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四季はめぐり... 21世紀... [2008]

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はてさて、また『四季』か... と思いつつも、ついつい手を出してしまう。
フランス、サブレ・バロック音楽祭の30周年を祝う、Zig-Zag Territoiresからのアルバム、アマンディーヌ・ベイエ(ヴァイオリン)率いる、ピリオド・アンサンブル、グリ・インコーニティによるヴィヴァルディの『四季』(Zig-Zag Territoires/ZZT 080803)。

ということで、現在の"ヴィヴァルディ演奏"の始まり、イル・ジャルディーノ・アルモニコの演奏に立ち返ってみようと、彼らによる15年前の『四季』を引っ張り出して聴いてみた。が、それまでのヴィヴァルディのイメージ(麗しきイ・ムジチによる?)を完全に塗り替えてしまった演奏も、改めて聴いてみれば古くなりつつある。イル・ジャルディーノ・アルモニコの『四季』を初めて聴いた時の衝撃は、今でも忘れられないものだが、ベイエ+グリ・インコーニティの『四季』を聴いた後では、こんなものだったかと、少しガッカリしてみる。
ピリオド・アプローチによるヴィヴァルディというと、"クラシック"にあっては、間違いなく刺激的で、バロック・ロックな気分が炸裂して、どれもエキサイティング!イル・ジャルディーノ・アルモニコ以後、イタリアのピリオド・アンサンブルを中心に、数々の名盤が生まれたわけだが、一方で、激しさとキテレツさで競い合うようなところもあって、かえってどれも同じように聴こえ... また『四季』か... と、21世紀"ヴィヴァルディ演奏"の憂鬱。どことなしに、そういうものが漂うような。
そういう中での、ベイエ+グリ・インコーニティの『四季』はどうなのか?間違いなく、激しさのヴォルテージは上がっている。が、不思議と全てが冷静に進められていく。妙に自然描写(ヴァイオリニストの腕の見せ所?)にこだわることもなく、イタリア・バロックの激情(ピリオド・アプローチならではのプリミティヴ?な魅力... )に溺れることもなく... それは、灰汁の強い演奏ばかり聴いてきたからか、初め、引っ掛かりの無いものに聴こえて、掴み所を探して、あたふたしてみる。が、ベイエ+グリ・インコーニティの世界に目が慣れてくると、そこにある全てが、掴み所のように見えてきて... いや、驚くほど濃密な音楽が存在している。

イル・ジャルディーノ・アルモニコ以後の『四季』というのは、「音楽」という枠からどれだけ自由になれるか、如何に鮮烈なサウンド・スケープを見せつけることができるか、そのために、どれだけ大胆に作品にアプローチできるか... に、掛かっていたように振り返るのだけれど、ベイエ+グリ・インコーニティの『四季』は、そうした場所から抜け出して、ただただ「音楽」であるあたりが新鮮。ある部分を際立たせるために、ある部分を弱めるということのない、全てが全力で紡がれていく。すると、「音楽」として、極めて力強く響き。チェロ、ヴィオローネ、テオルボといった低音部を担う楽器の音がしっかりとしたアンサンブルのサウンドは、重心低めで、ヘヴィーなヴィヴァルディが展開されていくのもおもしろい。一方で、ベイエのヴァイオリンは、しっかり歌う。自然描写に凝るのではなく、ただ"歌"を歌うのが印象的。そうして奏でられる『四季』は、「音楽」として、しっかりとした手応えがあって、頼もしさすらあるよう。それでいて、クール!
しっかりと温度を保ちながら、どこか冷めている... この感覚はかなり刺激的かもしれない。

Vivaldi ・ Les Quatre Saisons ・ Gli Incogniti | Amandine Beyer

ヴィヴァルディ : ヴァイオリン協奏曲 ト短調 RV 578a
ヴィヴァルディ : ヴァイオリン協奏曲 変ロ長調 RV 372 「シニョーラ・キアラのための」
ヴィヴァルディ : 協奏曲集 『四季』
ヴィヴァルディ : ヴァイオリン協奏曲 ロ短調 RV 390

アマンディーヌ・ベイエ(ヴァイオリン)/グリ・インコーニティ

Zig-Zag Territoires/ZZT 080803


さて、『四季』の他に、3つのコンチェルトが収録されているのだけれど、1曲目、2つのヴァイオリンとチェロの ための協奏曲 RV 578a(track.1-4)が、世界初録音とのこと。『調和の霊感』の2番の協奏曲の、初期稿で、音楽学者、オリヴィエ・フォーレ氏により、この『四季』が録音される少し前に発見されたのだとか... ちょっぴり興味を引くところ。しかし、そういうこと云々よりも、アルバムの始まりとして、なかなかインパクト(いつものものとは、やはり少し違う... )があって、『四季』が始まる前から、ベイエ+グリ・インコーニティの演奏に魅了される。続く、RV 372のヴァイオリン協奏曲(track.5-7)、最後のRV 390のヴァイオリン協奏曲(track.20-23)では、ベイエのナチュラルなソロが輝き、作品は瑞々しさに溢れる。で、思う。
尋常ならざる作品を残したヴィヴァルディ、『四季』は傑作だが、後はどれも同じように聴こえてしまう?時折、そんなことを考えてしまうのだが、傑作ではない作品の何気なさに潜む、はっとするような輝きはまた、ヴィヴァルディならではであり... 『四季』以外の3つのコンチェルトにもやはりそうしたものがあって、ヴィヴァルディのそんな魔力に捕まり、心奪われる。一方で、『四季』が生まれた当時、その協奏曲集に触れた人々にとって、それは、相当に衝撃的だっただろうなと、想像してもみる。

さて、サブレ・バロック音楽祭の30周年を祝う、Zig-Zag Territoiresからのアルバム、もう一枚、ヴァーツラフ・ルクス率いるコレギウム1704の、ゼレンカのミサは、いつ入荷するのだろう?




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