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7つの教会を巡って、 [2008]

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昨年の、N響、Music Tomorrow 2007で取り上げられて、それをラジオで聴いて、やっぱり足を運べばよかったと、ちょっぴり悔やんだのが、ブルーノ・マントヴァーニ(b.1974)の作品(タイム・ストレッチ―ジェズアルドの作品を下地に)だった。21世紀、最も若い世代の"ゲンダイオンガク"には、「難解」という安易なレッテルを貼りきれないサウンドがあって、そんなあたりに、リアルな"ゲンダイ"を感じつつ、ロジックに... ではなく、もっとシンプルに、音楽を聴く悦びみたいなものを楽しめたり。マントヴァーニの作品にも、そうした、"ゲンダイオンガク"を脱したセンスというのか、"現代っ子"な感覚を見出し、魅力的に感じられたのだが... 彼の最新盤(KAIROS/0012722KAI)を聴くと、何か、戸惑いを覚える。"ゲンダイオンガク"の難解さ、取っつきにくさとはまた違う、難解さを脱した先にある捉えどころのなさというのか...

最初の作品、「7つの教会」(track.1-9)は、イタリア、ボローニャにある、セッテ・キエーゼ(7つの教会)と呼ばれる、サント・ステファノ教会群を描いた作品とのこと(黙示録のものとは違うよう... いや、その方が"ゲンダイオンガク"っぽい?なんても思うの... )。だが、「教会」のイメージからは、想像のつかないサウンドで、のっけから、その不可思議な表情に、戸惑わされる。もちろん、1974年生まれの作曲家に、バッハやら、フォーレやらの、教会音楽の、伝統的、壮麗なイメージ、静謐なイメージを求めていたわけではないのだけれど、あまりに教会から離れた感覚が渦巻いていて。教会どころか、西洋音楽からも切り離されてしまったような感覚に、どうリアクションしていいのか、戸惑う。のだったが、よくよく聴いてみると、作曲家の鋭敏な感性に、飲み込まれていくようでもあり。
作曲家は、教会という場よりも、中世の時代に、次々と増築されていったサント・ステファノ教会群の、特異な建築(初期キリスト教建築... ビザンティンから、ロマネスクあたりの変遷が、そのまま教会群として、かたまって建っている... )に興味を持ったらしく、解説を開けば、その入り組んだ教会群の図面なども掲載されていたり。音楽も、その入り組んだ教会群を巡るように編まれており、教会の前のサント・ステファノ広場から始まり(track.1)、洗礼者ヨハネ教会(track.2)、聖堂地下室(track.3)、聖墳墓教会(track.4)と続き... 興味深いのは、それらが、キリスト教色を完全に脱色し、建物の形、ディテール、そのものとして捉えられ、精妙に描き出されているようなサウンドが繰り広げられること。どこか、ミュージック・コンクレートのような雰囲気もあって、音楽にして、音楽とも言い切れないサウンド・スケープというのか、「聴く」から、「見る」に意識を変えると、7つの教会の姿が、手に取るように見え始めて、それが鮮烈な手応えとして耳に残る感覚があり... 振り返ると、そのヴァーチャルな体験というのか、そういうものをもたらす作曲家の鋭敏な感性に、ただならないものを感じ、驚かされ、最も若い世代の"ゲンダイオンガク"に、大いに刺激を受けてしまう。
が、それを演奏する、スザンナ・マルッキ率いるアンサンブル・アンテルコンタンポランも、ただならない... 彼らのハイ・テクニックを以てして成り立ち得る集中力が、このアルバム中に充満していて、それがまた何気に心地よく。そして、マントヴァーニの独特の音楽世界を、まったく緩むことなく、タイトに、そしてクールに仕上げてくる様は、聴けば聴くほど魅力的。このアルバムのおもしろさは、マントヴァーニの作品だけではなく、アンサンブル・アンテルコンタンポランという、"ゲンダイオンガク"の老舗が繰り広げる職人芸の、恐ろしくハイ・クウォリティな演奏も、大いに聴きどころ。で、「7つの教会」のみならず、「ストリート」(track.10)、「月の閃光」(track.11)でも、彼らの独特のセンスが、鋭く輝いていて。その、クリエイティヴな仕事ぶりは、ビンビン伝わり、現代という時代が生み出すスピード感、センシティヴでいて、カオスであって、刹那と、鋭利な感覚が、まさに"現代"音楽として、結晶化している。知ってはいたけれど、今さらながらに、このアンサンブルの凄さを思い知る。マルッキ体制も、なかなか聴かせる!

BRUNO MANTOVANI Le Sette Chiese

ブルーノ・マントヴァーニ : 7つの教会
ブルーノ・マントヴァーニ : ストリート
ブルーノ・マントヴァーニ : 月の閃光

スザンナ・マルッキ/アンサンブル・アンテルコンタンポラン

KAIROS/0012722KAI




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