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多国籍?無国籍?ナポリタン・ルネサンス! [2008]

Alpha524.jpg
再生ボタンを押してみて、驚いた...
アボリジニの音楽?かと思ったら、沖縄?いや、そんなはずはない。なんて、戸惑いつつも、その軽妙さに、のっけから心奪われてしまう... Alpha、白のジャケット、"Les chants de la terre"のラインならではの、古楽とワールド・ミュージックを結んで、思いも付かないサウンドを導き出す1枚。ルネサンスの南国気分!という、輸入元の用意した日本語タイトルに、つい手を伸ばしてしまったアルバムは、まさにそのイメージ!
ルネサンス期、ナポリっ子を大いに盛り上げた、ポピュラー・ミュージック?ヴィラネスカ、マスケラータにスポットを当てるアルバム、ジャン・ガイヤール率いる、古楽アンサンブル、スォナーレ・エ・カンターレの、"Alla Napoletana"(Alpha/Alpha 524)を聴く。

ルネサンスの音楽というと、まずポリフォニーのイメージが強い... 神々の世界の調和を描くような、美しく織り上げられた圧倒的な音楽世界。だが、このアルバムの「ルネサンス」の、気負いのなさ、気の置けなさは、たまらなく人懐っこく、ポリフォニーだけではない、素朴で陽気な田舎風?(=ヴィラネスカ)、ひょうきんな仮面劇風?(=マスケラータ)の、砕けたルネサンス像が、とても新鮮。
地声テノールの鬼才、ビーズリーが、やはりポリフォニーではないルネサンス、フロットラ(CYPRES/MCYP 1643)を歌って、ルネサンスのイメージに新たな一面を加えてくれたのだけれど、スォナーレ・エ・カンターレによる"Alla Napoletana"は、さらにルネサンスのイメージを押し広げるのか... その、1曲目、アボリジニの音楽?かと思ったら、沖縄?という不思議テイスト... ダルツァのピーヴァ(track.1)は、完全にワールド・ミュージック。それでいて、何と言うか、多国籍、いや無国籍?「イタリア」、「ナポリ」という言葉から思い描くイメージから、まったくズレていて、調子が狂う。が、そのノリの良さは、最高!で、そんなサウンドを耳にしてしまうと、これからどんなことになってしまうのか?と、多少、心配しつつ、聴く、2曲目は、ルネサンスの巨匠、ラッススの作品、「さあさあ、すてきな紡錘ですぞ」(track.2)。やっとヨーロッパのイメージに辿り着いた... かと思いきや、何となしに南米のバロックの臭いがするような... いや、スペインのビリャンシーコのような色合いを見出してみたり?
フランドル楽派の優等生も、そのキャリアの始まりは、ナポリだった。そのナポリ、当時はスペイン領(1504-1707)であったことを思い返せば、地中海の西から、さらには大西洋の西からも、某かのセンスが、ラッススのサウンドに流れ込んでいたのかも... ルネサンス・ポリフォニーの大家として、しっかりとしたイメージのあったラッススの音楽に、これまでとは異なる、ワールドワイドな感覚を覚える興味深さ... またラッススに限らず、このアルバム、ナポリのルネサンス・サウンドを聴いていると、様々な文化の響きが、四方から吹き抜けていくようなおもしろさ(ナポリの歴史、そのもの?)があって、ヨーロッパのフォークロワなテイスト、あるいはエキゾティックな輝きが、ただならず魅惑的。そこには、多少の猥雑さも伴って、堅苦しくなることなく、シンプルに楽しい!
そんな楽しさを、大いに盛り上げてくれるのが、スォナーレ・エ・カンターレの演奏。軽やかで、自由にのびのびと、時に勢いよく爆ぜて... クラシックなんて気分はどこかに吹き飛ばしてしまう、音楽の楽しさに忠実な姿勢は、ひたすら爽快!で、"Rayon de Lune"(Alpha/Alpha 521)でも印象的だった、ミシェル・クロードのパーカッションが、一打一打、生気に満ち充ちており、このアルバムの「南国気分」をより強調。思わず身体が動いてしまうそのリズムは、たまらない。そして、極め付けは、飄々とした声で、時にユルめの歌を聴かせるフランシスコ・オロスコ。ビーズリーとはまた一味違う、地声唱法による、すっとぼけたセンスがいい味を醸していて。また、そうしたあたりに、オペラ・ブッファを生んだ街の、陽気なDNAが浮かび上がるようでもあり興味深い。
それにしても、絶妙なる雑多さ、というのか、ナポリのルネサンスの「南国気分」、まるでお祭りでもやっているようなその盛り上がりは、最高!

Alla Napoletana Suonare e cantare

ダルツァ : ピーヴァ
ラッスス : さあさあ、すてきな紡錘ですぞ!
ダ・ノーラ : 我ら三人、目も開かず
ダ・ノーラ : 愛しき女、きみがシャツを織ってくれて
作曲者不詳 : パヴァーナ 「理性は死んだ」
デ・コロニア : 愛しき女、どうしてぼくに怒ってみせる
マイネリオ : アシとウイキョウ
ダ・ノーラ : われらはロマぴと
バルベッタ : 第4のモレスカ、またはベルガマスカ
ダ・ノーラ : 御婦人、ガリアルダを教わりたくば
マイネリオ : ガリアルダ 「洗濯女」
ドナート : ああ、どれだけ愛を傾けてみても
ダルツァ : スペイン風カラータ
ダ・ノーラ : 庭に植えてるソラマメは
ディ・マイオ : 愛しい女、あの日々はもう戻って来ない
ダ・ノーラ : われらは医師なり、きれいなご婦人がたよ
ダルツァ : ピーヴァ
ボルローノ : つづきのサルタレッロ
デ・コロニア : 桃の花びら、いまにも開きそう
作曲者不詳 : 王のパドゥアーナ
ダ・ノーラ : シイラを見たぞ、あの洞穴で
作曲者不詳 : ガリアルダ 「洗濯女」

ジャン・ガイヤール/スォナーレ・エ・カンターレ

Alpha/Alpha 524




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