドロテア』 序曲 Op.136
シューマン : 交響曲 第4番 ニ短調 Op.120 〔改訂版〕

トマス・ダウスゴー/スウェーデン室内管弦楽団

BIS/BIS-SACD-1619


さて、"Opening Doors"でのシューマンの交響曲全集では、必ず珍しい序曲も付いてくるのがお楽しみだったり... そして、このアルバムには、『ヘルマンとドロテア』序曲(track.7)が付いてきて... ヘルマンとドロテア?そういう作品があるのかと、初めて知るのだけれど、これがまた、ラ・マルセイエーズ(フランス国家)のメロディが編み込まれていたりして、なんか、妙。とりあえず、シューマンが、こういうメロディにも興味を持っていたのかと、おもしろく聴いてみる。
一方、『マンフレッド』序曲(track.6)も収録されており、こちらは、その劇的な音楽を、ダウスゴー+スウェーデン室内管が、交響曲同様に密度の濃いサウンドで仕上げてきて。その、うねるドラマティシズムには、魅了されずにいられない。で、こういう演奏を聴いていると、彼らがヴェルディの序曲あたりを取り上げたなら、そうした音楽はどのような姿を見せるのだろう?と、そんな欲求が湧いてくる。




nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。