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Opening Doors, Open Sesame ! [2008]

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今、最も注目したいマエストロの一人、トマス・ダウスゴー率いるスウェーデン室内管の、BISによる注目のシリーズ"Opening Doors"。3作目は、1作目に続いてのシューマン(BIS/BIS-SACD-1569)。
モダン楽器+ピリオド楽器のハイブリット・スタイルで、ベーレンライター版が、まだ劇薬のように扱われていた頃... から、ベートーヴェンのシリーズ(SIMAX)をスタートさせ、大いに注目された(が、シリーズはまだ継続中?)彼らが、さらに歩みを進め、ロマン派の名作に新たな扉を開こうという、チャレンジングなシリーズが、この"Opening Doors"。前作の「新世界」(BIS/BIS-SACD-1566)が、目から鱗の... いや、まさに、扉をおもいっきり開け放ってくれただけに、期待は募るわけだが、三作目もまた、扉はおもいっきり...

19世紀、古典派からロマン派にかけてのグラデーションを描く交響曲の数々は、クラシックというジャンルにおいて、まさに核となるレパートリー。そうしたレパートリーを、"今風"(極東の島国には当てはまらないか... )に、オリジナル主義、あるいはピリオド寄り(あるいはハイブリッド)、ピリオド・オーケストラで演奏すると... 快速運転で、聴く者に爽快な気分をもたらすような... そんなイメージになるだろうか?ダウスゴー率いるスウェーデン室内管による演奏も、そういう、"今風"な系譜にあるのかもしれない。が、彼らのシューマン第二弾は、すでに形成されつつある、そうした新たなステレオタイプをも越えてくる... それは、何ともいえない、プリミティヴな気分というのか、タイトな響きに、軽やかにリズムを刻んで... という、"今風"のスタイリッシュさ、スポーティーさとは違う、一筋縄ではいかない肌触り、触感が伴う。
"室内"という規模を最大限に活かし、隅々まで、ダウスゴーの意識が行き渡って生み出される独特のサウンドは、オーケストラのメンバー、一人一人ではなく、何か一つの有機体が演奏しているような、そんな印象すらある。とにかく、濃密。そして、そこから生み出されるテンションの高さ、熱っぽさは、"室内"という規模を、完全に忘れさせるエネルギーを生み出し、驚かせてくれる。が、テンション高めで、熱っぽいとはいっても、安易に感情的になり、勢いまかせの演奏をする... なんてことは、絶対にあり得ない。ダウスゴーのしっかりとしたヴィジョンと、一体化したスウェーデン室内管の演奏は、ロマン派の、ほの暗さと、ドラマティックな展開、そして歌謡性、そうしたあたりから時折こぼれるフォークロワな臭いまでも巧く抽出して、シューマンを、新たに織り上げていく。そうして響かせるシューマンは、クラシックの、アカデミックな場所から生まれてくるサウンドとは一味違う、もっと根源的な音楽性が練りこまれているようで... どこか、呪術的な空気すら漂うような... 完全に透明でありながら、どろりとしたロマンティシズムが流れ出す感覚が堪らない。こういうサウンドに揺さぶられ続けると、聴く側の方も、「クラシック」とか、「ロマン派」とか、教科書的な耳はすーっと後ろへ下がり、もっとピュアに、ダイレクトに、音楽そのものと共振できてしまう手応えのようなものが、どこからか沸いてくる。何か、催眠にでも掛けられたように。
"Opening Doors"、三作目、ダウスゴーは、このシューマンで、また新たな扉を開けた... というより、もはや扉すら消してしまうというのか、聴く者を、音楽そのものの中にジャンプさせてしまう。この人の指揮は、いつもながら、不思議で興味深い。

Schuman | Symphony No.1 ・ Overtures

シューマン : 交響曲 第1番 変ロ長調 Op.38 「春」
シューマン : 序曲 「メッシーナの花嫁」 Op.100
シューマン : オペラ 『ゲノフェーファ』 Op.81 序曲
シューマン : 「ツヴィッカウ交響曲」 ト短調 WoO.29 から 第1楽章
シューマン : 序曲、スケルツォとフィナーレ ホ長調 Op.52

トマス・ダウスゴー/スウェーデン室内管弦楽団

BIS/BIS-SACD-1569

"Opening Doors"のシリーズは、5タイトルが予定されており、すでに、一作目のシューマン、2番と4番の交響曲、二作目のドヴォルザーク、6番の交響曲と「新世界」がリリースされ、今回の三作目となる。今後、残るシューマンの3番の交響曲、そして、シューベルトの「グレイト」へと続くわけだが、三作目は、一作目のシューマンより、明らかに進化(深化)している... となると、続く2タイトルの行方が、気になって気になって仕方がない。また、毎回、こうも刺激的だと、さらに、さらに、ロマン派の新しい響きを体験してみたくなってしまう。




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