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バロック的野外フェスな楽しみ。 [2008]

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オーボエ奏者、アルフレード・ベルナルディーニが率いる、管楽器専門というあたりが稀有な、イタリアのピリオド・アンサンブル、ゼフィロが、弦楽器も加えたオーケストラ仕様で、ヘンデルの名曲、『王宮の花火の音楽』を取り上げる... となると、期待せずにはいられない。野外用の、花火に負けない勇壮な音楽は、まさにブラスが大活躍の作品だけに、専門家集団、ゼフィロであったならばと... が、おもしろいのは、ヘンデルが野外で演奏した作品を、野外で録音してしまったというあたり。
『王宮の花火の音楽』に関しては、話題となったコンセール・スピリチュエルの、セレブレーションを再現した巨大な編成(来日公演はどうだったのだろう?)とまではいかないが、王宮での花火の後、編成を縮小して、再び野外で演奏されたものを再現。また、同じように野外で演奏されたという、3つの、二重合奏体のための協奏曲も収録され。コンサートホールとは違う、野外イベント(?)ならではの開放感も楽しめそう?そんな、ゼフィロの最新盤を聴いた。

いやー、カッコ良過ぎです。『王宮の花火の音楽』も、二重合奏体のための協奏曲も...
その当時の、ロンドン市民が、その新作に、一喜一憂したというほど、ヘンデルは広く受け入れられていたと、歴史には綴られているけれど、ゼフィロのアグレッシヴな演奏で聴くと、ただただ、そのことに納得。そして、ヘンデルのサウンドは、21世紀においてもカッコいい!『王宮の花火の音楽』、序曲の、まさに"王宮"にふさわしい荘重さの後でやって来る、まさに"花火"のようにスパークしてくるビートは、ノラずにはいられない。って、そういう音楽だとは、重々知っているはずが、ゼフィロの演奏で聴けば、専門家集団によるブラスの鳴りが圧倒的(野外ならばこそ?)で、"クラシック"の辛気臭さを完全に吹き飛ばして、エキサイティング!
ニケ率いるコンセール・スピリチュエルの、セレブレーション(初演)を完全復元した驚くべき100人編成での録音(Glossa/GCD 921606)は、まるで重戦車(ピリオドでこういうイメージを創り出すとは!)のようで、衝撃的。ああいうものをやられてしまうと、他の演奏が聴けなくなってしまうのだが、ゼフィロもまた、ゼフィロなりの迫力、エンターテイメント性を聴かせてくれて、間違いなくおもしろい。そんな彼らのイメージは、派手な"ビッグバンド"?小回りの利く編成で、腕利き達が存分に鳴らしてくる。そこに、イタリア的"伊達"もあって、粋で、魅力的(そして、それは、ニケ+コンセール・スピリチュエルには無かったものかも... )。
また、弦楽セクションも、ステファノ・モンタナリ(ヴァイオリン)、ガエターノ・ナシッロ(チェロ)ら、ゼフィロ・レギュラーに負けない腕利きが揃い、もちろん演奏も負けていない。彼らが聴かせる「キレ」と「ツヤ」は、イタリア・ピリオド界の"弦"ならではの真骨頂。そこに、ビアジオ・カルロマーニョの太鼓が、ここぞというところで派手に打ち鳴らされれば、迫力だって十二分。
そんな、『王宮の花火の音楽』の後に演奏される、3つの二重合奏体のための協奏曲も、また魅力的で... この作品も野外で演奏されたとは知らなかったが、改めて聴いてみれば、やはり"野外用"なのか、ゼフィロの面々が吹かしてくると、これまで感じたことのない開放感が広がり、印象的。で、おもしろいのが、フランチェスコ・コルティのチェンバロ。野外というチェンバロにはまったく不向きな状況で、必至に掻き鳴らしてくるあたりが程好くアクセントに。もちろんチェンバロに限らず、どの楽器も苦労したはずだろうが、コンサートホールでディテールに神経を尖らし、バランスに配慮して創り出すサウンドとは違って、何か吹っ切れた清々しさがある。かと言って、一瞬たりとも細かなあたりが疎かになることなく、丁寧にサウンドを紡ぎ出し、バランスだってぴしっと決めてくるから、ゼフィロは凄い。
野外録音という凝り様... ちょっとやり過ぎじゃない?というより、そもそも録音に向かないのでは?と、不安もあったが、その効果は想像を裏切ってくる。これで、少し、風の吹く音(それこそ西風だとか?)、鳥のさえずり、遠くのおしゃべり... などが、曲の合間などにチラリと入ってきたら、よりおもしろいものになったかもしれない。"クラシック"という世界は、とかく優秀録音などと、神経質になりがちだが、こういう視点もあるのかと、目から鱗。やはり野外用は、野外の方が良いのかも。ふと、ニケ+コンセール・スピリチュエルの、あの驚異の録音を振り返れば、コンサートホールに押し込められた重戦車部隊が、窮屈に感じられてしまう。

HANDEL ・ THE MUSICK FOR THE ROYAL FIREWORKS ・ CONCERTI A DUE CORI ZEFIRO ・ ALFREDO BERNARDINI

ヘンデル : 『王宮の花火の音楽』 HWV 351
ヘンデル : 二重協奏曲 第1番 変ロ長調 HWV 332
ヘンデル : 二重協奏曲 第2番 ヘ長調 HWV 333
ヘンデル : 二重協奏曲 第3番 ヘ長調 HWV 334

アルフレード・ベルナルディーニ/ゼフィロ・バロック・オーケストラ

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それにしても、ヘンデルの音楽はキャッチー!特に、3つの二重合奏体のための協奏曲は、ヘンデルのオペラやオラトリオからのメロディをセレクションして、コンチェルトに編み直したセルフ・リミックス。聴き覚えのあるメロディに、ついつい耳が持っていかれる。
そんな、二重合奏体のための協奏曲で、前々から大好きなのが、2番の5楽章(track.23)だったりする。何やらミニマル・ミュージックにも聴こえるようで、フィリップ・グラスあたりが書きそうな、そんなメロディであり、ノリであり。ゼフィロのアグレッシヴな演奏で改めて聴いてみれば、ますますそうした印象を強くする。
バロックとはいえ、ヘンデルのキャッチーさ、ノリは、まったく古さを感じさせない。
いや、おもしろい!




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