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ターレク・オリーガン、発見... [2008]

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ん?んー?目を瞬いてみたりしつつ、そのラインナップを見つめる。
何やら、凄い取り合わせ。ギョーム・ド・マショー(ca.1300-77)のノートルダム・ミサを核に、イギリスの新鋭、ターレク・オリーガン(b.1978)の作品を、最初と最後に置き、ポリフォニーの美しいデュファイ(ca.1400-74)、そしてジャンルをすり抜けるギャヴィン・ブライアーズ(b.1943)と... 古楽ヴォーカル・アンサンブル、オルランド・コンソートの最新盤(harmonia mundi/HMU 807469)は、ポール・ヒリアー率いるエストニア・フィルハーモニック室内合唱団を招いての、時空を超えたアルバム。それは、まさに、21世紀的チョイス!そのラインナップ、まるで、宇宙遊泳をしているような。サウンドも、どこかアンビエントなあたりを狙ってる?

が、よくよく見ると、中世をテーマにしたアルバムとのこと。音楽史を振り返った時、マショーのノートルダム・ミサは、中世を代表する作品になるわけだが、そこに添えられた作品も、中世にインスパイアされた作品、あるいは中世の詩をテキストに作曲された作品で。ギャヴィン・ブライアーズの作品も、そういう気分で響き... その前に歌われる、デュファイの作品とのつながりもあって。また、単声で歌われるマショーの"Douce dame jolie"の詩を、そのままオリーガンが作曲していて、それを、マショーの後に歌ったりして。中世と現代をフレキシブルに行き来し、"古楽"の枠組みを超えて、中世の"エッセンス"で、楽しませてくれる。

という前に... 1曲目、ターレク・オリーガンの「散乱する韻」(track.1-3)が、実に印象的!
このアルバム、まず、中世云々以前に、オリーガンの音楽に、耳が持っていかれる。合唱の世界で注目を集める... とのことだが、オルランド・コンソートによる4重唱と、エストニア・フィルハーモニック室内合唱団によるコーラスで歌われる「散乱する韻」は、その両者の声、アンサンブルが、美しく響き合い、また心地よいリズムを刻んで、魅力的なサウンドを生み出している。特に、「散乱する韻」の、"韻"はリフレインになって、"散乱"する様が、パルスになって、降り注ぐ感覚は、気持ちよくすらあって... ジョン・アダムズのポスト・ミニマルなテイストに、ペルトのティンティナブリの要素も感じさせ、現代のセンスにもフィット。この季節には、清涼感をもたらしてくれるようでもあり。
そんなオリーガンの、明瞭で軽やかな音楽の後に響く、マショーのミサの異様さ... 中世のグロテスクさが、より際立つようで。また、その異様さに、オルランド・コンソートの本領発揮があって。ストイックな中にも、重量感を盛り込み、その迫力、存在感は凄いものがある。が、そうした、本物の中世には、中てられるようなところもあって。しかし、その後に歌われるデュファイのポリフォニーの美しさは、また際立ち... 中世の最後にして、ルネサンスの到来を告げるデュファイの音楽は、重力から解放されて、その浮遊感がたまらなく。その浮遊感を、巧く受け継いで響かせるギャヴィン・ブライヤーズの音楽も美しく。が、やはり、オリーガンの音楽に、耳が持っていかれる...
アルバムの最後、ヴィルレー"Douce dame jolie"(track.13)。マショーの単声で歌われるオリジナル(track.12)を巧く取り込んで、中世の切なげな表情から、現代のポップでポジティヴな表情に差し替えて、心地よいスピード感で走り抜けていくのが、何か、とても新鮮に感じてしまう。こういう音楽は、どこかで聴いているような気もするのだが、その心地よい響きに触れていると、片意地張らずに、わくわくさせられてしまう。そうして、わくわくさせられていると、この若い作曲家が、タヴナーや、ペルトといったあたりの、後継的存在に成長していく予感もあったりで(しかし、タヴナーや、ペルトのように、もったいぶらないあたりが、ある意味、現代的?)。いや、ターレク・オリーガン、個人的に、今年上半期の大きな発見。そして、彼が、これから、"クラシック"、"ゲンダイオンガク"の、どのような位置に身を置いていくことになるのか、なかなか興味深い。

O'REGAN ・ MACHAUT Scattered Rhymes ORLANDO CONSORT

ターレク・オリーガン : 散乱する韻 *
ギョーム・ド・マショー : ノートルダム・ミサ
ギョーム・デュファイ : Ave Regina celorum
ギャビン・ブライアース : Super flumina
ギョーム・ド・マショー : Douce dame jolie
ターレク・オリーガン : ヴィルレー "Douce dame jolie"

オルランド・コンソート
ポール・ヒリアー/エストニア・フィルハーモニック室内合唱団 *

harmonia mundi/HMU 807469


このアルバムは、オルランド・コンソートのアルバム... となるわけだが、ターレク・オリーガンの存在は実に大きく。が、もっと彼の音楽を聴いてみたく... と思っていたら、どうやら、harmonia mundi USAでは、オリーガン自身のアルバムが準備されているよう。いや、楽しみ。




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primex64

このアルバムの日記を検索していて辿り着きました。これについてしっかりとした論評をされているのは貴blogだけでした。

TBを飛ばさせて頂きました。
by primex64 (2009-03-04 13:01) 

genepro6109

コメント、ありがとうございます。

さて、論評... なんて言えるのかどうか、いつもながらの感想文で... なのですが、このアルバムについて書いているものが、この日記だけ?とは、ちょっと、驚きでした。タリクの作品は、隠れて人気作?なんても感じおりましたので。

さて、TB。ショパンを弾くタローのアルバムでもいただき、ありがとうございました。
ご挨拶、遅れましたが、これからも、よろしくお願いします。

p.s.ブログ、MusicArena、時折、覗かせていただいております!
by genepro6109 (2009-03-04 22:05) 

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