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バルトから、吹く、風... [2008]

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只今、オリンピックが、盛り上がっているわけだが、クラシックは、シーズン・オフ、真っ只中...
それは、ちょっと寂しいか?というと、でもない... こう暑いと、ブ厚いオーケストラ・サウンドやら、濃いめのオペラなんてのは、ちょっと避けたい季節?だったり。オフというのは、やっぱりそれなりの意味があってのオフなのかもしれない。なんて、納得してみる。のだけれど、そんな季節にも合う、涼しげなクラシックのサウンドもあっておかしくないはず... と、出会ったアルバム。ノルムント・シュネ率いる、シンフォニエッタ・リガの演奏による、北欧、ラトヴィアを代表する作曲家、ヴァスクスの作品集、"viatore"(WERGO/WER 6705)。このアルバムから流れ出てくるサウンドの、清澄な佇まいに、体感温度も下がる思い。高緯度の地域で生み出されるサウンドというのは、やはり、どこか、爽涼な響きがあるようで、興味深く、今の暑さならまた魅力的... ジャケットもまた、そんなイメージで、その爽やかなイメージにも惹かれたり... という1枚を聴く。

一時期、現代音楽において、バルト海沿海の作曲家が盛り上がっていたけれど... それは、今も続いているのか?というより、すでに確固たる位置にあるのか... 「グローバル」なんてワードも、目新しさが失われつつある中、「ローカル」というのは、時に、とても新鮮なものを届けてくれるように思う。今いる場所とは違うところから響いてくるサウンド... ペトリス・ヴァスクス(b.1946)の新しいアルバムを聴いていると、「クラシック」やら、"ゲンダイオンガク"やら、そうしたイメージを飛び越えて、清々しい場所へとトリップさせてくれるよう。
1曲目、ムジカ・アドヴェントゥスの、クリアなストリングスの響きには、遥か先に、氷河でも見えてきそうな、スケールの大きな風景が広がる。また、そこを吹き抜けていく風のような、涼しげな感覚が心地よく... もちろん氷河はラトヴィアになく、作品も、クリスマス前のアドヴェント(降臨節)にちなんだものではあるのだけれど。北欧のスケールの大きな自然というのか、雄大で、鮮烈なイメージに圧倒される。また、2曲目、アルバムのタイトルにもなっているヴィアトーレ(track.5)は、ペルトへのオマージュ... ということで、ヴァスクス流の"ティンテイナブリ"が奏でられ、エストニアのペルト(b.1935)との距離の近さを、改めて感じる。ポスト"ゲンダイオンガク"な、いわゆる"癒し系"として受け入れられた、独特の透明感... それは北欧という地域性によるもの?改めて聴いてみると、ヴァスクスにしろ、ペルトにしろ、そうしたサウンドを生み出した、バルトというローカル性に興味を覚える。
さて、シンフォニエッタ・リガの演奏。こちらも透明感に溢れ、力強いサウンドが印象的で。2006年の夏に創設された、極めて若い室内オーケストラ... とのことだが、その若さが、ヴァスクスのサウンドを、より鮮烈に響かせて、よりエモーショナルな音楽を聴かせてくる。またそこには、自国の偉大な作曲家へのリスペクトも伝わって、作品のイメージこそ涼しげだが、その下には熱いものが底流し、魅了される。そして、シンフォニエッタ・リガの芸術監督、シュネの独奏による、イングリッシュ・ホルンとオーケストラのための協奏曲(track.6-9)が、特に印象的。アンビエントなセンスと、フォークロワなテイストが交替するこの作品を、伸びやかに、切なげに歌い、瑞々しく、美しく... イングリッシュ・ホルンならではの魅力を堪能させてくれる。

Pēteris Vasks Viatore

ヴァスクス : ムジカ・アドヴェントゥス
ヴァスクス : ヴィアトーレ
ヴァスクス : イングリッシュ・ホルンとオーケストラのための協奏曲 *

ノルムント・シュネ(イングリッシュ・ホルン) *
ノルムント・シュネ/シンフォニエッタ・リガ

WERGO/WER 6705




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